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7-1狩人協同組合

その日、通運ギルドは通常業務を縮小してハンターギルドこと狩人協同組合のスタンピード対応に追われていた。


たまたま配送に来た俺もそれに巻き込まれ、スタンピード発生地のエニルから

大型の解体場があるノエアまで退治した魔物を配送する業務に従事していた。

というか、なし崩しにそうなった。


"※無限収納"のメットインを使えば一回で終わるが、いろいろ問題が起こるので

バイクのカウルに馬用のハーネスを無理矢理くくりつけて往復している。


「おい、これで5往復だ。ちゃんとカウントしてるんだろうな?」

「もちろんだ。運んだ魔物も台帳で管理してるよ。」


乗っているバイクは普通の馬より馬力(約20頭分)があって、なおかつ10倍以上速く走れる性能を有しているが

スペック通りに動かしたら次何を要求されるかかわかったもんじゃないので、抑えて走っているのだがそれでも早い。

おかげで腐ると困るモノを優先的に運ばされ、いい加減鼻が馬鹿になってきた。


6往復目。4頭立ての馬車が2往復でバテバテなんだから、そろそろ俺も今日分は終わったと言っても良いだろう。


「なあ、いいかげん俺の担当分は終わってんだろ、魔道具がぶっ壊れるからこれで今日は終わらせてもらうぞ。」

「なにィ?もっと運んで欲しかったが、商売道具が壊れるってんなら仕方ねえな。エニルにはギルドから連絡を入れとく。」

「ああ、そうしてくれ。」


そう言って通運ギルドが用意してくれた宿に向かった。



井戸水を頭からかぶり、石鹸で洗っていく。

本当は体も洗いたかったが、それは我慢。


髪を拭きながら宿に戻ると、一足先に馬が限界を迎えて仕事をあがりにした連中がロビーでたむろしていた。

その中で顔見知りになった2人が挨拶してくれる。


「おっ、二輪の運送屋じゃねーか。お疲れィ。」

「オメーも上がりか?」

「そうだよ、魔道具が悲鳴を上げてるんだ。」

「俺達とは別の意味で大変だな、魔道具のメンテナンスはすんのか。」

「ただのオーバーヒートだよ。」

「なんだ。水ぶっかけりゃいいじゃねえか。」

「そう簡単にいかないから魔道具なんだろ。」


そんな感じで会話をしながら仕事終わりの一杯を飲む。


「ぷへーっ。やーっと人心地ついたー。」

「オウ、お疲れさん。」

「本当に疲れたよ。あとどんだけあんのさ。」

「さてなぁ。エニルで処理しきれないのがこのノエアに運ばれてきてるから、正直わからねえ。」


「狩協の解体屋、徹夜だってよ。」

「肉はさっさと解体しないと腐っちまうからな、しかたねえ。」

「何言ってやがる、俺達も馬が回復次第エニル行きだぞ。」

「え、マジ?」

「マジもマジ。運び手が全然足りてないんだとよ。」

「カーッ、ヒューマンが夜目利かないの知らんのか。」

「だから先発で休んでた奴らが狩協に抗議しに行ってる。」


抗議が通じますようにという祈りが通じたのか、夜の運搬は無くなったことが伝えられる。

そのかわり、夜明けと共に仕事をしろとお達しが来た。


「ま、今日の所は休めるって事で納得するしかねえか。」


そういって皆、自分の部屋に戻っていった。

朝早いからさっさと寝ちまえって事か。

…俺も寝よ。



そして翌日。


夜明け前にたたき起こされ、夜明けと共に仕事を開始させられた。

しかも昨日は1台だけだった台車が数台連結されている。


「どういうことさ。」

「効率を上げるんだとよ。何考えてんのかね。」


そりゃあ馬力換算すれば何十頭分行くけどさ。

いくらなんでも筋が通らないだろと抗議したら2台に減った。


それでも2台か。頭大丈夫か?狩協。


抗議の意味も込めて、スポーツモードにして低速で走る。こうすることでエンジンのうなりが激しくなるのだ。

本来の使い方じゃないが、"※非破壊"なので使える手法だ。


そうやって往復したらヤバいと思ったのか、2往復目からは1台に戻された。


当然の措置だと思いながら5往復目。

復路を走っているとノエアの方角に煙が上がった。

なんだ?


近くで馬を休ませていた同業者に聞く。


「信号弾のことか?ケディデア国内じゃ常識なんだが…お前講習受けてないのか。」

「講習?」

「狩協がスタンピードや襲撃に備えて狩人や運び屋に信号弾の携帯を義務化してるんだ。

持ってないなら狩協の売店で買えるから3発ぐらい所持しときな。」


そうなのか。


「じゃあ、さっきの信号は?」

「知らん組み合わせだ。だが全部赤だから解体場の受け入れがもう出来なくなったのかもな。」

「ふーん。」


とはいえ荷物は既にあるからノエアに向かうしかない。

着いたら指示を仰げばいいだろ。



「おーぅ、お疲れさん。」

「信号弾はなんだったのさ。」

「受け入れ停止だ。倉庫が満杯になっちまったんだと。」


じゃあ、今牽いてるのは何処に持って行くのかを聞くと、

それは引き取るが新しく持ってくるのを停止、つまり休憩だと言われた。


ならばさっき言われた信号弾を買いに行こう。



「何の用だ、小僧。」

「信号弾を買いに。」

「3発セットで20エーペ(約500円)だ。」


目が合うなり小僧呼ばわりするとか、感じ悪いやっちゃなあ。

狩協ってところはそんなに治安良くないのかな。


それともスタンピードの後処理で気が立ってるのかな。

そうだといいんだけど。


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