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第四節「小話3/駄菓子王子」

24/06/09 更新

「――駄菓子とはどういうものだ?」

昨日の話だ。

獣犬を調伏ちょうぶく?して数日、機械種も出なく少し余裕が出来ていた。

字だけでなく、漫画を理解して読めるよーになってから

あたしやおとぅの少年漫画を借りては読みふけっていた。

そこで興味を持った〈駄菓子〉というワード。

駄菓子をネタにする漫画で〈庶民の菓子〉であると興味がでたとか。

金持ちあるあるなベタなネタぶっこんできたなぁ……。


「何ィ!?菓子に……庶民とか貴族向けがあるとかマジかぇええォ?」

プラモ作業中なんですが……(ツノをシャープに削ってる)

ま、このヒマ王子、無碍にするとゴネるんでお姉さん応えるで。


「庶民”しか”食せないお菓子がありまして……」

「……ま、まぁな。高級菓子は庶民には無理であろう」

「庶民”ならでは”の味とお遊びは高級菓子にはないもので……」

「…………ぬぬ……ぬぬぬ……!」

こうしてジラすと最後には下手に出るんスね。簡単スね。

『く、喰ってやってもいいんだからね?』はい、来ました。

家ではネットも漫画もあるけど、やはりリアルな体験も欲しいのは、

まぁわからなくもない。


そんなこんだで、今日の帰り道。

庶民代表、恋縫ちゃん様にもご同行頂いた。

学校帰りに駄菓子屋なんて久々。はるる野は昭和な建物がよく残る。

「わぁ、懐かしい。りゅーちゃんとよく行きました」

「なついねぇ。小学生以来だーね、駄菓子だがしなんて」

自分がよく使う馴染みのプラモ屋に割かし近い場所にある、

古ぼけた――いかにもな駄菓子屋に来ていた。


「恋縫ちゃんどんな駄菓子好きだった?」

「えーとですねぇ……ハートのチョコ好きでした!」

「あーあの苺味とか混じってる、美味いよねえ」

「りゅーちゃんが半分に……こう、ぱきって割ってくれるんです♪」

「……あー、そうなんだー(ヤバいくらい竜地大好きねこの娘)」

「私は《《鼻血ぷーチョコ》》かな」

「え?何ですそれ」

「麦チョコの事なんだけど、小学生ん時、あの独特な味好きでよく食べてたら

なんかよく鼻血出てさ、それで鼻血ぷーチョコ」

「ははは……」

実は鼻血とチョコは無関係だそう(喰いすぎを戒める為の方便とか)

「あれー、最近チョコ値上がりしてるんだねえ」

原価高騰げんかこうとうでやむを得ないみたいです」

「チョコ好きには泣けるッ!」

駄菓子屋で景気の話は哀しいからヤダやだ。


そこに見知った店員のおばさんの顔を見る。

「あンら、久しぶりに見たわねー大きくなって」

「あ、おばちゃん!お久しぶりです」

「知ってる?おばちゃん呼びもセクハラ扱いなのよ最近」

「えー!ハラスメントなんでぇ?ゴメンなさい」と謝るも、

「んな小さい事気にしないわよ」と気風の好い返し。いいなぁ庶民感しょみんかん

「カカオの値段上がってるからね、量を減らして値段調整してんよ」

「うわー聴きたくなかった」

地味に値上げよね。駄菓子でもわかる食料事情。世知辛せちがらい!


「まー駄菓子DTの王子は量少なくてもわかんないし、

 何好むかわかんないから適当に見繕っちゃお」

「DTってなんです?」

「いやはは、《どーせ食べるだろ》のDTだよ」

純真な恋縫姫には教えたくないですねえ。

「あ、恋縫はバーあんず好きです」「それも好いねー」

ぷっぷく鯛焼きとかラムネ横丁とか適当に選ぶ。

どーせあたしの金だし、あいつが気に入らないなら自分で食べるだけ。


「えと、リヒト様って……あのお身体で飲食いんしょくなさるんですか?」

ふと基本的な質問が湧いた。あたしもそれ気になったのよね。

「あー何か食えるっぽいよ、生体アンドロイドってヤツは有能で」

「生体アンじょろ?……生きてるって事ですか、お身体」

「むっずかしい話ぜんぜん分かんないけど、人工の生体部品と機械の融合ハイブリッドとかで

 だいぶ生身の感覚で動けるらしい」「はえー」

「普段は大気の成分を何だかして力に替えて、後は水さえ飲んでればOKだって」

「はーなるほどぉ……」

多分わかってないと思う、あたしだってそう。

「あ。えと……入ったものは、……その、出ます……よね」

恋縫ちゃんの鋭い指摘してき……(こやつ……鋭い!!)

あたしも気になった。

あれ、どうやって消化してんだろ。

「出ないで終わる永久機関えいきゅうきかんなんて代物?なのかしらん」

「汚ぶ……いえ、廃棄物はいきぶつを実は生産出来てて、夜中にこっそり肥溜めとかに……」

「マジかぁ……王族まじパねえですわあ」

(今、一瞬、汚物おぶつって言いかけたよね?)


『高エナジー体に変換されて、それ以外は無味無臭むみむしゅう

外気として排気されるんだよ!』


「うっわ!」突然の王子の声。そか、髪留め通信機で聞いてたか。

「リヒト様……そうなんですか?」

臣下リンク?で恋縫ちゃんにも伝わる。

『それ以上……知りたい……のか……?』

王子の声が低い。何か悍ましいモノの片鱗へんりんを聴いた悪寒が……。

「えと、ご辞退したいかと~」恋縫ちゃんもにっこり。危機を察した。

「つか王子、有事以外は繋いで来ない約束っしょ!」

『………………』


あ、まさかコイツ……。

「王子ー、バーあんずとか美味しいよ」

『到着を待つ!!』ぷつん!

「言いたい事だけ言って切りやがったよ……」「リヒト様……」

「……帰ろっか」

「は、はい。誰かと買い物なんて久しぶりですっごく楽しかったです」

「あ、う、うん(察し)それは何より。じゃぁ、おばちゃんまたね」

おばちゃんの温和な笑顔に手を振りつつ(胸に染みた)退出。



と、駄菓子屋を出ると、

夕日の駄菓子の背後に――おおよそあり得ない〈非日常〉を目にする。

「…………ねえ、王子。詳しく聴かせて頂けますん?」

『……な、何だ。リハビリがてらに……慣らし出撃だ!』

待ってた。

…………すっげぇ待ってた。

駄菓子屋のすぐ背後にフィエーニクスの姿が。


恋縫ちゃんもあんぐり。もうなんだこのロボもの。

「リ、リヒト様……DTというより『もう食べたい』って感じなんですかね……」

「だ、誰が童貞どうていか!!」

(あーあ、教えちったい……)

フィエー君、断ってもいいんだよ……そいつ私用で働かせたんだ。

皆に遺伝子LVで認識阻害にんしきそがいの暗示がかかってるとは言え、

なんという間抜けな絵面。


そんなボケにツッコミをいれるかの如く、あたしの共感が働いた。

「童貞王子に朗報です。機械種さん空気読んで現れました」

『どどど童貞ちゃうわ……ん?なんだと!?』


はい。ここからはダイジェスト。

敵はペロォ級でした。形はダンゴムシ型。

ダンゴ状態で丸まり突進して、外皮が強固という地味に難敵。

「やっぱ虫だけは駄目えええ」とへたり込む恋縫ちゃん。戦力外になりました。

(そりゃ時々見せる無数の足が巨大でアレで、とんだグロ映像で。

四方八方からの連続体当たりで地味に苦戦。

しかし、こちらが転げたことで喰らいつきにかかった団子虫ダンゴムシ

がば!と丸まりを解除した処で腹にファウ・ラスター、あっけなくKO。


「……駄菓子食う前に、アレ食うの?」崩壊するダンゴムシ型を指す。

「え、えぇい!そういう事言うでない!食うのはフィエー!」

「………………あの……ご融合おわったらお教え願いますか……」

一切目線を合わさず、壁と話す恋縫ちゃん。わかる。壁わかる。


「やべ、駄菓子、マジうっめぇええ」

帰宅したその夜、

紅潮ほくほくしながら駄菓子をバリボリ完食する王子さま。

……うーん、威厳もダンゴムシもないなあ……。

そこに恋縫ちゃんからRINE報告、

”リヒトさまのもっと喰いてぇの意識が届きました!”


……どーでもええわ!



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