第一章「・・想い出の公園/昼下がり・・」
21/06/09 更新
(……風に温度を感じる。公園に来るのも久しぶりなせいかな)
いつもの公園の入り口に差し掛かる――。
ふと、風の匂いに湿り気を感じた――。
あたしは髪質がちょい太い。
くせっ毛なので梅雨はちょいと苦手かなぁ。
「……そろそろ梅雨かな。プラモ塗料が乾きにくくて」
苦手なのはプラモ脳な悩みでもあった。
(なんかさ……公園に来るのも久しぶり……なぜ、だろう)
公園は次の季節を迎えようとしていた。
「……本当に久しぶりだね。ソラ、いい事あったみたいだね」
あたしはまた公園の中央に歩み出でる。
いつもの、ブランコに座る幼馴染が二人。
「ほんとに……久しぶり……あれ?」
王子と出逢ってから、忙しかった――けれど。
何だか思い出さねば浮上しない、そんなふわふわ感が。
二人はやはりいつも通り――だったのだけど。
「その、噂の金髪の……留学生くんだっけ?」
「姉妹都市の方って聴いたわね」
そういう設定にしといた。確かに外人《天威の人》だし。
「あ~アイツね、お坊ちゃんでね。
慣れてきたらなーんか調子くさってさー。なんつか、やれ欲しいだ、
やれ喰いたいだ、面倒くてさー、ほんと世話が焼けるんよ」
「ははっ。すげーじゃん。楽しんでて結構だ」
「ねぇ?そんな言葉が多いのは楽しい証拠よ」
「楽しい……そっかなー。楽しいのかなー?」
――追伸。
獣犬が恋縫ちゃんで、仔犬ちゃんが恋縫ちゃんで。
あれから約ひと月ほど経っていた。気付けば五月も終わりに。
「ソラ……部長さんらしくなって来た?」
「かな?……ズルズルと正式採用な……」
「まぁ部の<主役>に向いてるってことさ」
「えー、太陽兄さんが主役って言葉使うのー」
部員も揃い、部長もそれなりに。
恋縫ちゃんとはすっかり親友みたいに。
竜地と恋縫ちゃんは普通に幼馴染でよろしくやってます。
夜鳩は相変わらず副部長で。
そろそろヴァンプラ全国大会へ準備始めないとって時期。
機械種との戦闘もそれなりに。
獣犬の様な大物?とは相対していなかった。
こんなのが<あたしの日常〉となってしまっている日々だ。
ここを訪れるのも一か月近くな気もする。
どうして……だったのだろうか。
「……ね、その間、どんな事があったのか聴かせてくれる?」
「あーそんな面白い話はとくに……」
「ソラが話してくれれば何でもデザートさ」
「そう?そうかな……そうだね」
この二人の笑顔には敵わない。
渋る理由もないか。根負けだ。観念しよう。
はてさて、
ここからはこの一か月の小話たちを幾つか語ろう。
――あたしの〈普通〉からほころびた〈日常〉の小話たち。
――想い返せば、■■■■■――日々の飛沫。




