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8-1バングランドのお客人

ケータイにはいろんなアプリが入っている。


その中には独り者なら限りなく縁の遠いアプリが当然ある。

"SEN"なるメッセンジャーアプリなんかが代表として挙がるだろう。


かくいう俺も(セキュリティーの観点から)"SEN"の使用を頑なに拒否していたうちの一人だ。



そんなアプリの"SEN"から通知が来ていた。

発信者は勇者君。


"バングランド帝国で保護を受けることにしました。

ただ、保護の条件として提示されたものがあるので助けてください。

ヨネツキさんには賢人から連絡が行くと思います。"


バングランドか。

たしかあそこは新しい技術などにやたらと投資して国民の不興を買ってるんじゃなかったかな。

あと"華々しい中央を称する人民の国"のような軍事拡大路線で他国から恨まれてた気がする。


まあいいや、『続報求ム』と。


着信が来た。賢者君だ。


『もしもーし。ヨネツキさん?

勇から連絡来たと思うけど、ちょっと面倒な条件を出されちゃったんだよね。』

「なんだ、自動車の引き渡しでも要求されたか?」

『それは断固拒否した。だけど交換条件てことで国のためになる発明を要求されちゃってさ。』

「文明マウントをしたいというわけか。

それで、何をやるつもりだ?」

『プロペラ・原動機・火薬とか考えたけど、どれも危険すぎて表に出せないっショ?』

「そうだな、そのへんは危険すぎる。」

『だから紙か炭あたりを攻めようと思ったんだけど、やり方知らなくてさ。』


そーいうことか。

しかし紙も炭も熟練の腕が必要だったはずだが…


「紙や炭をやるにしても、木材は確保できてるのか?とくに紙は繊維の長い奴が必要だが。」

『やっべ、それ考えてなかった。この辺は森がなくて、川沿いに細い木とか変な草しか生えてないんだよ。』

「そうなると炭団子かパピルスになるな。」

『あっ、それそれ。そういうの待ってた。やり方わかる?』

「調べないとわからん。川沿いの植物の写真撮って送ってくれ。」

『オッケー。』


これでよし。写真撮っている間に俺も"※ワイドの情報を見れる"ブラウザで調査…と行きたいが、ここは外だ。

よし、今日はもう移動やめて学生の手伝いしよう。




宿に入り、あらためてブラウザで検索をするとパピルスの方は簡単に製法が見つかった。これは植物を探す方が大変なパターンだな。

画像をダウンロードし、賢者君にパピルスの原料として送信する。


"でかいタンポポみたい"


…綿毛のことかな?だいぶ違う気がするけど。



炭の方は…作るための道具の確保が無理そうだ。

それと一番現実味のある炭窯を作っても実践は難しいと思われる旨を送信。


エールを飲みながら待っていると、パピルスによく似た植物を発見したと連絡があった。

ただし茎の形が四角だという。


縦に裂けるか、水性か、そもそも鑑定できたかの確認をした後、

「世界が違うからやってみないとわからん。」という結論になった。

無責任かもしれないが実際そうなのだから仕方ない。


とりあえず切って水に2,3日漬けてから並べて、叩きすぎない程度にべしべし叩いて、重石で圧力を掛けて1週間程度放置するということは伝えた。

後は野となれ山となれ。




およそ20日後、筆記に耐えるパピルスが帝国に認められて、保護を受けられることになったと連絡が来た。

それで、"大量生産するために草の養殖を始めたいので方法を教えてくれ"と来た。


"そんなもん、植わってた場所と同じ環境作れば良いだろうが"だ。

なんでもかんでも聞いてくんじゃねえ。


いや、聞くしかないのか?

おかしいな。ブラウザアプリを"※ワイドの情報を見れる"ようにしたと思ったんだが。

そこらへんは今度聞くとして、株分けができるくらいは教えとこう。




そういえば保護されたと言っても、バングランドはメシが美味いのだろうか。

たしか賢者君が絶対条件に"メシが美味いとこ"を挙げていたはずだが。


株分けの情報を送信するついでにそこんとこを聞いたら、"食えるレベル"と返ってきた。

なんとも微妙な回答だ。


文明マウントもいいが、食べ物の改革はやらないのかと聞いても"品種改良は一朝一夕にはできないよ"という答え。

ふーむ。なんかだいぶ参ってしまっている感じだな。


ちょっと電話しよう。


『はいよ。』

「俺だ、ヨネツキだ。」

『どうしたのさ。』

「ヨカル王国出るときと、ずいぶん条件が変わってしまっていたんでね。」

『ああ、それね。何処行っても泥臭いか味がないのばっかでさ。

メシがまともに食えるだけマシって感じ。』

「水はどうしてるんだ?」

『川の水か井戸水。』

「濾過してないのかよ。」

『方法がわからないんだよ。』

「わかった。教えるから濾過する道具を作れ。それだけでだいぶ食事がマシになる。」

『オッケー。』


俺も幌馬車に濾過キットを常備してるくらい水には注意を払ってるんだ。

濾過と煮沸で美味い水が使えるようになれば、料理の味もまともになるはず。


そう思って俺が参考に使った濾過装置の画像を送ると、早速作ると返信が来た。

少しは元気が戻ったようでよかった。



翌日、通運ギルドで依頼の物色をしてるときメールの着信が来た。勇者君からだ。


"賢人に教えてくれた濾過装置のおかげで食事が美味しくなりました!

保護してくれたお偉いさんにも好評です!!"


画像が添付されていたので見ると、スープ系の料理が並んでいる。

そりゃあいままで生水で調理してたんなら劇的に変わっただろうよ。


モチベ維持のためブクマ、評価、感想、レビューお願いします。

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