第十節「ソラとモグ男がさけぶ日と」
24/06/02 修正
――日は巡ってゆく。
アメンボ時の奇跡は無いが、戦闘はいくつかあった。
(ハツカネズミ型とかハンミョウ型とか微妙なのばっか!)
〈ファウ・ラスター〉は割かし普通に出せる様になった。
あたしの我儘でプラモ用デザインナイフ型になったけどね!
今日は食虫植物という珍しい相手。触手攻撃がめんどかった。
さて、
ふと気になっていた僅かな疑問を問うてみた。
「ダニの時に気になった。機械種ってさ。
〈戦闘形態〉だとモワっとデカくなるけど。その前の潜伏モード?
何とかの大地の影響が薄いから隠れてるそうだけど、どの程度の
制限かかってるの。線引きゆーか」
しばし待て、と王子がフィエー君と交信。
「……ふむ、これまた10年前の機械種データがあったな。
どうやら兄王たちが吸収融合され〈誓約の鍵〉が幾つか外れている為、
影響力に抜けがでている。
子機と呼べるある程度の小さな個体や触手などは誓約外らしい。
奴らの行動の自由が拡大し、捕食活動も活性化し始めた、か」
「うっわ。ヤバいじゃん……あたしマジで喰われる処だったのか」
「すまない。そこまで制限が解除されているとはな……」
地上に堕ちると思わなんだゆえ勉強不足だった、と付け足した。
「ん。その戦闘形態になる瞬間って、上空にはじかれるの?」
ちょっとネタで聞いてみた。
「……らしいな。〈戦闘形態〉で本体が空へ開放される」
「獣犬、普段どんな犬種のわんこに擬態してるのかねぇ」
狛犬っぽいわんこ……チャウチャウとかモフモフな奴?
■
――あれから。
昼休みの〈突撃となりの恋縫ちゃん〉はさすがに終わりが見えた。
中庭の陰から恋縫ちゃんの教室を見張るって、やっぱ……。
「しくった。警戒されちまったな、完全に。
もう授業後に凸するしかないのか……」「しかないか……」
もはやストーカー状態だ。これは通報待ったなしかも。
生徒会長にも目を付けられちゃったし。
「……ね。竜地、好きな人……とかいる?」
「あん!?な、な、何故その流れに……?」
――あたしもさすがに察しはついていた。
恋愛脳はノン、と言ってはみたけど。こればかりは察した。
「やっぱさ、あの子はね。未だに竜地に気があるのよ……。
幼馴染としてじゃなく……まさに〈恋愛〉の方で!
だから、竜地とあたしが恋仲だと勘違いして避けている!」
「……………………」
竜地が何だか、残念そーな怒り顔のよーな微妙な表情。
そうかと思えば、ふーっと嘆息し、頭をかいた。
「……いや、そうだな、可能性はあるとは思ってはいた。
あいつは俺を兄ちゃん扱いしてたけど、それ以上の感情は
あるんじゃねーか?ってな……。
それが高校になって昔馴染みの俺が<別の女>と絡んでるし、
そこが気に食わなねぇ……あり得る」
あの……<別の女>を強調したの何で?
「とにかくさ、関係を修復したかったのにあたしを恋敵だと
思い込んで、出るに出られず――が今の状況じゃないかと」
「そうだろうな。模型部に入れば俺との距離も縮まる。
だのに、自身に無自覚な奴が有頂天にはしゃいでればムカつきもする」
「そんな感じ!……ん??なんか今、凄くトゲがある言葉が……」
ちゅ~っとパック珈琲を飲み切る竜地。
……なんだろう、さらに空気が重く……。
「あぁ!竜地も、本命の女の子いるのに勘違いされちゃって困っ……」
「そこだよ無自覚なヤツ」
ぱこす!紙パックを投げつけられた。
「あた!なんでよ!?あたしって何!?」
「……白戌のやつがイラつく理由もわかる」
なんでぇと涙目のあたしを他所に、教室に向かって大きく声をあげた。
「白戌!白戌恋縫!……どこかで聴いてんだろうぅ?
放課後、模型部の教室前まで来てくれ!
……お前と話をしなきゃ終われない!俺はなぁ!お前とだけ!
お前とだけで話がしたいんだ!」
「ちょ……、モグ男。声でかいよ!」
「いいな!旧校舎だ……他の奴は抜きだ!お前とだけで話をしたい」
注目を一気に浴びて気まずい。
中庭をはじめ、廊下を歩く生徒たちにも一斉に注目を集めていた。
「……だからソラ、放課後は二人だけにしてくれ……!」
そう言い放つと、竜地はのっしのっし教室へ帰っていく。
途方に暮れるあたし。
中庭から教室やら生徒たちのくすくす笑い。夜鳩もいて、無言だった。
……えと?恋縫ちゃんは竜地を好き、竜地は何処かの女子が好き……
……んと?ここにあたしが入る余地はない、ハズ……なんだけど。
この公式に何が欠けてる?あたしは何に気づかない?
夜鳩の、やれやれという表情が、あたしの落ち度だと気付かぬまま――




