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第十一節「ソラとハマりゆく方程式と」

24/06/02 修正

「――それはソラ、キミがその公式の中に入っているからさ」

その放課後――夜鳩にばっさり裁かれた。


夜鳩と三階の窓から旧校舎を見下ろしていた。

目線の先には竜地が一人で恋縫ちゃんを待っている様子がみえる。

んでもって、竜地と恋縫ちゃんの関係に自分も入ってると断罪された。


「……え?え?なんでぇ?……そんな筈ないんだけど……」

「ではな……視点を変えよう」

眼鏡を正すしぐさ。

「竜地氏の好きな相手がソラだったと仮定する」

「ごぇ!?」

「恋縫くんの視点に成りたまえ。それをどう捉える?」

「……あの、飛躍しすぎだよー夜鳩……」

「賢きものはね。視点を変えて想像すべしもの、

 多方面の客観視点こそ、解決の最短距離なり」

「夜鳩~ムズいでよ~。もっとお子様にも判る様に言って?」

夜鳩はいつも阿保話にはノってくれるが、今日は真剣だった。


「要は”相手の視点で自分の行動を見ろ”ってことさね。それが寛容。

 はい、今から君は恋縫くん。中学生の時点から心境を想像してみよ」

どうぞ、と差し出す夜鳩さん。

え、えぇ??……あたしが恋縫ちゃんになる?視点、目線か。


「わんわん。あたし恋縫だワン、オデコぷりちー女子だにゃん」

「そう言うのはいいから」スベった。

「……はい、私、恋縫めは中学の頃、幼馴染の竜地くんだけが

頼りだったのに疎遠になりました……」

「そう」

「理由が解りません。口をきいてくれなくなった」

そこからは頷きだけで還す夜鳩。

「そのまま会話せず高校受験を迎えました」

「街なかの高校へ竜地君が進学するのを知って自分もって思った」

「母親には猛反発される。でも竜地君と離れるのは嫌」

「失踪事件で母親と半ば和解し、やっと同じ高校へ行けました」

「竜地が模型部に入ってると聴いて高校デビューで新しい自分を模索」

「部長さんに声をかけ、いざ竜地に近づけるとなって……み……たら」


あたしは「あ!」と気付く、

「汪鳥蒼穹って知らない女子がいた。竜地とよくコントしてた」

「もしかして、竜地はその汪鳥って女子が好きになったので

自分と距離を置いた。もしくは元から自分には興味がなくて……、

とか色々思いこんじゃった……とか?」

「そう」

「わたくし恋縫、デビュー、早々に詰んだわ……って思う」

「そんな処であろう」

「え!いやいやあくまでも竜地の想い人があたしだった場合っしょ!?

 さすがにそれは酷い勘違いだし、話せばわかるって」


「事実、小生の目からも君たちは恋仲みたいにしかみえないぞ」


「……………………はぇ……?」

「夫婦漫才だと言った事あったろう?

仲良く喧嘩してるわ、二人して家を訪ねてきたり、中庭で昼食したり

竜地氏の遠回しなソラへのアプローチとか、解り易すぎなものだし。

そこに恋縫くんの胸中で……どう映るかね?」


そういや彼女の前で竜地の裾つかんでくいくいとかやってた。

あいつ容赦なくツッコミくれるから、あたしも竜地の恋愛対象外とか

ずっと思ってたし、向こうもそうだと思って――

「そういや!竜地も”無自覚な奴”って……まさか」

青ざめた……。

「あたし、仲良しカップルとかに見えてた!?」

「だろう?……客観支点を事実だと捉えかねない」

「わーお……」

ありえねー……って思うけど、公式に当てはまってました。はい。

「気にかけるつもりが……お、追い込んでる……」

「そうなるね」

夜鳩さんすっげクール。

竜地はなんつか中学からの腐れ縁だ。姉弟みたいなイメージしかない。

「…………ご、誤解を」フラフラ立ち上がる。

「誤解をとかないと、彼女がまた失踪しちゃう!」

「来るなと言われたのだろう」

「で、でもさ……様子見、様子見くらいしないとさ」


ではな、と腕を掴む夜鳩。

振り向くと、母親の様な眼差しで嗜めてきた。

「……気を引き締めなさい。他人の心はキミの想像で把握できるほど

容易くはない。見えない心を何処まで想像できるかが鍵、

石橋を叩きなさい」

手厳しい夜鳩の喝。あたしは頷き、走りだした。

(……あたしが、追い詰めていた……)

無自覚な奴――竜地の言葉が響いていた。


放課後の人々の群れはまばらだ。

桜はほぼ散り、葉桜の群れ。僅かに残った散りゆく花びらが――

何かのカウントダウンに思えてならなかった。


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