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21-3

以前馬車が壊れて停滞していた通運ギルドの鉄鉱石定期配送の問題は解消したらしく、

臨時の追加配送で試運転を行った。


板バネがギイギイいってるが、これは想定通りだ。

といってもうるさいので後で"※静音"を付与しておこう。


それよりも馬車の御者台から見えるハリボテの馬ヘッドをつけたバイクの違和感の方が気になる。

"※"で排ガスは出さないようになっているが、マフラーがこっち向いてるのも気になるところだ。



積載量は最初に感じていたものより多かった。

天井に柵が付いていて、やろうと思えば馬車の上に載せることが出来たからだ。

鉱石のような重い物は流石に問題だが、植物などの軽量な物であれば問題無く載せられる。


いや、"※非破壊"のおかげで鉱石でも載せることは出来るんだが、設計上は載せることを前提にしていないというのが正確なところか。


荷物が落ちるような速い速度で走るのでもない限り、積載に問題はないということがわかった。

あとは急な坂があるとわかっているなら、馬車の後ろに蓋をしてこぼれないようにする処置が必要だという、普通の馬車と同じ問題を抱えているくらいか。



エユデンへの復路には大量の服飾類を運ぶ仕事を受けた。

本当は重たい物を積んでバイクの登坂能力を見たかったがしかたがない。


道中のぼったくり施設は使わずに馬車の中で寝たのだが、ここで問題が起きた。

燭台置きが上部に配置されていたため危うく一酸化炭素中毒で死にかけたのと、

寝台に窓がないから空気の入れ換えが困難であることと、外の様子がわからないことだ。


特に一酸化炭素中毒はマジでやばいからすぐにでも対処しないと。



エユデンに着き、アッジの修理屋で問題点を報告する。

一酸化炭素中毒についてイチから説明しなければならなかったが命に関わることなので丁寧に説明した。


「鉱山の奥の方は息が出来なくて苦しい言ってたのはそれか。」


それは多分ただの酸素不足だと思う。

どっちにしろ空気の入れ換えで解決する話なので、竹筒かなんかで空気を送り込めば良いと思う。

このへんに竹なんて生えてなかったけど。




修理屋の職人に不具合は報告したけど、やはりまともなタイヤがないと色々しんどいと感じた。

ここはひとつ、タイヤ製造に挑戦してもいいんじゃないだろうか。

ミャウでは職人がいなかったから諦めたけど、エユデンには鉄の扱いに優れた職人がいる。


細かい鉄製品を扱う職人に英式バルブを発注した。

いつものごとく、何に使うんだこんなもんという顔をされたが、慣れたもんである。


次いで、チューブとタイヤを修理屋で作ってもらう。

これを修理屋で発注したのは車輪に合わせるためだ。

しかしまぁー…非常に難航している。



まず、なんで必要かを知ってもらわなければならないので

代車に使っていたリヤカーでチューブと溝無しタイヤを作ってもらうことから始めたのだ。


チューブは当初丸の形にしてもらおうとしたが、技術的に難しいということで、棒状にして長さを車輪に合わせることで解決するという発想が職人から出たので採用する。



細いワイヤーは簡単に確保できたので、タイヤのカーカス、ビード、トレッドという部分はできた。


そして端っこを貼り合わせてタイヤ成形するのだが、型を作るのに手間取った。

何度も粘土で整形後の形を確認して調整する。


納得のいく調整が出来たら、タイヤの成形だ。

職にあぶれたため事務員になっていた錬金術師が居たので加熱してもらう。

完成した後のタイヤをさわって、強度に問題がないことを確認する。


タイヤと格闘している間、チューブにつけるバルブが完成したのでチューブに取り付け完成させる。


そしてリヤカーにチューブとタイヤをはめ込み、

足でペコペコやるヤツで空気を入れて世界初のチューブタイヤが完成だ。


そうして出来たリヤカーの試運転で乗り心地が明らかに変わったのを体感してもらい、

馬車に取り付けるチューブタイヤを作ってもらうことにした。



この時点で3月ほど経っているが、資金的には問題ないので続けさせてもらう。

例の酒を時々振る舞っているから士気が落ちるということも今のところない。


それにミャウからゴム底靴や天然ゴムが届き始めたのだ。


車輪の前にまずは自分の足回りだと、靴にゴム底をつけることから始める。


「おまえら、こんな良いもの履いてやがったのか。」

「はは、おやっさんも今日からゴム底デビューじゃんか。

他の工房よりも早く体験できるんだからそんな怒らないでくれよ」


その日は酒場で靴の自慢があちこちで起こったらしい。

こうやってミャウのゴム底靴は静かに流行し始めたのだ。



秋を過ぎて冬景色となったエユデンでは、連日の例の酒パーティーで上機嫌な職人が馬車用のタイヤ型枠を作っている。

今度は細い溝をつけて製造するので、みな真剣な面持ちで作業している。

特にドワーフが真剣(ガチ)モードだ。


そりゃあ、大金払う上客だし、チート酒を振る舞ってくれるし、真剣にもなるか。


ちなみにタイヤ制作で新しく作った工具や型枠などだが、

リヤカーでチューブタイヤの有用性がわかったのでタイヤを大量生産しカスタムオーダーのオプションにすると言っていた。

修理屋で作っている規格の車輪をベースにしているから簡単に転用ができるのだそうな。




さて、そんな感じでチューブタイヤの生産が出来るようになったアッジの修理屋。

当然ながら宣伝するのだが売れない。


だがそれは当然と言える。

チューブは破損したら交換が必要になるので、近隣の金持った貴族か大商人くらいしか導入しないからだ。


俺も同じ意見だったのだが、ちょっといたずら心がわいて

"ケディデアの東寄りに位置するエユデンから西部は遠いからタイヤの素晴らしさを知って貰えなくて残念です。"

という文面の手紙を西部の大商人、ゴードン氏に送った。


そしたら本人が来た。

ケディデア中央からちょっと東にいく程度なら問題ないよと皮肉られたが、反論できない。


「それに、おもしろい事をやっていると聞かされてはね。」


試作品であるリヤカーの乗り心地を確かめた彼はすぐさま修理屋のオーナーに提携の話を持ちかけ、

技術移転のために職人を何人か呼んできた。


さすが金持ち、先を見る目があるというか。

修理屋への資金提供はもとより、職員の給料や福利厚生がゴードン氏の会社と同レベルにまで引き上げてきた。


思いっきりM&Aじゃねえか。


「それとこのゴムの生産地、ミャウの村…だっけ?これから向かって、村ごと買収するつもりだよ。

ああ、貴族とはちゃんと平和裏に話をつけるから大丈夫さ。」


平和裏って…銀行の真似事もやってて弱小貴族は逆らえないくらいの御方の台詞故に信用ができねえ。


モチベ維持のためブクマ、評価、感想、レビューお願いします。

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