表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/57

26-1治水は専門家でも大変だ

酷い目に遭わされたミュニケを脱し、ディエタに到着した。

この国は西デンシデの海沿いとは違って、アマゾン川のように国土にまんべんなくディップス川という大きな川が流れている。


ここは水が確保できる分、西デンシデよりはマシな環境なのだが、

あまりに川が広く、治水事業が全然進んでいないためにちょいちょい氾濫しているらしい。


ワイド(あっち)でも完全には解決してないもんな、治水問題って。


そんな状態なので治水について市井からも知識を得ようとご意見箱を設置しているが

めぼしい案は出ていないようだ。



とまあ情報収集がてらアルコール度数上げの路銀稼ぎをしていると

最近上流で大雨が発生したせいで大氾濫が起きてしまい、

その対応に予算を使ってしまって首が回らなくなっている事を聞いた。


それはご意見箱どころじゃなさそうだ。

国家予算の予備も全部持ってかれるだろうな。


さて。それはそうとして治水って何をやるのか気になったので検索をすると、

とにかく水位を下げる事が目的である事が分かった。


方法は4つ。

1.遊水地を作る

 堤防の横に堤防と同じ高さの囲いで覆った遊水地を作って、

 上流側の堤防を意図的に低くして氾濫時に意図的に水を流入させて堤防決壊を遅らせる。

2.川幅を広げる

 流水量が増えるため水位が下がる。

 ついでに流れを悪くする仕掛けを作っておくと、

 水の流れが遅くなって水圧による堤防の欠壊を防げる。

3.川底を掘って水位を下げる

 ほぼ2に同じ。

4.上流に堰堤(えんてい)(ダム)を作る

 工事費用と要求技術レベルが他に比べて格段に高いうえ、運用が大変なのでオススメしない。


どれもこれも予算を食いそうな事業だ。特に4のダムは不可能と言っていいだろう。

いや、一応フィルダムとかいうのは作れると思うが、そこまで面倒見るつもりはない。


第一、専門家がいるのであればそういったものは既に手をつけているだろうと考え

1〜3を理由つきでご意見箱に投函した。



翌々日。

朝っぱらからディエタの治水担当大臣の部下を名乗る人物が宿にやってきて、

ディップス川の支流の一つにある工事事務所に案内された。


「君のあの意見書は我々と同じ結論が書かれていた。しかし予算不足でどうにもならないのだ。」

「それで何か知恵は無いかと?」

「そうだ。」


彼らは重要度の高い地域を優先的に工事していたのだが、

予算を氾濫の対応に持ってかれて何も出来なくなってしまったのだという。


人件費的に一番安い罪人を使って川幅の拡張工事と堤防作りはなんとか続けているが

地盤が固くて思うように工事が進まないという。


ふーむ。


「錬金術を多少かじっているので、地盤を緩めるくらいなら出来ますよ。」

「錬金術!そうか、それは思いつかなかった。堤防を固めるのにも使えそうだな。早速手配しよう。」


お?"※"で一時的に地盤を緩めるつもりだったけど、これは錬金術でも普通に行えるっぽいな。


「川底の深さを変える工事はどうやるんです?」

「一時的に上流の分岐しているところでせき止める。」

「その分流量が増える川には川幅拡張が終わってないと駄目ですね。」

「そうだ。それすらできないので後回しにしている。」


つまりこの工事は初期段階ということか。

…何カ年計画でやるつもりだ?


「あとは意図的に川を増やすことくらいですね。」

「そうだな

。川幅と川底、それに遊水地の工事が簡単にできるが、これも予算が不足していて手つかずなのだ。」


あれも予算不足、これも予算不足、それも予算不足…

水害がそれだけ酷かったのか、予算配分がケチられたのかわかんない。


っと、そういえば予算が少なくてもできるのがあったな。


「堤防のモデルは作らないんですか?」

「モデル?」

「完成予想のミニチュアです。

実際水を流してどこが弱いか、どう作れば流れを緩やかに出来るかの研究もできますよ。」

「うーむ。」

「粘土があれば作れるはずです。…せっかく作ったものが役立たずになったら首が飛ぶでしょ?物理的に。」

「う…む…」



それから、担当官がダムについても知見を求められた。

俺、専門家じゃ無いからあえて書かなかったんだし、無理だって言ってるのに。


「水をせき止めて、流量を調節するんで効果は期待できますが

せき止められる量にも限界はあるし、決壊したら目も当てられない程の被害が出るので

技術が無いならオススメしませんよ。

それにディップス川の上流はディエタの国内なんですか?」

「いや、西デンシデになる。

…そうなると生殺与奪権を西デンシデに握られるのか。

幾ら同盟国とはいえ、これは困ったな。」

「ディップス川の流域を西デンシデと交渉して買い取るとかしないとこの話は無理ですね。」

「うむ、難しい問題だな。私の担当する領域を越えている。」



結局、少額の予算でも出来るということで、今年度は研究を進めることとなったらしい。

人的リソースは水害の復旧作業に充てることで国からも了承を得たと、担当官が教えてくれた。


そして一日拘束したということで日当を貰ったのだが、1500ディバラ(約5万5千円)だった。

もしかして、予算足りないのは日当の計算がおかしいからじゃないのかな。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ