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プロローグ ダメ勇者認定された件。







「お前はどの勇者よりも弱かったな。本当に役立たずだ。あまりにも弱すぎるから、命までは取らないでおいてやろう」

「うぅ、くそ……! そんなの、屈辱だ……!!」

「ふん……! 哀れむ心が、余にも残っていたとはな。一つだけアドバイスをしてやろう」

「アドバイス、だって……?」


 俺ことタケル・ムネチカは魔王に敗北した。

 そして、あろうことか情けをかけられてしまったのだ。


「あぁ、そうだ。どうして負けたのか、次に会う時まで考えておいたらいい。そうすれば、なにか見えてくるはずだ」

「………………」


 しかも、アドバイスまで。

 俺はがっくりとうな垂れて、魔王城を後にした。

 王国に帰るのは、なんとも心苦しい。足取りは重かった。



◆◇◆



「まったく。逃げ帰ってきた勇者など、貴様が初めてだぞタケル」

「情けないこと、この上なしだな」

「まったくですわ!」

「うぅ……!」


 国王様、後輩勇者、王女様の視線が突き刺さる。

 特に後輩勇者のマイケルのそれは、侮蔑以外の何物でもなかった。昔は剣術や魔法の指導をしてやったというのに、そんなこと忘れたように見下してくる。

 しかし、それも仕方ないのかもしれない。


 俺は過去の勇者の中でも、最も才能に恵まれなかった。

 マイケルのように容姿もよくないし、戦闘能力だって劣っている。いや、たぶん――フツメンくらいだとは思いたいんだけど。


「ふん……。貴様にはもう、用はない!」

「国王様の言葉だ。今すぐ消えるんだな、このダメ勇者もどき」

「マイケル様ぁ? 本当のことを言うなんて、可哀そうですわぁ?」


 笑い声が上がる。

 畜生、俺が何をしたっていうんだ。

 いままで国を救うため、そのために鍛錬を積んできた。それなのに、誰にも認められず、なぜか孤立した状態で魔王と戦うことになったのだ。


「…………」


 ――なにか、おかしい。

 そうは思いながらも、俺はトボトボと家路につく。

 背中に、三人の愉快そうな声を受けながら……。



◆◇◆



「それにしても、負けた理由を考える、か……」


 自宅のベッドに腰掛けて、俺はボンヤリと魔王の言葉を思い返した。

 もう忘れようとも思ったのだが、もしかしたら、なにか突破口が見つかるかもしれない。俺はそれから何日もの間、考え抜いた。

 寝食を忘れて。

 自分にしかない、何かを見つけ出そうと……。



 その時は、思ってもみなかった。

 この行動の先にこそ、俺の真の力を目覚めさせるものであったなど。


 


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