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第11話 潔白とは汚れたものに近づいても染まらないこと
明の洪自誠が著した『菜根譚』にはさまざまな庶民の知恵が書かれていて、「庶民の哲学」ともいわれています。
洪自誠は儒教、道教、仏教を極めた人で、『菜根譚』の内容もそれら三教のいいところ取りといった形です。
とくに中道を重視し、ものごとにはバランスが必要ということが繰り返し説かれています。
権力や利益に近づかない人のことを清廉潔白といいますが、洪自誠は、
「むしろ権力や利益に近づいてなお、それらに染まらない者こそがもっとも潔白」
といいます。
環境の問題ではなく、心の持ちよう次第だということです。
また高尚な人についても、
「世のなかの権謀術数を知らない人は高尚だが、それらを知ったうえで使わない人はさらに高尚だ」
といいます。
善いことをするのも、悪事を成すのも、すべては自分の心次第。
なにかあればまわりや人のせいにしたり、環境のせいにしてしまう人間の本質を見抜いた言葉といえるでしょう。