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俺の閣下  作者: テディ
本編
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第6話  呆れ

 ソフィアから、思いもかけないことを問われた後の休日前

ジョシュアは珍しく1人でソフィアの書類をチェックしていた。


ソフィアは他の近侍を伴い、他の部署に行っていた。

他の部署を見せたり、顔合わせしておく必要もあるのだ。

ジョシュアがいないので、おそらく普段の3倍は時間がかかるだろう。

なにせ脱線の得意なソフィアだ。あらゆる好奇心がひっかかるに違いない。


そんな所へ、待ってましたと言わんばかりに、

学生時代の友達やら、幼馴染やらが大挙して押しかけてきた。


先日、ソフィアの晩餐に招かれていたリリー、マイア、モリン、

次は男性の友人でルーク、カイ、オーリー。

女性陣はソフィアの年齢に近く、男性陣もカイだけが

ジョシュアと同じ歳だ。

ジョシュアはため息をついて、他の近侍に休憩を与えた。

しばらくは仕事にならない。


コーヒーと女性陣が喜ぶお菓子を出してやった。

「みんな、暇なのか?俺は見ての通り、執務中なんだが……」

そう言うとリリーが口火を切った。

「ジョシュ、このお菓子とても美味しいわ。ところで

ソフィアに自分の側にいたいか聞かれたそうね?

もちろん求婚したんでしょ?」


その質問に、ジョシュアは目を丸くした。

「何で知っているんだ?」

モリンが優しく微笑んだ。

「ソフィが喜んで、自分で話しているもの」

マイアも快活に続けた。

「ソフィが、ジョシュがもう良いと言うまで側にいると約束したって

大喜びで話して歩いているわよ」

オーリーは、ゆっくりとコーヒーを飲みながら付け加えた。

「ついでに言うなら、ソフィはジョシュに

もう側にいなくとも良いなんて言うことはないから、

これでジョシュは自分の側にずっといることに決まったんだと話している」


あまりの事に、ジョシュアはコーヒーカップを手に固まっていた。

口をパクパクさせ、何か言おうとしている。

その様子を見てカイが、ため息をついた。

「やっぱり自分の気持ちは打ち明けなかったんだね?」

その一言に、ジョシュアはやっと言葉を振り絞った。

「あ……当たり前だろう?!あれでも姫だぞ?!」


ルークはいつも通り穏やかに話し出した。

「ジョシュ、もう身分差は気にしなくて良いんじゃないかい?

周りも、誰も気にしないと思うよ。ソフィを起こせるのも

働かせるのも、余暇を与えるのもジョシュなんだから」


ジョシュアはその言葉に、首を振った。

「俺の愛情と、ソフィの愛情、その質が違ったら

そばにいられなくなる。……まだ覚悟ができない……」

伏目がちにそう言ったジョシュアに、マイアが喝を入れた。


「ジョシュ!!暗い!!あーー、暗いわ、暗い!!

あなた小さな頃は、そんなに暗くなかったじゃない!!

何?片思いが長すぎると暗くなってくの?!

あなたの良さが半減されてしまうから、およしなさい!」

「わ……悪かったな!!暗いって何回も言うな!!」

文句を言ったジョシュアに、皆が微笑む。


小さな頃から、ジョシュアは皆の弟だったのだ。

嬉しそうにしたり、からかうとプンプン怒り、

庭で誰よりも楽しそうに遊んだり、可愛らしく、時に生意気な

大切な弟。だから仕事が始まってからも、ついつい口を出しに来る。

何せジョシュの恋の対象はソフィアなのだ。

ここにいる全員が一筋縄ではいかない事を知っていた。


そして全員がジョシュアが自分の気持ちに気がつく前から、

彼の恋心の対象が誰であるか知っていた。

皆が気がついたのは、学生の頃からだ。

淡い幼い初恋かと思って様子を見ていたが、どう見てもその可能性はなかった。

それからというもの、ジョシュアは色々なアドバイスを受ける事になるのだ。


学生だったジョシュアは、なぜみんなが自分の気持ちに気がついたのか

さっぱり分からなかった。最初の内は、そんな事はないと突っぱねていたが

誤魔化しも効かなくなり認めてしまったのだ。

それでも、何だかんだと言いながら見守ってくれる仲間に感謝していた。


「みんな、簡単に言うけどな、これでも色々悩んでこうなっているんだ……!!」

プンプン怒ってコーヒーを飲み干すジョシュアに、カイが更にため息をついた。

「ジョシュ、考えすぎなんだよ。当たって砕けろっていうだろ??」

「……お前、砕けたことないくせに!!」

カイは穏やかそうに見えて、なかなかモテる。


そんな会話にオーリーが爆笑して、加わった。

「確かにな、でもカイの言うことも一理あるぞ?

お前、1回断られたら諦めるのか?」

「オーリーは断れても諦めるつもりはないのか!?

相手の迷惑になったら困るだろう!?」

オーリーはニヤリとした。

「確かにそうだな。でも俺の気持ちは俺の物だ。

勝手に想っているのであれば、誰の迷惑にもならん。

ま、その内絶対に想いを遂げて見せるけどな」

そう言ったオーリーの顔を、

口を開けて見ていたジョシュアは、あきれていた。

「それ、結果は決まってるって事だろう……?!」


ルークは優しく微笑みながら、ジョシュアを見た。

「ジョシュ、オーリーもカイも、

そのくらいの気持ちで押して行っても良いよって話しているんだ。

いいかい、よく考えてごらん?

ジョシュが気持ちを打ち明けたとして、

ソフィがそれが恋だと気がつかない可能性もあるからね?」


ルークにそう言われてジョシュアは固まった。

その可能性は、考えた事がなかった……。

そう言われれば……可能性がなくもない……。


そんな男性陣を見て、リリーが決断した。

「ジョシュ、私達からソフィが恋愛小説を読むよう、

何とかするわ。あなたも協力しなさい」

「お……俺も⁈」

「その通りよ。あなたが居ないとソフィが読むわけないじゃない。

アッと言う間に寝てしまうに決まっているわ」

……確かに、アッと言う間に寝るだろう……。


「わ……分かった……」


こうしてジョシュアは、皆に押し切られたのだった。

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