第二節「小話1/仔犬とデビューと」
24/06/09 更新
第二節「小話1/仔犬とデビューと」
――その日。
模型部の部室は緊張感(一人)に包まれていた。
「え、えぇえとえと、なんか色々ありゃましたわたしわ決断しました。
今日から御厄介になりまふ白戌恋縫です!よ、よろぴくおねぎゃします!」
恋縫ちゃんの部活デビューの日だった。
「自然体でいきますね!」からの全力噛み噛みトークである。
「あぅぅ~~」
赤面して頭抱えてヘタり込む天使恋縫さん。
見事に部員たちの生暖かい目に包まれていた。
模型部の皆ほくほく顔。そんなのは他所に
「おう、おねぎゃするぞ」と真顔で返した竜地に蹴りをかますと
恋縫ちゃんの肩抱きながら改めてあたしが紹介しなおした。
やっと羞恥テンションが静まってきた恋縫ちゃんはコホンと一息。
「え、えと!新しいことを始めようって模型はそんにゃ
詳しないのですけお……は、はい、皆さん色々ご指導ご鞭ちゃつ……あぅあぅ」
パチパチパチパチ。
みんな突っ込まずに拍手で歓迎。空気読めるってスバラしい。
(一人を除く)
「白戌さん、は仰々しいのでみんな恋縫ちゃんって呼んであげてね」
あたしの提案に、みんなの歓迎ムードも温まった。
「恋縫くん、小生は夜鳩と言う、部長代理の者だ。宜しく」
「あ、はい!よろしくお願いします」
夜鳩は長身で、恋縫ちゃんは160cmもなくとてもミニマム可愛い。
夜鳩はかがんで問う。なんか補導に来た婦警さんみたい。
「ヴァンダムは観たことあるのかな?」
「えぇ、と……あ、りゅーちゃんの家に行った時ちょっとだけあります!」
とキラキラ目線を竜地に向けてしまう恋縫ちゃん。
「あ」いきなりアカン。
「りゅー……ちゃん??」部員全員の注目が集まる。
目線はりゅーちゃんこと、モグ男大先生にである。
アゴが外れん位に狼狽する竜地。
「「えぇぇぇぇぇえぇぇ!?」」一斉にどよめく部室内。
「こ、恋縫ぅ!ちょ待てぃ!」
「「呼び捨てぇえぇ!?」」
さらに輪唱、大絶唱。
膝を抱えてた竜地はさらに不意打ちで転げた(ザマない)
「いや、なんだ、落ち着け。こいつとはただの古い仲で!」
「古い仲……それって」
あーそれ藪蛇だわー。
「いや、幼馴染だ!幼馴染み!そゆ関係で!ウチの裏手で!遊ぶ関係でだな!」
「裏からって?夜這いな関係!?」
誤解ワードで自爆する竜地先生。阿呆でした。
本日のデビュー戦は終始ニヤニヤで終了。早く馴染めるといいね。
あと、
「恋縫、人前でりゅーちゃん呼び禁止!」
「えぇえぇ」
「ぼそ(プライベートではOKなんじゃないの恋縫ちゃん)」
「(あ……そうかも♪)」
と会話があったとか何とやら。
二年の部員からも「りゅーちゃんまた明日~」と輪唱でお別れ。
「ぐ。お、俺がオチ担当なのか……!」
ぐぬぬ顔の竜地でオチりましたとさ。