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16-2

小国連合は国土が縦に長い。

ホールケーキやピザを切ったように南に行くほど幅が狭くなる形をしている。

俺を召喚したヨカル王国は南部にあり、今回はそこを避けるために北部に入国している。


しかし、北部だというのに暖かい。

何故かというと、入国したトンガラ公国という所には活火山があり、あちこちに温泉が湧いているからだ。


おかげでどの宿にも天然温泉が引き込まれ、食事には温泉の蒸気を使った温野菜が出る。


素晴らしいことこの上ない国なのだが、食が問題だった。



唐辛子。


あのクッソ辛い唐辛子が国民食なのである。

市場へ行っても唐辛子の山、というか多すぎて海と化している。


カレーショップの2辛でアウトになるくらい辛いのが苦手なので、

シシトウのような辛みの少ないものや甘唐辛子を出す店を探さないといけない。



やっと見つけた甘唐辛子の屋台で肉詰めを食べているのだが、器代わりにしているのがどう見てもパプリカだ。

検索すると、パプリカやピーマンは唐辛子の一種だったことがわかった。


しかもナス科だ。

おまえら、ジャガイモと同類だったのか。



さて、トンガラ公国では国民食として広く食されている唐辛子だが、香辛料としても非常に優秀だ。

食うのは苦手でも商売のタネにはなるだろうと、いろんな種類の唐辛子を限界まで買い込む。


そうしているうちに日が落ち、宿に泊まったが、その宿の夕食にだされたのがまた辛そうだ。

唐辛子のチーズ煮込み。

検索したら幸福の国の国民食、エマダツィという料理にそっくりだった。

うう、やっぱり辛い。


チーズの油分のおかげでなんとか食べれたが、こんなもん朝も出されたら死んでまうぞ。



よかった。バイキング形式だった。辛そうなのは避けて、肉詰めにしよう。

あれ?なんで肉詰めが2種類もあるんだ?


カッッッラ。あかん、これ肛門が死ぬヤツだ。

この種のとこがムチャクソ辛ェ。


ミルクでなんとか流し込み、食堂を出る。

うひー。まだ口が痛い。


ミルクでヒリヒリした口をゆすぎつつ、電子マネーの残額を見る。

63.60アルワレ。昨日唐辛子を買い込んだせいでまた資金難の季節がやってきていた。

ふーむ、まいったな。

地酒は果実酒だけどキツ目のものが好まれてるからブランデー作戦は使えないし。



結局都市部では見つからなそうなので、郊外に出る。

畑には色とりどりの実が成っているが、全部唐辛子だろう。


見てると尻がかゆくなりそうなので視線を前に向けると、農家の人が集まっていた。

困り顔でなにやら話し込んでいる。


「こいつだ、モザイク。」

「あらー。出ちまったか。」

「しょうがねえ、コイツは燃やさないとな。」

「しかしなんで今頃。」


モザイク?

なんだそりゃと思って検索すると、モザイク病というのがあるらしい。

ウイルスによる病気で、アブラムシによって媒介される伝染病だという。


発病したものは対処のしようがなく、アブラムシ駆除をすることでそれ以上の感染を防ぐらしい。


「おい、そこの兄ちゃん。なんか用かい?」


俺に気づいた農家の人が声を掛けてきた。

モザイク病について少し調べてたと言うと、結構な確率でなるという。

農薬を撒くなどの対処の仕方自体は知っていたらしいが、高くて買えないという。


「自作しないんですか?」

「どうやって作るってんだ?」


なるほど。作り方がわからないのか。

ならばもーちょい調べて…あれ?アイドルをやってる農家もとい農業もやるアイドルの番組の農薬がでてきた。


これなら農家でも作れそうだ。



農家の人たちに材料を集めてもらい、すり鉢と鍋を借りて作ってみる。

牛乳はなかったのでヤギ乳にするなどの代用をして完成。

色味最悪、匂い激烈、味は地獄の三重苦だ。虫より人間に効くんじゃないかな。


「はー。唐辛子に食いつくのに唐辛子が苦手なんか。なんとも不思議じゃのう。」


言われてみればそうかもしれない。


そして農薬を作ったは良いが噴霧器なんてものはないので霧吹きを作ろうと試行錯誤する。


稲わらストローに息を吹き込むことで…上手くいかないな。

えーと、動画は…ストロー、霧吹きで検索と…あった。

半分切ってそこに挟むのか、出来た。オケオケ。


出来た霧吹きは飛沫(しぶき)レベルでスプレーのような細かい粒子にはならなかったけど畑に蒔くには十分だ。

それにしても匂いがヤバい。ガスマスクが欲しいくらいだ。



農薬を撒き終わって、一息つく。

農家の人はこの農薬を他の畑にも教えたいと言うので了承した。


俺には辛くてほとんどの品種を食えんけど、美味いメシのためには協力するべきだろう。


その後、農家の人のご厚意で一晩泊めさせてもらった。

郷土料理は美味かったけど、やっぱ辛いわ。



農家の人にモザイク病に掛かって廃棄する予定だった唐辛子の実をもらった。

"※"でモザイク病を打ち消し、お土産にもらった酒に漬けるためだ。

ケディデアに戻ったら誰かに飲ませてやる。


さて、これ以上奥に行っても唐辛子畑しかないと言ってたし、

資金もないからこのへんでケディデアに戻ろう。


…そういえば当初の目的だった激渋ワイン買ってなかったな。

しょうがない。また今度にしよう。


そう思いながらバングランド国境を越えたのであった。


モチベ維持のためブクマ、評価、感想、レビューお願いします。

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