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2-1異世界の風景

ヨカル王国を脱出した翌日。


リミッター一杯(※約130km/h)の速度で夜通し東へ走って小国群を突っ切り、

現在は一般道の法定速度(60km/h)前後で南へと進路を向けて走っている。


これは適当に走っているわけではない。

脱出準備中に"※ハーカンクの地図を表示する"地図アプリと"※ハーカンクの社会情勢を記事にする"ニュースアプリを使って、そんなに遠くなくて比較的安全な都市を探した結果だ。

探し当てた賢者君曰く、ヨカル王国も属しているキヤリア地方にはケディデア、バングランド、ドモクという3つの大きい国家があり、そこに保護を求めることができそうだということだった。


カーシェアの子たちも別ルートで向かっているはずだ。



さて。現在居るのは三大国家のひとつであるドモク共和国で、ミカカ社会主義共和国連邦という赤い国の構成国だ。

本体と物理的に離れているため、連邦構成国としては比較的ユルいお国柄なのだが

失敗した社会主義国家によくある貧困で、人民は少しでも儲けないと飢えで苦しむ境遇(※web辞典調べ)なのだそうな。


共産主義自体に嫌なイメージがあるのと、仮に保護されたとき同士とか言われるのが嫌なので真っ先に保護を求める対象から外れたのは言うまでも無い。



日が高くなる頃、昨日から続いていた無茶による疲れと、股関節が限界近くまで来ていたので、

近くの宿場街へ休憩に寄ることにした。


店から出るメシの匂がキツい。空きっ腹に堪える。喉もカラッカラだ。


仕方ないので、お金を作るため市場の隅っこを拝借して付与魔法の辻商売をすることにした。

言語と文字?自分自身に"※ハーカンクの全言語を読み書き話すができる"能力を付与しているから問題はクリア済みだ。


「なあ、付与魔法ってどんなことが出来るんだ?」


付与魔法に興味を持ったのか、近くで飲んだくれてたおっちゃんが聞いてくる。


「普通の付与魔法じゃないからなんとも言えないけど、大抵のことは出来るよ。

そうだな。例えば、その飲んでるお酒の度数を変えるとか。」

「フン。おもしれえ、やってみろ。」


汚れた20ディバラ硬貨と飲みかけの酒を渡してくる。

1ディバラは37.0円(※通貨レートアプリ調べ)なので740円。

足下見られてるなと思いつつ、酒の度数を"9%"から"40%"に引き上げる。


ありゃ?名称がワインからブランデーに変わったぞ。


とにかく書き換えはしたので酒を返してやる。

そしてあえて硬貨を回収せずに、口角を上げて飲んでみなと促す。


「フン、自信ありってツラだな。(ゴクッ)ムォッ?」


おっちゃん、盛大にむせる。

そりゃ、40度の蒸留酒を安物ワイン感覚で呷ったらそうなるよ。


「こりゃすげえ。マジで濃くなった!…こうしちゃいられねえ、家にある酒持ってくるからそこで待ってろ!」


あらら。足下がふらついているけど大丈夫かな、あれ。



ハーハー言いながらえっちらおっちらと、6本入り1ケース運んできたおっちゃん。

120ディバラを出してきたので1瓶20ディバラ。さっきと同じ額だ。


さっきのはサービスでかなり度数を上げたけど、同じ額ならそれなりにしか上げないよと言ったら、追加で150ディバラ出してきた。

合計で270ディバラ…約1万円か、今度は奮発してきたな。



食事をするのには十分な額を支払ってもらえたので6本を全部40度のブランデーに変える。


「まいどー。」


早速1本開けて飲み始めるおっちゃん。

なんだかなぁと思いつつ、腹が減ったので向かいの食事処に入った。


「ラッシャーセー。」


訛りがきついのか、単に怠けてるのか判断に困る挨拶だ。


唯一のメニューである雑穀の粥を食べていると、酔っ払いに絡まれた。

さっきのおっちゃんとは別のおっちゃん、しかもドワーフだ。


「なあ、さっきオモテでトーチカの野郎と何やってたんだ?」


あのおっちゃん、トーチカって名前なのか。砲撃でもすんのかな。

それにしてもギャーギャーうるさい。

ドワーフ相手に「俺の付与魔法で酒を美味くしてやったんだ」などと言うと面倒なことになりそうだから

メシくらい静かに食わせろ、テメエは酒の邪魔されるのと同じ事すんのかって言ったらようやく黙ってくれた。まったく。



んで、メシを食い終わったら再開してきやがった。

ケチなあいつが進んで金を支払うなんておかしい、何かやっただろ!って言われても

付与魔法で商売しただけとしか返せないっての。


店を出たらこれ見よがしとトーチカのおっちゃんが例の酒を飲んでいる。

あーあ。ドワーフのおっちゃん、ヒートアップして賭けが始まっちゃったよ。


内容はトーチカのおっちゃんが持ってるドワーフのおっちゃんの眼鏡にかなう酒かどうか。


なぜか野次馬の住民も賭けに乗ってきた。他に娯楽無いんか、この街。




数分の後、あらかた張りおわったのか、賭博は4:1でドワーフ側が優勢なんていう会話が聞こえてきた。

それでいざ味見となったのだが、なんとトーチカのおっちゃんがドワーフのおっちゃんに100ディバラで売りやがった。たしかにケチくさい。

というか、1本あたり45ディバラ分は上に乗っかってるけど元の価格は55も無いだろそれっ。



もちろん賭けはトーチカのおっちゃんの勝ち。

ドワーフのおっちゃんは負けたというのにすがすがしい顔でブランデーを呷っている。


…飲み終わったらこっちに来そうだな。今のうちに逃げるか。




捕まった。

このドワーフ、飲みながらこっちを監視していたらしい。


「さあ吐け、あの酒はお前の仕業だろッ!」


俺は付与魔法で普通に商売しただけだ。

相手の注文に応えただけで文句を言われる筋など無い。

賭に負けたのはアンタの勝手だろ?


「チッ、だったらコイツをさらに引き上げることも可能なんだな?」


飲みかけのブランデーを見せてくる。

それが注文ならと応じたら100ディバラ出してきた。


うーむ。これはもうスピリタスレベルの頭イカレた酒にするしかあるまい。

そう考えて"40%"を"96%"に引き上げた。

これ以上は上がらないよ、と言って隠してあるバイクの所に戻ろうとするが、肩を掴まれて移動できない。


「兄ちゃんよ、ちっと俺の工房まで来てくれねーか?」


なんだよ。今日の商いは終わったぞ。




ドワーフのおっちゃんに無理矢理引きずられて工房に着く。


「俺ァな、今でこそこんな鄙びた街でくだ巻いているが、

昔は世界を飲んで回ったんだ。」


ところがどうだ、と96%の酒を掲げるドワーフ。

まったく話が見えない。


「こんなに美味い酒を飲んだのは初めてだ。

だが、俺だけがこの酒を味わえるなんて勿体ねェ。」


あ、俺と組んで商売って話ならお断りしますよ。

俺には別にやることあるんで。


「何故だッ!」


うまい話には裏があるもんで。

大方、いつでも飲めるようにしたい程度の動機でしょう。


そんなもんに巻き込まれるのは御免被るんですよ。


ったく。もう帰るんでそこをどいてください。


「嫌だねッ!この機を逃してたまるかってんだ!」


ならば仕方がない。



ドワーフの能力を開いて"※泥酔"にする。

途端に足下から崩れるドワーフ。


「うおっ?なにを…しやがっ…た…?」


酔いには慣れてても泥酔は慣れてない様だね。

それでもそんな動けるんだから流石ドワーフというか。


それじゃあ、さらに酷い"※昏睡"だ。

さすがに殺すのは忍びないんで1時間ほどのタイマー付きだけどな。



青い顔して寝入ったドワーフを尻目に工房を出る。

まったく。ドワーフってのは酒ほしさにあそこまで暴走するのか。


今度ドワーフに目をつけられたらどうしようと考えながらバイクを隠していた所まで戻った。




そんなことを考えながら運転するから、事故るわけで。


…といっても轢いたのはグリズリー。

普通、熊に当たったらバイクの方がひしゃげるのだが、コイツは"※"で強化しまくってるおかげで無傷だった。

熊は当たり所が悪かったのか、"※衝撃を跳ね返す"のが悪かったのか、当たった衝撃で死んでいた。

飼い主がいるとマズいと思ったので鑑定したが、ただの野生動物だったので死体を"※無限収納"メットインに放り込んで証拠隠滅。


あらためて南に向かって走り出した。


モチベ維持のためブクマ、評価、感想、レビューお願いします。

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