序 その熱は何処から来るの
五月の晴れた青空に、高らかな音が鳴り響いた。
前半終了のホイッスルだ。現在は練習試合の真っ最中。ベンチが慌ただしくなるインターバルの合図である。
それにもかかわらず、ベンチ傍に控えるマネージャーの少女は放心していた。
「……真平さん?」
「……え? あ、うん!」
名前を呼ばれ、知結は我に返る。
マネージャーの仕事をしなければ。
グラウンドからベンチに戻ってきた汗だくの選手達に、慌ててタオルやスポーツドリンクを渡していく。疲労はかなりのもの。休息は必要不可欠だ。
そして後半の作戦会議が始まる。
得点は三対二。相手チームが優勢のまま折り返してしまった。
前半での反省点。相手の対策。交代する選手。
誰もが真剣に話し合う。髪からユニフォームまで汗で濡れ、肩で息をしていて、それでも眼差しの強さに消耗は見られない。普段はふざけてばかりの先輩さえも格好よく見える。
練習試合だからといって甘く考えていない。本気で勝ちにこだわっている。全力を尽くすスポーツマンとしての姿だ。
――でも、どうして?
手を動かしながらも、知結の頭の中では疑問が渦巻く。
今までこの部のマネージャーとして、それなりに知識は学んだ。サポートに不足がないように努力はしていた。
しかし分からない。
あんなに汗だくになって、真剣に戦略を重ねて。
どうして、彼らはここまで本気になれるのか。
本気で全国大会を目指している部なのだから、練習試合でも手を抜かないのは分かる。野球やサッカーに、高校生活三年間を捧げるというのはよく聞く話だ。
だがしかし。
知結はこの競技にそれだけの価値を見出だせなかったのだ。
決して馬鹿にしている訳ではないが、それでも、彼らの気持ちに共感出来ない。
だからといって頭から否定してはいけなかった、と己を戒める。
真剣な姿により、心が動いている。だから、知りたいと思ったのだ。
知結は探るような好奇心と、謝意や敬意が混ざった眼差しで選手達を見つめる。
その、彼らがこれだけの熱意を向ける対象は、
――どうして、ケイドロなの?