20-1コウジカビ
テンプレの味噌醤油だけど、みんな結構簡単に作ってくれるよね。
調べるだけでも大変だし、作るのに温度調整しながら長時間待たないといけないし
ちょいちょい攪拌とかやらないと麹がちゃんと育たないのにさ。
先日まで一面に広がっていた紅い土の姿はどこへやら。
今見えるのは砂浜と岩場、そして海だ。
今いるのはケディデアの南部。
ぽつぽつとある漁村の脇を抜けて南東に向け走っている。
特に目指している場所はないので、興味を引かれる物を探しながらの走行だ。
「なんもねえなぁ。」
昼時になったので近くの漁村に入り
ケータイいじりながら注文した焼き魚をほおばる。
米が欲しい。
焼き魚にはほんのり塩味がついていて美味いのだが、なんか物足りない。
そして汁物。
いわゆる潮汁なのだが、あっさりとしすぎてこれも物足りない。
味噌汁が飲みたい。あと醤油ぶっかけたい。
だがその2品はキヤリア地方では見かけなかった。
似たようなのであったのは、魚醤という塩と魚でできた褐色の物体だけだ。
しかし俺が今欲しいのは大豆を加工したやつなのだ。
どうしよう。作っちゃうか?
作り方は調べれば出るだろうけど材料ないし、どうしようか。
あ。
そういえば居たじゃん、大豆加工品の素晴らしさを知ってて材料も集められる存在。
彼らに連絡取ってみよう。
"やあ、食の改革は進んでいるかな?"
メッセンジャーで送信し、返信を待つ間にすこし醤油と味噌の造り方を調べる。
なるほど、麹が必要と。
それで、麹はどうつくるのかな…と。
「お客さん、追加で注文しないなら席空けてくれねえかな。」
「っと、失礼。」
漁村から離れてケータイを取り出す。
新着のメッセージが来ていた。
"どうもこうも、全然進んでません。"
おや、あれだけ豪語してたのに全然進んでないのはおかしくないか?
ちょっと通話してみよう。
『もしもーっし、賢人でーっす』
「米付だ。ヨカル王国から逃げるとき食の革命を宣言してただろうに、どうした。」
『あれねー、麹が無くて頓挫しちゃってんの。』
「ブラウザをネットに繋げられるようにしただろ?」
『それが、全然駄目。どれも麹は用意する材料扱いで作り方が載ってないのよ。』
「マジか。」
『マジマジ。』
「んーわかった。こっちでも調べてみる。」
『頼んます。』
マジかー。
麹って買うものなんだ。
検索ワードを変えながら調べるが、確かに麹の素を買ってきて麹を作っているレシピばかりだ。
しかし種麹と自作で引っかかった。
これなら作れるかもしれん。
探し当てたURLを賢者君に送る。
"すげえ!マジにあった!神!"
"これなら麹作れるかも!"
"稲麹玉って言うんだな。"
"北部じゃ稲刈りやってるはずだから回収するように指示するわ。"
"ギリセーフ!望みは繋がった。"
"最速で運搬指示出したわ。"
矢継ぎ早にメッセージが飛んでくる。
賢者君が探させたのは稲霊とも呼ばれる、イナコウジ菌が稲穂に付着して栄養を奪い取るイナコウジ病にかかった丸くて黒い玉だ。
さっき賢者君に送ったのはこの稲霊から麹菌を分離して種麹を作る方法だ。
蒸した米にアルカリの木灰をまぶし、麹菌以外が生きていけない環境を作る。
その環境へ稲霊に付いている胞子をまぶしていく。
そのまま保温して4、5日置くと黄色や緑、黒い花(?)を咲かせる。
それが種麹で、こいつを使って米麹や醤油麹を作っていくという工程になる。
種麹の作り方から胞子の部分を種麹、保温する期間を2日にすると米麹ができる。
茹でた大豆を潰し、米麹と塩を混ぜたのを入れよく混ぜる。
空気が入らないよう瓶にベシャっとたたきつけながら入れ、上から塩をかける。
落とし布をいれ重しを乗せて粘体で寝かせると白味噌になる。
赤味噌は茹でた大豆の代わりに蒸した大豆を使う。
麦味噌なら米麹から麦麹を作れば作ることが可能だ。
また、米麹に炒った小麦混ぜて、茹でて水切りした大豆に入れさらに混ぜる。
6〜12時間おきに混ぜて(手入れというそうだ)大体5日すると醤油麹ができる。
醤油麹に塩水入れて年単位で寝かせ、絞ると醤油になる。
さらに、酵母があれば米麹と米を使って濁り酒や清酒もできる。
元いた世界では酒税法があって作れない(正確には作れるけど手続きとかが面倒)が、
今居るキヤリア地方において酒税法はケディデアの一部貴族領に存在するだけだから問題ない。
さて、これで味噌・醤油を作れるようになったわけだが、これらには年単位の熟成時間がかかる。
だがしかし。俺には時間経過を強制的に行わせる道具があるのだ。
仕込みだけは彼らにやってもらって、
俺がバングランドに訪問したとき貯蔵キットを稼働すれば理論上完成するはずだ。
そのことをメッセンジャーで伝えると、"それは楽しみだ。待ちきれない"、"仕込みは任せて"とのありがたい意気込みをくれた。
馬車の他に楽しみが増えたな
それから数日の後。
ケディデア最南端で面白い木と格闘していると、
メッセンジャーで麹の完成と味噌・醤油の仕込みが終わったことが画像付きで送られてきた。
うん。張り切って仕込むのは良いが、ちょっと作りすぎじゃないかな。
現地の人にウケるとは限らないんだぞ。
…それでもいいと返ってきた。
失敗作があっても大丈夫なようにしたかったんだそうだ。
無くなると困るから大量に確保しておきたいという気持ちはわかるが、無理をしちゃいかんよ。
モチベ維持のためブクマ、評価、感想、レビューお願いします。




