「襲撃」②
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バンッ
乾いた、重い銃声。
しかし、私は死ななかった。
引き金が引かれるのとほぼ同時に、私の手から拳銃が強引にひったくられたからだ。
誰かの深く息を吐く音が、耳元で聞こえる。
(・・・死ねてない、私)
「おい、目開けろ、目」
なんだか、ひどく懐かしい声がする。
その声に刺激されて、私の天邪鬼な部分が騒ぎだす。
・・・少しだけ、黙っててやろう。
「いや、なあ、おい」
ちょっと困ってやがる、この男
「・・・遅いじゃない」
言われた通りに目を開いて、にらみつけてやった。ジト目というやつか。
五年ぶりだ。
「悪かった・・・。頑張ってはみたんだけど」
相変わらず、変に素直な所は変わらない。
不意に足から力が抜けた。床にそのまま座り込んでしまう。
「・・・腰、抜けた」
「そのまま、休んでな」
「・・・うん」
見上げる形で、もう一度私は幼馴染を見る。
伊吹は優しい顔で、ゆっくりと頷いた。
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「一般の学生さんには、ご退場頂きたいんだが」
背後からの声に振り向く。
大男を筆頭に、武装した男達の銃口が僕一点に集中していた。
「そいつは申し訳ない。この子を連れて帰りに来たもので。お邪魔でしたらお暇します」
「いやいや、そんな必要はない。戻る手間なんてかけさせないさ」
それにしても、と大男が続ける。
「君は今、私たちの頭を飛び越えてそこに着地したのか・・・。何かの選手か?」
「ただの一般学生ですよ。体の堅さは折り紙付だ」
何か面白かったのか、大男が少し笑った。
「そうか、もったいない。正直、君の身体能力には興味がある。もしよければ、うちに来ないか?」
「お断りだ。君たちが何者かも知らないし、興味もない。おまけにネーミングセンスも悪そうだ」
「それは残念だ。すまないが、我々も少々時間が押していてね。ここでサヨウナラだ」
男達の銃が構え直される。
「でしょうね。トゥルアクルまでの道のりは、確かに遠い」
大男の眉が、ピクリと動いた、次の瞬間。
「撃て!」
大男の声が響いた。
ただ、銃声は続かない。
「どうした、撃て!」
大男が再び叫ぶ。
しかし、その後に響いたのは周りの男達が床に崩れ落ちる音だった。
地面に血だまりが少しずつ広がっていく。
大男の顔が、みるみると強張っていく。
「な、なにが起こった・・・!?」
「・・・こいつはね、まだ退場してもらうには早いんだ」
一歩、大男に近づく。
「ましてや、あんたらみたいなクズに拉致られて、クソみたいな政治の道具にされるのは見過ごせない」
もう一歩、大男に近づく。
「き、貴様、一体何を・・・」
大男が、一歩、後ずさりする。
「何をした・・・!?」
「僕らの祖先の言葉を借りれば、天誅ってやつさ。トゥルアクル人には、馴染みはないだろうが」
もう一歩、近づく。
「語源から考えれば、確かに僕がやればこそ天誅なわけなんだが、まあそれは置いておいて」
もう一歩。
そして、僕の瞳に七彩の光が灯る。
「失せろ」
横一閃、腕を振り抜いた。
その瞬間だけ顕れた剣が、大男を横に薙ぐ。
一瞬の静寂の後、ゆっくりと大男の首がその胴体からずり落ちる。
やがて、その首は鈍い音を立てながら地面を転がった。