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それは蒼穹より量産型少女とガラクタ王子とロボットと  作者: 秋天
第三話 「花びらたちの願い」
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第三章 「朋輝と水色の先の(前編)」

間が空きましたお詫びに二話連続投稿なのです。


「いやー何かちょっと久々だねぇ、探索」

シュライク部品の探索の旅。ようやく次の部品の特定が出来てきての再開だった。

「ダム湖の底か……えらい遠い処まで飛散したもんだな」

はるる野の遥か西、山岳の中にある”深城ダム”であった。


「”シオジの森ふかしろ湖”だって、ちょっとお洒落な名前だーね」

検索が趣味になってる雉子。ペロの感知に雉子の検索を併せての場所特定であった。

「不知火さん、そしてペロ。毎度頼りっぱで済まないね。感謝だよ」

「えへへ。ペロも日々パワーアップしてまして、これくらいお安いのです」

ぱぅ!とペロの一吼え。背に乗せて貰ってたとは言え、結構な長距離だった。


「問題はまたあのオオカミ型の乱入だよね」

「あぁ、だが今回は水中だ。上位型だろうと器用に動けないさ。そこをアイレ、

 いざとなったらお前と……ん?」先程から無言のアイレ。

「また――何か想いだしたのか?」「え?あ……」

等身大アイレ。ペロの背に乗っていた時もずっと雉子にしがみ付いて物憂げな顔。

(そうだったな、突然白い巨人フィエーニクスを認識できて、地上に堕ちて来た

 今の現状を正視し始めたんだっけな)何故このタイミングなんだという気もあるが。


『――兄ちゃが!兄ちゃが……居るの――?』


先日の事だ。出会い頭の朋輝に血相を変えて飛びついてきた。

予想外でもなかった――今まで白い巨人フィエーニクスを観ても特に反応が

無かったのが逆に意外でもあったからだ――”まるで白昼夢をみてるかの様だ”と。


(機械種からの影響から解放され始めたからなのか?)そう結論づけた朋輝。

「あぁ、あの白い巨人はな、フィエーニクスに似せた機械種ドロスィアの上位個体だ……」


あの時はそう教えた。暫く思考し、真実は伏せた。

似せてそれっぽい動きをしてるヤツがたまに出る、と。

苦しい言い逃れ。

「不思議なことに無害なんだアレ、何か機械種を倒す事まで真似ててな」

他にもそれらしい嘘を並べ立てた。「ボロいのは不完全なコピーだからだ」とか

「あいつが時間を稼いでくれてる内に部品を集められればラッキーじゃん?」

と絞めてアイレを何とか落ち着かせた。本物ならすぐに見つけて助けに来るはずだと。

「そう、だね……兄ちゃならアイレ見つけてくれてる」

納得はしてない顔ではあったが。


「兄ちゃは……アレには乗ってない、まだカエルムに居るのね」

(く。段階があるからまだ教える時じゃない、なんてクソみたいな理由で)

こんなにも不安な少女に嘘を吐かねばならない自分をはがゆく思う。

「そうだな、天威の国だっけ?そこで何かあったんだ。不完全なコピーだし、ハハ。

 あいつら何したいんだろなぁ」そう、お道化るしかなかった。


「アイレちゃん大丈夫?」稚子が気にかける。すっかりお姉さん気分だ。

アイレはハっと我に還ると、ぶんぶん振って作り笑顔を見せた。

「ううん、何でもない。あーちょっとペロ酔いしただけよよ~、へへ」

「アイレ重くなったしな」人の姿に戻ったし、と。「え、あ……そう、そだね」

返しにキレがない。時たまチラ見する顔に”何か隠してない?”と書いてあるのだ。


(悪いな、アイレ。向こうは向こうで、こちらはこちらで解決しないと)

軽く頭を撫でてやり、後ろめたさにフタをした朋輝であった。



「水の底かぁ、まだ夏には早いし勇気入るな」

道路の無い地点にペロを着地させたので一目につかなくてすんではいた。

「立ち入り禁止地域に入って悪フザケする今時の若者って感じでゴメン~」

「すまないとは思う、俺達には頼みの綱なんだ」「わかってるって」

「さて、泳ぎは人並みだが俺がいっちょ潜ってみっか」

「あ、大丈夫です。ペロ水中モードがあります」「はい?」

ばーん、と恋縫が皆の前に躍り出る。

「ペロっていくつか形態持ってるんです。割かし古参の機械種ドロスィアなんで。

 ほら、そもそも恋縫って水中でパクってやられちゃったでしょう?」

うっかり橋から転落して水落ち。その水中でペロに喰われたのだと説明。


「そうか。吸収した形態の中に水棲生物があるんだね」

「え、笑顔で喰われた報告する恋縫ちゃん大物ね……」稚子が若干引いてる。

「はいデスよ~ペロ、かもーん!」

むふーっと鼻息荒いドヤ顔の恋縫は、くるっと一回転で指ぱっちん。

「音、鳴らないね……」「こ、小指の指ぱっちんは気分屋なのです!」


そんな主人のスベりを誤魔化す《フォロー》するかの様にペロは湖面へ跳躍、

くるんと空中で回転すると「わ!でか!」と皆の驚愕に迎えられつつ

まるで潜水艦の様なサイズの巨大魚へと変化した。


「ペロ、水中用”シーラカンス”モードです!」

懲りずにドヤ顔は忘れない恋縫だった。



「わ。すっごい、潜水艇みたいだねペロちゃん」

「シーラカンスってあれだろ。生きた化石ていう古代魚、また珍しいのを」

「よよよー!凄い凄い、水ん中ってこーなのね」

ペロは古代魚に化け潜水している。中に人が入れる空間が出来ていた。

「ダムだって聴いたんでペロに頼んで居住スペース作って貰いました」

機械種ドロスィアだっけ、やっぱ何だかんだでロボしてるんだね」

内装はテーマパークの様に厳かに小洒落てて、SFっぽくもあった。

「こ、恋縫ちゃん。師匠って呼んでいいもも?」

アイレが何か上気した顔で恋縫の手を握る。「え。あ、ししょうですか?」

「機械種使い、怖ぇって引いてた小生恥ずかしいっす!」「なぜ後輩口調!?」

恋縫にはちょっと距離があったハズが。もっとぐっと迫るアイレ。

美人二人が見つめ合う絵面は華々しい様にもみえたが。

「え、あ。ど、どんとこいです!」「ボスぅ~」「呼び名がスデに違う!?」


暫く潜航すると、湖底になにか膨らみがあるのが判る。

「あぁ、アレですね。ペロがそうだって」「ペロに回収頼める?」

「もっちです。ペロ、アンカー射出」

ばしゅう。シーラカンスは背びれ尾びれが五つほどあり、それが水底へ向けて

射出された。ヒレにはチェーンの様な綱でペロに繋がっている。

「不知火さん……マジ凄いよな」「ボスすげぇっす」「え~ペロの能力ですよぉ」

頼んだら叶えてくれただけ、と。

(そういう天然なトコ込みで、だよ)とは中々言えない面々であった。

ヒレで絡めて引き上げる。

暗色に埋もれていたソレはやはり何かの脚部で目当てのモノだと確認できた。

「順調だ」「何か遺跡特番みたいで感動」「よよよ~!」

「え~ペロの能力ですってばぁ」恋縫が調子に乗ってドヤってるのは皆がスルーした。


浮上。

重量はあったのでゆっくりだったが、無事、湖面へと帰還できた。

「ふぅ、今回は障害もなく順調にいったな」「んー簡単だねぇ」

「モキモキは障害があった方が燃えるタイプ?」「そうじゃねーけどさ」

先程の逡巡もダム湖ダイビング体験で気が紛れたらしい。


「そいやアイレ。ずっとその服だな」

人型の姿になってから衣装は簡素なドレスだった。それはそれで可愛いのだが。

「んん?あー、アイレが日常でよく着てた服だね」

「女の子なのに一張羅って哀しいな」稚子がきらーんと閃く。

「そだ、朋輝。今度みんなでアイレちゃんの服買いに行こう」「ん?」

「好いですね!アイレさんと付き合いが探索の旅ばかりでは寂しいのです」

稚子と恋縫がきゃっきゃと盛り上がる。確かに、と得心する朋輝。


アイレが朋輝を下から見上げる。「モキモキ……いいの?」

間近で観るとやはり王女としての美貌が目につく。

宝石みたいだ、とベタな感想で、黙っても喋っても美人なんだから困る。

「……この流れで断ったら俺、鬼畜だろ」

「いいよそれくらい、ってキザでも言えよよォー!」

アイレにみぞおちを殴られた。雉子に蹴られた。恋縫が指ぱっちんをミスった。


……こうして、本日の探索が恙なく終了したのだった。


ハズが。


湖面に船の様に浮上した水中モードペロの上に、ヤツがいた。

ゴォォォゥ……。唸り声と共に見えるは白銀の狼の痩躯。

「嘘!?」「まさか?」

居住空間の天蓋が透けて上部が視える様にしてくれてたので至近距離で視える。

「くそ、オオカミ型のやつ、回収のタイミングを狙ってやがった!」

ガァアウゥ!と吼えると早速、脚部に食らいついてきた。


「不知火さん、天井を解放!」「あ、はい!ペロ!」今回は指が鳴った。

「ち!アイレ、ぶっつけ本番頼む」「うん!あんな謎ワンコにゃ負けないもん」

アイレは朋輝の背後に回り、ツインテールから細い髪を伸ばす。

それは銀アイレがよくやっていた銀糸の網。それを、

「モキモキ!」朋輝の右手がシュライク化する、その肩にアイレが手を置く。


「合体技!投げ網☆投擲☆アイレをちょうど!」


謎の掛け声とともにシュライクの翼から羽根が扇状に射出される。

と、網も付いて飛び広がった。「締めた!油断してたぞアイツ!」不意打ちで

ヤツの脚に羽根&銀糸の網を絡めとる。

オゥアゥ!?

「わ。そんな事出来るんだ」「アイレの髪は強い、格子状にすれば……俺の

シュライクの腕と絡めればもっと強い!」「か、絡める!?」

稚子が何かドキドキしてるが今は奴の動きを封じるのが先だ。

バッシァアアン。

何とか両方の後ろ脚を絡める事に成功した。バランスを崩して狼は前方へつんのめる。

「間抜け!水底みなぞこで眠ってろ!」網を切り離し、朋輝は跳びかかる。

左脚をシュライク化させて蹴りをかます。見事そのまま湖面へ堕ちていった。


――が、

オオカミ型の執念は強い。自分に絡まった網――その余剰した銀糸を振り、

朋輝をも絡めとったのだ。

「うぁ!?コイツ」「朋輝――!?」

女性陣の悲鳴が湖面に潜る水しぶきに消えてゆく。

(あいつに……勝てる、それだけを思って……)口惜しい。

奇襲のためにアイレと合わせ技を練習していた(甘いのか。まだ甘いのか……!)

そんな事を想いながら意識は泡と共に湖底へ流れていった。



気がつけば――そこは水底……ではなかった。

水面みなも――それが始めの印象であった。(足がつくぞ、沈まない)

起き上がる。(知ってる――これって)浮上した意識が辿り着いた先は、

「操舵……空間?」いつかの、あの桃と銀のアイレと邂逅した不思議な空間を

思わせる、一面の水面の世界であった。だが「なんだけど……何か違う?」そう思えた。


『――は?何だって――キミ、なんで今この刻にココに来てしまうんさ』


焦点が定まらない。だが誰かが居た。

操舵空間に視える、けれど天蓋を覆うは虹色の空。水面が拡がる世界に小島があり、

そこにキャンバスを置き、誰かが絵を描いてる様だ。

やはりはっきりと見えない――”ただ、そんな感じだ”という認識だけが在る。

それはドレスを纏った優美な長髪の女性だろう外観。不思議な帽子を被り、

不可思議な情景にハマる幻想の存在に思えた。気になったのは髪。


「銀色の……髪?」そうだ――そこで朋輝は認識した。

あの朝――、あの帰り道――、そこで幻惑的に視た銀色の存在。

「……ここに居るコイツが――アレだったってのか……?」

朋輝は……そんな異空間に迷い込んだのだ――。

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