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それは蒼穹より量産型少女とガラクタ王子とロボットと  作者: 秋天
第五話「大空のソラとリヒト」
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第六章「彼女の住まう――世界へ」

降下の時間で先程のダメージも回復してゆく。

「……治りが早い。助かるなぁ、フィエー君も気合い十分だ」

「いいか、俺があの時のイメージを伝える。ソラはそれをつかんだらふくらますのだ」


超必殺《インペリアル何とか》を効果的に発動させる為、二人の意識を統一すべきと言う。

目を閉じ、王子の心に触れる事をイメージする。

実際、あたしが王子の胸に手を当てる。

アンドロイドとは言え、男の人の胸って言うのはちょっぴりドキっとする。

――……今日いろいろ有りすぎて、な、なんだろ。

発熱してるのは……気疲れしてるせいだ……た、たぶん。


「……!」

見えた。さっそく見えてきた……空中に舞うイメージ。

それに伴い、王子の記憶も断片的に流れてきた。

大気の層、流れる雲間をくぐって大いなる翼をもつ騎士の姿。

「フィエー君、すっごい恰好いいデザインだったんだ……」

完全体の。勇壮、勇壮。豪奢ごうしゃな天威の守り人の御姿みすがた

「わ!――か、可愛すぐる……!」

そして銀の被膜のない、素のアイレちゃんの可愛らしい、甘える笑顔が視えた。

ツインテールの薄桃うすももの髪。垂れ目気味の丸い瞳。

それがドロスィアに浸食され、戦闘になる悪夢。


「そっか、インペリ何とかをくらったまま天威の国の結界を突き破って

 戦闘。そして超必殺同士の激突。一緒に爆散したんだ……」

閃光。数度目の超必殺技で相打ち。

確かに王子の言う通りに派手な爆散と共に堕ちてゆく。死んだと思う訳だ。



「……ソラ、息災か?」

「ん。アイレちゃん……可愛い子だね」

「……見えていたか」

「……可愛かった、是が非でも助けたいね」

「そうだ……助けねば俺は俺でなくなる」

闇夜の間隙。

フィエーニクスは静かにファウ(エネルギー)を解放する。

フィエー君もやる気なのか、気の巡りみたいなモノに高揚感こうようかんを感じる。

再び、銀色に染まった宝石を砕く……いや、浄化するために。

「……ギリギリまで、モモンガ型のままでいよう」

「そうだな。動けないと思わせてギリギリでカウンターせねば」

「上手く取り付いて《フィエーニクス・リフレッシュ》をね!」

「また妙な命名を。怪しい何かの勧誘文句かよ……」

「《ソラちゃん道ですっきり回復》ってね」

やっぱそのお調子者性格は素か、と嘆息するも気合いをいれる王子。

「やるぞ!」「やらいでか!」


シュライクはなおも転進。

狂騒たるILの羽ばたきで、視認しにくい角度でエグい感じで落ちてくる。

「カウントダウンだ。それに合わせてIL特攻を展開するイメージだ」

「うん!任せた」

まるで花火が上がるような甲高い風切り音。

シュライクは今度こそ、という特攻をしてくる。

”お兄ちゃんを模倣する紛い物は潰す”という意思なのだろうね。

でも、お兄ちゃんは本物だよ。今からそう、教えるのさ。


王子の声がこだます……冷静に、機会を伺う意識。

「5、4、3、2……いまだ!」

全身が総毛立つ。シュライクの角度と真逆にエナジーを射出。

加速の頂点であちらへ特攻できるギリギリのタイミング。

「ぬぁああああ!!」

「いっけえええええええええええ!!!」

爆音をがなり立て、フィエーニクスは飛ぶ。

あの記憶の映像とは似ても似つかぬボロボロのフィエー君だけど

今度は確実にこちらが勝つ。そう思わねば負ける。それだけだ!


通常のロボットものならバーニアを吹かす感じだけど

フィエーニクスは斜め下にビームを撃つような感じだ。

急上昇。愚直に降下してくるシュライクは回避なぞ出来まい!

「そらあぁあっぁアイレちゃん!勝負だぁあああ!」


だけど、彼女は予想外に上手うわてだった。

あの子は直線運動はそのままに、放射するエナジーを一瞬停止。

そのベクトル(方向)を180度回頭……くるっとこちらへ向けてきたのだ。

「え?なにそれ!?」

後方に二本だった放出が、反転して鋭利なエナジーの双槍になって牙をむいた。

「ば……馬鹿な!?ヤリだとでも言うのか!?」

「や、ちょっ、卑怯!!」

モノは固定したバーニア(噴射)装置ではなく、”力場りきばの放出”であった

ゆえの芸当だった。それに加え、向こうは自由落下だ。

加速はそのままでエナジーの放出を〈ヤリ〉として収縮、特攻してきたのである!


「きったな!リヒト、回避ぃぃ!」「ぬぅあああ!!この勢いでは!」

距離が。距離がとても近すぎた。

あからさまにソレを狙ったんだろうけど、

避けられないタイミングで奇策を弄するのは上手すぎるし不味すぎる!

「ぐぅッああああああよっけろおおおおお!」「ぬぁあああ!!!」


怒声と共に凄い制動をかける。

モズ本体の下方に二本の槍がある。モズの頭部も突出した鋭利なツノがあるため、

どうしても上方に避けるしかない。……というか迷うほどの時間がない!

だが。というか当然の如く、フィエーニクスの腹をツノがえぐった。

グギャゴゴオオオオ!!

つんざく雷鳴の様な怒号と共に操舵空間はまた引き裂かれるフィエーニクス。

「あああ!!!」「ぐうううぅぅ!!!」


だが、そのまま翻弄ほんろうされて終わるあたし達ではない!

両手でシュライク本体を掴み、とどめる!それ以上の浸食(食い込み)を抑える。

「止めた!!リヒト!あのコのいる場所って大体どこ?」

「あのツノの根元、頭部の、喉仏の下の辺りだ!」

「ツノ邪魔!でも救う!!」「応よ!」意思は固まった。


マンネリだがヒートブレイド。相手は落下加速もあってそうは動けまい。

ブレイドを伸ばし、喉辺りへ両手の刃を叩き込む。

やっぱ硬い。

伊達に王家仕様じゃない。ドロスィアの融合もあってさらに堅いのだろう。

「おおぉぉ!!!」「砕けぇええええ!!」

ゴガッァァァ!

外殻を破壊した処でようやく内部空間?の様なものへ達した感触を得る。

「向こうの操舵空間ってヤツだね」

「あぁ。ソラ、両手に意識を。向こうの操舵空間とこちらを繋げるイメージで」

「……っ!……うん、やってみる。あの子の心を解放したげる!」


ドロスィアの汚染でまともに機能してるか不安だけど、こっちが負けねば勝てる!

脳筋のうきん思考だけど、あの分からず屋にはガチ勝負じゃないとね。

空けた穴へ両の手の先を押し込む。何かの抵抗。

……そもそものこの空間がどんな原理で生成しているのか解らないけど、

兄リヒトが見せた過去映像へお邪魔するイメージで集中した。


「アイレちゃん――――さぁ、迎えに行くよ……!」


もうロボットものだとか意識もなく、あたしはただひたすら彼女を救う願いで

心を繋げる……それだけを。


――――――――――――……さぁ行こう。彼女の住まう――世界へ。



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