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11-1車体維持フカ

ケツが限界となり、サスペンション付きの馬車を購入するために日銭を稼ぐ毎日。


特に生鮮品は配送料が高額なので最近ずっと海沿いで配送を受けていたのだが、今日は様子が違っていた。

鮫である。

これを内陸に運びたいとどこかの貴族が無理難題言ってきてるとのことだ。


しかも食うとか抜かしているらしい。

平民としては「テメーが海行って食わんかい」なんてとても言えないので、

誰がどうやって運ぶか押しつけあっていたところに俺が配送料の精算に来たというわけで。


指名依頼されてしまった。


「腐っても知りませんよ?」

「それは先方も承知しているとのことだ。」

「うへえ。腐ってても食いたいの?すごいな。」


鮫を馬車の荷台に載せると車体がたわむ。

こりゃ駄目だ。重量オーバーだ。


馬車に置いていた濾過装置や貯蔵キット等をメットインに入れて少しでも軽くする。

それでもフレームがゆがんでいる。


こりゃもうどうしょもないな。

修理屋で馬車を鮫専用に改造してもらう。

改造費用は無茶な指名依頼をした通運ギルド持ちだ。


改造して貰っている間、荷物の鮫がどんな感じに腐っていくのかを検索したら、鮫は腐りにくいと出てきた。

なんでも尿素がアンモニアに変わって細菌類の繁殖が防がれるらしい。


だから内陸に持って行っても大丈夫なのか。

食べるという貴族様の方が正しかったことに反省。


まだまだ知らないことは多いな。




車輪が前後4輪ずつ付いた船の形という、元の姿は何処行った的魔改造がおわり、出発する。

急造だったのでいつ壊れるか、軋む音が怖い。


行程の4/5を越えたところで轍に捕まり、ついに車輪のひとつが脱落した。

まずいな。分散していた加重が他の車輪に加わって連鎖的に壊れてしまいかねないぞ。



さらにひとつ、ふたつと車輪が壊れ、4輪になったところで配送先の街に着いた。

門を監視している兵士に事情を話して、この街の通運ギルドを呼び出す。


ギルド職員が連れてきた修理屋に車輪の応急処置をしてもらい、貴族様のお屋敷に着いたのは日が暮れた頃になった。


「おお、ご苦労だった。思ったより早かったな。」


労いの言葉を掛けてくれる貴族様。

疲れていたので事務的に伝票の受け取りサインを貰って、壊れた馬車とともに通運ギルド事務所に向かった。


ハァ、酷い目に遭った。

通運ギルド近くの宿を取り、気絶するように寝る。


翌日、鮫用に魔改造した馬車はもう元には戻らないので、薪として材木屋に売り払った。

また中古の馬車を買おうかと思ったが、サス付きの馬車は中古でも高い。

かといってまたサス無しの馬車というのは嫌だなと悩んでいるとケータイが振動しているのに気がついた。


メッセンジャーアプリの"SEN"が通知を出している。

彼らはバングランドに保護されたんじゃなかったかなと思いつつ、メッセージを読む。


"保護を受けたバングランドで緊急事態が発生しました。

ついては相談したいことがあるので連絡ください。"


緊急事態?


"一体どうした?"

"帝国には内緒で相談したいんです。今どこの国ですか?"


ふーむ。

以前保護を受けたと報告が来た後にバングランド帝国について調べたけど、

旧ミカカ連邦から革命によって独立した経緯でドモク共和国と仲が悪いとか、

強行的な拡大路線でケディデアや小国連合から叩かれてるのは知ってるけど…


どうもそういう話ではなさそうだ。


"ケディデア王国だ。こちらから向かった方が良いかな?"

"僕らは国外に出れないのでお願いします。ワイモB11-1516という街に向かいますので到着したら連絡ください。"


この名付け方はまたモヴァノ教か。どんだけ手広くやってんだあの宗教。


ワイモB11-1516を"※ハーカンク対応"地図アプリで検索すると、ケディデアとバングランドの国境付近にあることがわかった。

たぶん、彼らが移動できる限界がそこなのだろう。



何の因果かちょうど馬車が無くなったところだ。

馬車用のハーネス外して素のバイクでワイモまでツーリングを楽しみながら向かうことにしよう。





途中、比較的小さい街で休憩を挟みつつ、のんびり7~80km/hで西北西に向かう。

走行中は腰と股関節の痛みを感じないが、降りると途端に来るから要注意だ。


そこまでの高速走行をしなければそこまで痛くないのだが、アクセルを軽く開けるだけで60km/hは出てしまうのがビッグスクーターなのだ。

何十キロも絞って走れなんて無理を言わんでくれ。



前方の雲が黒い。遠くで雷も鳴っている。雨の予兆だ。

俺のバイクはジャイ□キャノピーのような屋根はないので雨に降られると困る。

蒸し暑くなるのを我慢して、いつ降られても良いように雨具であるポンチョを取り出して羽織る。


思ったよりも雨が強い。スコールとまでは言わないが100m先が雨で白くなって見えない。

ヘルメットのバイザーも結露してきた。

こりゃあかん。走行切り上げ、街に撤収だ。



街に着く頃には真っ暗な雨雲が空を覆いつくし、今日のうちは晴れそうもないのでここで一泊しよう。

バイクを入り口に止め、軽く泥を落として宿に入る。


「一人部屋、空いてる?」

「埋まっちまってるよ。二人部屋なら空いてる。食事は別料金だ。

それから馬車は置けないぞ。」

「しょうがない。それで頼む。食事は一人分でね。」

「あいよ。馬房は14番を使ってくれ。」


宿が取れたので厩舎にバイクを入れる。

雨で濡れてた上に好奇心旺盛な馬の隣になったため、『※吸水』『※速乾』『※サルミアッキ風味』のカバーを掛けて固定した。

これで雨水を吸収すると同時に舐められるのを防ぐのだ。



厩舎から戻り、鍵をもらって部屋に行こうとしたとき、入り口から人の声がした。


「一人部屋を頼む。」

「埋まってるよ。複数人の部屋も、そこのお兄さんが最後だ。別を当たってくれ。」

「そんなぁ。他の宿にも行って駄目だったんだ。なあ、あんた。オレと相部屋にしないか?」


振り向くといかにも冒険者ですというスタイルの若い女ヒューマンが居た。


「…襲われそうだからパス。」

「そんなっ!オレは襲わねーよっ。むしろお前の方が…いや、背に腹は…」


寝込みを襲われて荷物を奪われる事を気にしたのだけどなんだろう。すごく勘違いされている気がする。


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