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19-1人工宝石

バングランド南西から国境を渡り、ケディデア西部に入国した。


ここら一帯は東の山のせいで雲が溜まり、雨や雪が降りやすい地区なのだそうだ。

そのおかげで水には困っていないものの、水害で悩まされているという。

(※web辞典調べ)


そして、この地域に人が住んでいる理由はもう一つ。

それは鉄鉱山の存在である。

ほかにもレンガに使っている紅い土がよく採れることで有名なのだそうだ。


宿の主人がそう言ってた。


確かに街はレンガ作りで、小さい都市の中心部から一本だけ道が山の方に続いており、

そこに沿って家が建てられている。

あの存在そのものが冗談の三輪車ことリライアント・ロビンが売れたのは、こういう構造の街向けだったからなんだなと思わせてくれる町並みだ。


まあ、ここで走ってるのは駅馬車だけどな。


ちなみに駅馬車といっても特定の駅は無く、都市中心部と鉱山を往復している馬車にヒッチハイクの様にして乗り込んでいくスタイルだ。

運賃は乗車時に支払う。



んで。なんでこんな所に居るかというと。


まずはあの変なのから逃げるため。

次いでもうそろそろ馬車が完成する頃だからケディデアに入国しておきたかったため。

そして鉱山と聞いて商売のタネになるかと思ったためだ。


配送自粛してても腹は空くし寝床も必要だからね。



都市部の酒屋と酒場でいつものウイスキー販売やってまとまったお金を作り、鉱山に行く。


ここの鉱山もエユデンと同じようにトロッコで鉱石を運んでいる。

車輪にフランジがついてないからちょいちょい脱線するのも同じだ。


うん?車輪?

そういえば学生たちが蒸気機関車作ろうとして俺がキレたけど、

アレは蒸気機関がヤバいんじゃなくて車輪がヤバいんだっけ?


ちょっと確認しよう。

…産業革命は蒸気機関の方で合ってた。

車輪は産業革命よりもっと前の発明だった。


とはいえフランジ(これ)もうかつに世に出すものじゃないから確認しておこう。えーっと。


"蒸気機関車を作ろうとした際に何か副産物を開発しなかったか?"


これで送信、ポチッとな。

…暇してたのかしらないけどすぐに返信が来た。


"すいません。車輪と連結器は出しちゃいました。"


はいアウトー。


困ったな、このままだとバングランドの文明が進みすぎてしまう。

すでに経済面でドモク共和国が、軍事面でケディデアが遅れているというのに。

こんなこと本来は政治家がやるもんだけど、急激な発展が争いを生むのは歴史で習ったからなぁ。


とりあえず均衡を保たせるためにケディデアでもフランジ付き車輪を広めよう。

連結器は…手押しトロッコには必要ないな。




「それで、何だって?」

「フランジと言って車輪の内側に出っ張りを作るんです。」


今俺は鉄鉱石を採掘する会社の工房にお邪魔している。

普通は飛び入りの営業なんて蹴り出されそうなものだが

バングランドの最新技術を伝えに来たと言ったらすんなり通してくれた。


カーブが多くて何度も脱線する坑で使っているトロッコを、

修理のついでに車輪の改造を施しているのだ。


レールにも手を加える。

元々ある木に逆L字型の鉄を貼り付けたレールは双頭レールにいずれ変更してもらうとして、

カーブの内側に脱線防止のガードをつけてもらう。


これだけで脱線の確立がぐっと低くなる。

ブレーキなどはそのまま使えるので好評だが、工夫から文句が出た。


「線路が通ってない坑の奥にはレールが引けないんだ。

今まではそのまま走らせてたんだが、これじゃフランジってのが潰れちまうよ。」


何言ってんだか。三角錐の車輪も加重が1点に来るのは同じじゃないか。

それに、レールが引けないほど狭く掘っているというのがおかしい。

トロッコ幅で掘って坑道奥まで延ばせば解決するだろうさ。


いいから1ヶ月やってみなよ。

脱輪の直しで応援呼ぶ回数減るはずだからさ。


「フン、そこまでいうならやってやる。」

「ええ、なにかありましたらバングランド帝国の未来研究所までどうぞ。」


何か問題あったら彼らがやってくれるはず。



「どうも、お騒がせしました。」

「いやいや、バングランド帝国の技術は目を見張るものが多いですからな。

その技術を教授できるチャンスを逃すことの方がおかしい。」


技術指導を終え、採掘会社の事務所でお茶をすする。

対面に座っているのは採掘会社の社長だ。


「それで、本当にこの金額で良いのかね?」

「ええ。ただし本国への密告はしないでいただきたい。」

「もちろん。」


よし、商談成立。

特許なんてものは無い世界だ。

こうやって技術を売れば瞬く間にみんな真似をしていくだろう。


そう考えていたときだった。

カランコロンと事務所のドアが開き、スーツっぽい服装の人が入ってきた。


「やあ、お邪魔させてもらいますよ。」


帽子を取ってこちらに挨拶するスーツのおじさま。

挨拶に対しこちらも会釈で返すが、なんというか…俺のような商人の真似事をしている人間にはないオーラの様なものを感じる人だ。


いわゆるモノホンの人なんだろう。

社長さんが失礼と言って席を立ったことから、力関係も遙かに上だという事がわかる。


「どうぞ、おかまいなく。」


俺も応接室を空けるべく席を立ち、事務所のドアに向かおうとするが

「まだ精算してますので」と呼びとめられ、別室に案内された。


案内された部屋は先程よりも狭かったが、商談室とでもいうべき部屋で、落ち着いて話をするのには丁度良いかなという感じだ。



ケータイのゲームアプリを起動して遊んでいると、ドアがノックされた。


「どうぞ。」


ケータイをしまいノックに答えると、社長とさっきのスーツのおじさまが入ってきた。


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