第二節「ソラと朝と父親と」
24/05/27 修正
第二節「ソラと朝と父親と」
制服に着替え、階段を下りるとまた父と遭遇した。
「おはよー。なんか夜更けに、すっげぇ騒がしかったな」
「……そう?」……声聴こえちゃってたかな?
「若い盛りだ無理ないか。健康健康。回数は増えるよな、うん」
「独りエッチじゃねーし!」
朝から下ネタはやめて下さいお父様……。
「……あぁ、ソラ」「なに?」
「…………始まったのなら、走り抜けよ青春」
「…………ほい?」
昨日といい、奇妙な文言が多い父だった。
そんなんで朝食時も結菜さんと朋輝にまで
「お盛んだな(よね)」と天丼なフリくらったのは言うまでも。はい。
「ソラ先輩、おはよーございますっ」
「おー!朝から天使!恋縫ちゃんおはようだよ!!」
あたしは抱きしめそうになるのを必死にこらえて駆け寄った。
「……あれ?オデコはニキビ?」
「そうなんです……恥ずかし」
テレテレのわんこ後輩。おでこにミニ絆創膏。可愛さ倍増であった。
わたわたと、おでこ抑える、いとをかし。朝から目の保養であります。
「ストレスニキビかな?」「そうかもです……」「新入生、緊張だ」
あたしもロボ戦ってストレスあるし、ニキビ出来てもおかしくない。
バスの車中。つり革に揺られながら二人。
「そんでさ、そのわんこの段ボールさ、張り紙の文字がねー」
今朝の夢の内容を振ってみた。
「……よくある、誰か拾ってくださーい、とかじゃなかったのです?」
仕草が仔犬が段ボールから顔だす『くぅ~ん』って感じに見えた。
「うん、本当。不思議な夢だったよ。何て書いてあったと思う?
それが、『わたしを捨てないで』って……わんこ目線なの。
斬新だよね。あははは」
「………………」
目を白黒させる恋縫ちゃん。
無理もない、あたしだって意味不明だ。
恋縫ちゃんはつり革を手に、思案に浸って一言。
「……その仔犬のメッセージ、だったのかもですよ?……なんて♪」
「おぉ?おぉー」
言われて昨日の獣犬のことを想いだす。
なるほど、……なるほどなのか?
敵の立場で考えてみよ、って夢の啓示なのかしら。
融合吸収するんじゃなく、見捨てず和解せよ?(なんだそれ)
ま、たかが夢。深い意味はないのかもしれない。
つり革はからからと揺れる。恋縫ちゃんの横顔を朝陽が撫でる。
眩しくて、その表情はよくみえなかった。