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それは蒼穹より量産型少女とガラクタ王子とロボットと  作者: 秋天
■■ 第二幕「ガラクタ王女とシスコン王子」 ■■ 第一話「朋輝と妖精の春」
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第三章 「朋輝と動物園の想い出」

二章短かったので早め

『――んでさ、あれ、シュライクのパーツを探して復活したいの』

「ロボットの事か……墜落でオコゲになった部品拾う意味あるのか」


無料で開放されているので気兼ねなく入場。

現在の動物公園のヤギ小屋の奥。

元・アフリカ象の飼育施設がそのままに残されており、

そこを密かにアイレの巣とすることにしたのだった。

(アイレは視覚疎外で視えないとはいえ、気とられない様にと釘を刺した)


『巣じゃないもん!愛の巣だもん』「……何にキレてんだよ」

ゾウ数体を飼育保全することもあって建物は大きく、外にはゾウ用の

水浴び池や軽い運動用遊具なども残っていた。

『ほんっと広くていいもー。古いけど綺麗に片付いてるし』


動物公園に生まれ変わるにあたって取り壊しも懸念されたが、

市民からの要望で、そのまま保全されることになった。


「……懐かしいな、10年前、閉鎖間近に最後に家族で来たっけ」

キリンやゾウなどの大型動物はそびえる存在で、

気の小さい朋輝少年はソラの後ろから恐る恐る眺めていた。

『もうゾウさん居ないんだね、閉鎖してどこか貰われたの?』

「……それが、閉園理由でもあったんだ」小首をかしげるアイレ。


『――えぇ?ゾウさんたち突然いなくなったのの?』

十年前の事だ。

とある時期から少しづつ大型動物たちが姿を消し始めた。

監視カメラも警備員も配置していたのに、である。

映っていた映像には、何かに飲まれて消えるゾウの姿が断片的に

残っていて――まったくもって原因不明だったという。


「当時大きなニュースにもなったさ、西東ファサーランドが

経営母体だったんだけど……カンカンでね、警備不十分だと」

意味不明な消失事件は証明すら出来ず、契約解除になって閉鎖。

なにしろ、看板動物が全部いなくなったのだ――


「……閉鎖の日には泣いたな。飼育員さんに泣きついて、

 ソラ姉にも泣きついて……」『寂しいね……』

かつてのゾウ達の姿は遠い彼方。ただ記憶の中で雄姿を想わす。


さぁ。

――桜の花びらが舞う。うっすらとした春の余韻。

『サクラって言うの?すっごい綺麗ね』

「あぁ、夜桜が楽しめるからこの時期の動物公園は

 結構地元の観光名所でもあるんだ」

ライトアップされた夜桜。舞い散る花びらも光る粒。

「小さい頃からソラ姉と二人で通ったな――」

『……またその名前』

「いいだろ。世界はウチと隣りの従姉弟の家だけだったんだ」

「ふーん……いいもん、兄ちゃいるもん」

興味なく、舞い散る桜の花びらの空間を舞うアイレ。

非現実な妖精のソレが、意外にも幻想的に似合い、

朋輝も思わず苦笑してしまう。


「春の夜の夢の如し――」思わず声に出る。

『なに?詩人なのモキ』

「ウチの国の大昔の人が詠んだ句だ――」

『どんな意味?』

「あぁ、この情景にはミスマッチなんだけどな、

”栄えたモノは必ず滅びる。春の夜の夢の様に”ってな」

『……ふーん。綺麗な響きなのに寂しいね。

 まるでカエルムだ』「(カエルム……こいつの国か)」


背面泳ぎの様に花びらの海を泳ぐアイレ。

絵になるのに横顔が物憂げだ。


『――ウチの国ね。機械生命種ってのにやられて

 けっこー滅びかけてんの』

「……敵が、いるんだな」

『うん。記憶がまだ曖昧でごっちゃだけど、アイレが

 こうなったのもそいつらのせいだと思う』

「ロボットはその為のか」

『うん。アイレ専用のかっくいーロボ、強いお』

ちょっと微笑む。

深く聴いてみたい衝動もあったが、アイレの微笑に

それは躊躇ためらわれた。

「家族はお前の帰りを待っているのか」

『――たぶん。兄ちゃに逢いたいなぁ』


朋輝は桜吹雪を一人進み、静かに言い放った。


「――家族は大事だ。お前、あの姿に戻りたいんだろ?」

『おー?ひとめぼれ?』「美人なのだけは認めんよ」

『へへー、嬉しいよっ』

「あの全裸じゃ恥ずかしいから、それ再生させて

 国に帰してやんないとな、全裸ストリートキング王女は恥ずかしい」

『あーははは、照れ隠しだー』

「お、お、おまえ、どうにも一言余計だよなっ」

「テレてるー!モキのくせに優しー!嬉しー!小生意気~』

「何だよっ情緒が正常な反応だろうが、笑顔で罵倒すんな」

桜の舞うなかをぐるんぐるん泳いで、

アイレはちょちょいと振り向いて――頬を赤らめた。


「ふーん……でも朋輝――本気なんだ……あ、あり……が……」


何かを言いかける――「??」朋輝はきょとんと。

『や!モキにはまだ早いのっ』「何がだよ」

頭をかく。この不思議な生き物のクセには少し慣れた。

でも気分は悪くない――この夢の様な空間も、こいつも。


「――話が脱線しすぎだ、ともかくそのパーツとやらを

回収して回れば元に戻れる切っ掛けにはなるのか?」

『うん、アゥエスは自己修復機能が強いから、

朋輝の生体エネルギーを電池にして何とかなるよ』

「……まて。いまサラっとヤバい設定を口にしたな」

『あ……これもモキには早かった!』


そこからは同時期に姉ソラが聴いた解説に符合したのだった。

「とにかくアイレ、明日から探索開始だ――」

『モキモキ、よろしゅうおます!』

盛者必衰じょうしゃひっすいは嫌だ――この桜が、いつまでも舞えばいいのに。

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