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10-1モロコシ革命

ぐぬぬぬぬ。ケツが限界だ。

クッション敷いても全然振動が緩和されない。


中古屋で美品だったのに妙に安かったのはサスペンションが無かったからだな?

クソッ、サスが付いてるバイクに乗り換えよう。


今度は腰と股関節が痛い。

このビッグスクーター、内股気味に座るので股関節がやられるのだ。

しかも特注ハーネスがあるせいで足を投げ出す格好ができない。



街に着き、配送物を通運ギルドのベースに納入。

伝票を確認して貰い、配送料を精算して

ギルド備え付けの掲示板に掛けられた伝票の木札を物色する。


いつものルーチンだ。


ところが今日は職員に呼びとめられ、ある鍛冶屋に行って配送を受注して貰いたいと言われた。

理由を聞くと、馬車のスペースを一杯に使う製品の運搬を依頼されているという。


俺の幌馬車は小さいから断ろうと思ったのだが、重量物なので他の馬車持ちには既に断られてしまっていて

配送に来た俺が最後の希望なのだという。


仕方なくその依頼を受け、荷物を積むために鍛冶屋に向かった。



「集荷に来ました。」

「オウ、兄ちゃん。こいつだ。」


金属の板が何枚もついて弧を描いている。

これ、見たことあるぞ。


「板バネですか。」

「よく知ってるな。そう、板バネだ。隣町の修理屋に製造を依頼されててな、できあがったんで向こうに送って貰いたい。」

「…重いなぁ。これ、俺の馬車に穴開きませんよね?」

「あー。心配なら板きれを挟んでやるぞ。それで重量が分散するだろ。」


「それにしてもサスペンションかぁ。いいなぁ。」

「うん?お前の馬車には付いてないのか。」

「残念ながら。」

「ハッハッハ、そいつは災難だ。後から装着すると中古が1台買える価格になるからな。

もし取り付けたいのなら新造した方がええ。」

「そのつもりです。それじゃ、お預かりします。」



隣町にはすぐ到着し、修理屋への配達も問題無く終わった。


「それで、なんで俺が客先まで持って行かなきゃいけないんですかねえ。」

「そんなもん、ついでだ。ついで。短い距離なんだから持って行ってくれよ。」

「追加料金取りますよ。」

「わーかったわかった。ホレ。」


200エーペ黄銅貨を投げて寄越された。5,500円か。

なんだかなと思いつつ、馬車同士を連結する。




さすが約20馬力だ、馬車が増えてもなんともないぜ。


冗談はさておき。

馬車の受け取り人は錬金術師だそうだ。

といっても金属加工をしているのではなく、植物の研究を主にしているらしい。


「馬車持ってきましたよ。」

「ああ、もう修理が終わったんだねえ。さすが修理屋さん、仕事が早い。」


おばちゃんが出てきた。フィールドワーク後なのか、足下が泥土で汚れている。



「今年はねえ、小麦の生育があんまり進んでないのよ。」


おばちゃんの標準スキル"誰とでも世間話が出来る"能力を受け、錬金術の研究所の中に入ってお茶をいただいている。


「小麦?なんの研究をされているんですか?」

「私はみんなにおなかいっぱいに食べさせてあげたくて、小麦の収穫を増やそうとしているの。

でもこの辺は小麦の収穫時期と雨期が重なっちゃってねえ。

それよりも早く収穫するからどうしても収穫量が少なくなるのよ。」


小麦って雨が降るとマズいのか。知らんかった。


「それに、小麦だけに執着するのもどうかと思って、別の食べ物を研究しているんだけどねえ。」

「成果が上がっていないと。どんなものを研究されてるんです?」

「大豆でしょー、ジャガイモでしょー、あとトウモロコシもだわー。」


連作障害で駄目そうなラインナップだ。

ケータイを取り出して検索してみる。

大豆とジャガイモは連作障害が起きるらしい。トウモロコシは追肥すれば大丈夫みたいだ。


そのことを伝えると「そうだったのー。」と、わかったのかどうかイマイチな返答。

話題を変えよう。


「俺の故郷は米が主食でしたが、この辺は小麦が主食なんですね。」

「そうねえ。でも小麦だけというわけじゃないのよ。トウモロコシなんかは私達でも食べるわ。

でも、あまりおいしいとはいえないのよね。」


それはそのまま食べるためのスイートコーンではなく、家畜用のデントコーンだからだな。

ならデントコーンを人が美味しく食べる方法を検索してみよう。


あった、コーンミール?聞いたこと無いな。

でもそれが出来ればシリアルやウガリが作れるぞ。


「おばちゃん、その家畜用のトウモロコシと薪の切れ端ある?」

「あるけど、どうするの?」

「食べ物の開発。ちょっと故郷の食べ物を再現しようと思って。」


そういってトウモロコシを薪の切れ端で一列ずつ実を外していく。

外した実を乾燥…って、乾燥機無いんだった。


「乾燥なら私がやりましょう。」


さすが錬金術師というか、あっというまにトウモロコシの実が干からびていく。

次は粉砕だ。


コーヒーミルを拝借してガリガリ削る。

削ったものがコーンミールらしい。


そしてこれに水と(あれば)砂糖を入れ、油を引いた鉄板に材料を薄く延ばす。

オーブンに放り込み焦げないようにして10分程度。


できあがった板を一口サイズに割ったものがコーンフレークだ。


「まあ、こんな方法があったのね。」


手間がかかるのと、家庭にミルが無いところが多いだろうから、オーブンの取り扱いに慣れたパン屋にでもやらせれば良いと思う。



次はコーンミールからできるウガリを作ろう。


これはひたすら混ぜるだけなので家庭でも出来る料理だ。

作り方は簡単。

1.水を沸騰させる。

2.弱火でコーンミールをダマにならないように入れながら混ぜる。

3.とにかく、ひたすら混ぜる。

4.重くなったら焦げないように蒸す。


腕が疲れた。

ちょっとベチャッとしてるけどなんとか作れた。


「味はあまりしないのねえ。でも量はあるから喜ばれると思うわ。」


それは良かった。

腕がつるほど混ぜた甲斐がある。



そして最後に余った芯とヒゲだが、

芯は茹でて出汁を取ったり、実と一緒に粉砕してスープにするという感じで使えるらしい。

ヒゲは揚げたり、お茶にするとのことだ。


そして可食部ではない茎は肥料として使えるという、もはや万能植物だな。



「それで、この材料のトウモロコシだけど。どうしたら増えると思う?」

「追肥ですね。家畜の糞などを発酵させた肥料を撒いてください。」

「それなら小麦でもやっているからわかるわ。ありがとう。」


うう、またひとつ無駄に文明を進めてしまった。

メシ関係には弱いなぁ、俺。


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