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それは蒼穹より量産型少女とガラクタ王子とロボットと  作者: 秋天
第四話「あの夕焼けに、真実は積もりて」
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第四章「集い / 街へ(前編)」

「ソラ姉、慌てて――その顔色……本当に大丈夫なのか?」

はるる野は決して狭い街ではない。でも街中の、こんな交差点で、

信号待ちしてた従姉弟いとこ朋輝ともきにばったり会ったのだ。

「あ……うん、悪いね……」

少し朋輝に寄りかかってしまう。背が大きくなってくれて感謝してしまう。

朋輝という家族の温もりを感じて王子への怒りも少し冷えた……。

(『何を見ている?』)

うるさい、あんたより目の前の従姉弟かぞくが現実だ。

「……っ(あたしの聖域を……侮辱ぶじょくしやがって……)」


しばらく座席のあるコンビニで休む事にした。

「ほい。アイス珈琲」「ありがと、今度おごる」

「そうだ……」朋輝もあの二人とよく遊んでもらっていたのを思い出す。

「ね、ねぇ朋輝。月子つきこ姉と太陽たいよう兄のこと、覚えてるよね?」幼少の朋輝はすごい人見知り。でもあの二人は小さい子への扱いが上手かった。

朋輝も時間をかけて馴染んだ。心をほどく術が巧みだったんだ。

「……あぁ、もちろんだろ」そうだね、忘れるはずがない。

「いつも逢ってるのにさ、それをバカにするヤツが居て、頭に来ちゃった」

「……それは、ムカつくよな」

朋輝はあたしが興奮してるのに気圧けおされてる、ゴメンね。

「あ、はっはは悪い、ソラ姉いつもじゃないね。じゃ、予定あるから」

「ソラ姉?」

興奮したままで、朋輝に何か当たってるみたいになった。らしくない。


そう、今日、土曜日には約束があった。

ヴァンプラ全国高校選手権への情景模型ディオラマ制作にあたって

(習作の制作も兼ねて)買い出しをする、という約束が。


「あーちょっと遅くなっちったごめーん」「おう、部長おせーぞ」

あたし、竜地、恋縫こいぬちゃん、夜鳩よばと、そして才蔵くん他数名(予定の無い部員たち)

駅前広場の集合場所には恋縫ちゃん、竜地、夜鳩がすでに来ていた。

「ソラ先輩!……おはようございま……って、だ、大丈夫ですか?」

「え?あ、うん。大丈夫だよ……おはよーみんな」

「ソラ、何かあったのか?顔色が」「…………」

恋縫ちゃんを筆頭に竜地も心配してくれた。夜鳩も表情で解る、

参ったな。そんなに顔に出てたかぁ。心配させてしまった。

「あー、いやいやなに、家の人間とつまらない衝突さ、いやー面目ねっす」

つとめて家庭内の些事さじと誤魔化して切り抜けた。


「わー恋縫ちゃんの私服かっわい~ぃ☆天使!」

空気を変える為におどけモードに入って抱きしめる。

「はわあわ!……い、いつものソラ先輩です!」

ゴスロリ風でもありフェミニンゆーかガーリーゆうか、とにかく天使だ。

「お母さんがね、今日の日を喜んでくれて一緒に買いに行ったんです」


あの件から反省した母親との関係は好い方向へ向かっているらしい。

そうそう、この子は幸せになって欲しいね。女性はそういう優しさで包まないと。


「お前は堕天使だてんしゆーか色気を勉強せえよ」竜地パパにひっぺがされた。酷い。

蒼穹そら、気分は落ち着いたかな?本題に入ろう」夜鳩の進言。

そんなこんだで才蔵くん達も合流して今日の本題となった。



はるる野市の駅前、繁華街はそれなりに素材集めには苦労しない。

この二十年で見違えるほど店が増えたそうで駅前デパートが近年、

混合して一つのショッピングモールとなったからだ。これは便利、潤沢じゅんたく、品ぞろい。


「ほーい。今日はまず情景土台の素材を集めようねー」あたしの言。

「ほい。色々表現方法はあるが、習作として低予算、簡単なもので練度あげねばね」

夜鳩の言。夜鳩が財布のひもだ。

り度をあげよう!」「練度れんどだ練度」

恋縫ちゃんは皆と一緒に買い物できるのが嬉しいらしく(竜地いるしね)

きゃいきゃい騒いでわたし達も乗せられた。

「情景模型に使うピグメントとか紙粘土とかも買うか」

「百均のをアレンジして使う手も有用だから買ってこようさね」

プラモカラーやら溶剤、筆など予算が許す限り私たちは

模型店イエローアクアマリンなど思いつくまま散策したのだった。



「ク……クレープ、空想上の食べ物じゃなかったんですね……っ」

「恋縫ちゃん……大丈夫、現実よ」

「何か怖ぇ会話だな、あー甘ぇなこれ」

ある程度の買い物も終えたのでクレープを皆で食べながら駅前繁華街を練り歩く。

程よく程よい品ぞろい。さっきの複合デパートのせいで閉店も目立つけどね。


「ふふ、前はあの主人公ズとよく買い物してたっけ」「……そうだったな」

街に残る記憶。店や路地裏、様々な土地に年輪が刻まれている。

最近は二人だけの時間を、ってあたしが気を使って遠慮してるけど。

(む……)さっきの王子の罵倒を思い出してちょっとムカついた。忘れよう。


「おう、ソラちゃん。今日はゾロゾロ買い物かい?」「あぁ、こんにちわ!」

デパートにも負けじの老舗しにせ八百屋のおじちゃんだ。軽く紹介する。

「元気でいいねぇ、あの二人も元気かい?」太陽月子ズはここでも有名だ。

「うん、忙しいの。塾とかもあるし」

「あの二人はどんどん美男美女になってまぁ、ソラちゃんもまた美……」


「ちょっと!」「うぉ、なんでい」

おじさんが急に奥さんにつままれて引っ込む。

「え?」何か怒られてる?なんか悪い事言ったっけ?……なんだろう。

「ソラ!ゲーセン行くかっ青春とくらぁプリ部でウェ~イがやりてえ!」

「竜地、たまには意見が合うなっそういう俗な催しは一度は経験しようさね」

「え?うん、そうだね」才蔵くんまで《即いこうぜ》と親指でゼスチャーされた……んん?


「プリ部ってすんごい種類あるんですねーかわいー」

「おまかわ(お前が可愛いの略)」

ゲームセンターも久々に来たなぁ。プリント機なんか縁ないし。

「ソラもデジタルで盛って色気出せ」

「うっせ!可愛くないの知ってる……でもこれ楽しい」

プリント部は90年代から進化して、デジタルで画像に書き込んだのを出力できる。

「あたしと恋縫ちゃんには相合傘あいあいがさ―竜地の背後には地縛霊じばくれいを描いとこ」

「……オメーには何がみえてんだ」「わー楽しいです!花束えがこっと」

恋縫ちゃんもノリノリ。そんなたわいもない会話で皆で撮影を楽しんだ。

分割シールは部員皆に配られ、何かこー青春の想い出って感じで。


そうさ――そうだよ。王子のいる日常が特殊すぎたんだ

あたしは地上の小市民――今を楽しまなきゃ。

(後編へ続く)

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