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24-2

夕食。

明日の昼前に対岸に着くので船内で食べる唯一の食事だ。

食事場所は狭いため、時間毎の入れ替え制の他、別の客と相席となった。


船長や案内の乗組員や乗船客はそこそこ良いものを食べれるが、下級の乗組員はパンなのかビスケットなのかよくわからないものを食べている。

しかもマズそうな酒を口に含んでふやかしながら無理矢理流し込んでいる感じだ。

鑑定したらラム酒と出た。サトウキビの蒸留酒らしい。


こうやって食事にも気を配って反乱起こす気力を奪ってるのか。まさにブラック企業だな…



さて、そこで相席になった客から聞いた話なのだが、

これから向かうミカカ社会主義連邦はどうやら政情が揺れているらしい。

なんでも連邦の中心である本デンシデの首都、デンデコでコクエ事務総長とミン首相が激しく政権争いをしていて、

どっちにつくかで各国の政府も争っているというのだ。

政府にとっては都合の悪い話なので必至に隠蔽しているが、火のない所に煙は立たない

もはや内戦も時間の問題と噂されているのだそうな。


ドモク共和国は湾を隔てて離れているので、その辺の影響はなかったが

これからは気をつけないといけないよと忠告された。




船が西デンシデの南部、河口近くの港に入港する。

トラブル無く接岸して乗客や貨物を下ろし始めたので乗降口に向かった。


桟橋を渡って陸に着くと、潮の香りがする強い風があたって服がバタバタうるさくはためいた。


うーむ。特に感慨なんてものは感じないな。

船から下りただけだし、当然か。



貨物を下ろす作業が続いているが、預けている荷物は無いのでそのまま入管に進む。

ドモク側でも入管を受けた気がするが、あれは出国管理だったのだろうか。


「…ずいぶん大きな鞄を持っているんだな。」

「ええ、特製ですよ。」


空間拡張をしたバッグの中身を出してチェックを受けているのだが、

馬車一台分なので結構な時間が掛かるらしい。空荷なのに。

持ち込み申請自体は出国時に出していたので虚偽申告とはならない。


結局日がだいぶ傾くまで待たされたが、OKが出たので街中に入った。



市場は片付けを行っており、市場調査はできなさそうだったので大人しく宿を取る。

取った宿では飲料水が安ワインよりも高額で売られていた。

ここの所日照り続きで水不足なんだそうだ。


そういえば海に面しているのに水不足ってのは元の世界(ワイド)ではニュースで見た覚えがあるな。

そんな時どうしてるかネットで調べてみるか。


…多段フラッシュ?逆浸透膜?うーむ。わけがわからんが、とにかく手持ちの道具ではどうしようもないということはわかった。



そうなると海水の淡水化は以前風呂爆弾でやったサバイバル環境下での水採取方法しかなさそうだ。


しかし既に海水を蒸留する方法は各々でやっているらしい。

おかげで薪代が高く付いていると宿のおっちゃんがボヤいていたな。


なんとかしてあげたいとは思うけど、どうしようもないからなぁ。

ボケッと考えながらケータイで検索していると太陽光で暖めて蒸留するかまどっぽい装置が目に入った。

原理は簡単で、黒い蓋の下に海水を溜めて太陽光で暖め、蓋部分に溜まった蒸気を鍋の下に設置した皿で受けるというものだった。


その装置は一日4〜5リットル程度だそうだが、放っておくだけで水が確保できるなら量作って生産量をあげる事業が出来るかもしれない。


その装置を作るには色々難しそうなので、記事が載っているページに書いてあった黒い天板で暖める方式で行ってみるか。



翌日、鉄工所で黒錆加工した鉄板と浅い皿を発注した。

黒錆加工とはお茶やワインなどに含まれる渋みの原因であるタンニンと酢を鉄と反応させることで、鉄をそれ以上錆びさせなくする加工方法で、既にある技術だ。

今回は熱を溜め込みやすくするために黒く染めたかっただけなのだが、鉄自体も熱を持つので効率が多少は上がるはず。


依頼した鉄工所での黒染め(黒錆加工)は塩害対策としても行われていたので、数日後には完成した。

今度はそれを箱形に組み、上の面を斜めにして水滴を一定の箇所に落ちるようにする。

その水滴が落ちる場所に瓶を置けるようにして完成だ。



黒錆加工を依頼した鉄工所のおっちゃんと共に、店先で海水を入れて実験を始めた。

何故鉄工所の店先で実験しているかというと、発注したとき何に使うんだと聞いてきたので、太陽光による蒸留の話をしたら食いついてきたからだ。

どうやら水の確保問題は思った以上に深刻だったらしい。

成功したら大量生産するんだそうだ。


そりゃ一家に数台おいとけば安心するかもしれないけど、この装置場所めっちゃ取るぞ。



日が落ちて箱の熱も冷めてきたので、箱の横につけた扉を開けて瓶の中身を確認する。

よしよし、だいぶ溜まってるな。


大体2リットルくらいの水が出来ていた。

鑑定したところ、蒸留水とでたので成功と言って良いだろう。


「これで夜明け前に濾過した海水を箱の中に入れとけば日没後に使える、題して太陽光蒸留装置の完成だ。

どう?おっちゃん。これ売れるかな。」

「どうだろうな。やらねーとなんとも言えねえ。

だが水が必要なのは街だけじゃねえんだ。

たとえ少なくても船に乗りながら飲料水を確保できるかもしれねえ。」

「あー、船じゃ駄目だと思うよ。揺れてビシャビシャになるだけだと思う。」

「…やっぱ駄目か。」



後日、おっちゃんから聞いた話。

やはり船への積載は断念ということになったが、

川が近くにないため未開発だった区域を開拓できるかもしれないということで

大量に作って実験することになったそうだ。


鉄工所は大口の発注を受けることになり、これから忙しくなるぜと息巻いていた。


太陽が出てないと使えないから難しいとは思うけど、がんばれ。


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