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恋愛トリップ  作者: 智秋
6/8

第6話

 人は太陽をつかめられない。

 なぜならばとても暑いからだ。実際につかもうとすると、人間なんて唐揚げみたくこんがり焼けてしまうだろう。


「じゃあ早苗は? 早苗に触れただけであたしは、唐揚げになるのだろうか」


 早苗の笑顔は太陽で、それに触れようとすると心が焼けていく。

 そういう考えを凛子は、国語の教科書を見ながらしていた。

 授業が頭に入ってこなくて、早苗ばかり考えてしまう。

 こんなのが二週間も続いている。


「揚げ物になったあたしは美味しいのかな……いやいやそうじゃなくて、早苗を考えないと」


 今は四時限目。食べ物を恋しく思う時間帯。授業後はお昼休みだ。

 でも今は、食べ物よりも早苗が恋しい。


「早苗が好き。それだけしか思い浮かばない」


 横目でちらりと、早苗を見る。

 隣の席で黒板とにらめっこしている早苗は、とても真剣な顔つきをしていた。

 あんな風に見つめられたら、それは幸せなことだ。


「まじめな早苗もかわいい」


 胸がドキドキして、もう授業に手をつけられない。

 早苗を想っていると、規則正しいチャイムが鳴った。

 授業が終わって一番に、早苗が凛子に声をかける。


「凛ちゃん。お昼ご飯になったから、わたし学食に行ってくるね」

「わかった。いってらっしゃい」

「うん。あとこれ、凛ちゃんにあげるね」


 早苗が懐からチョコレートを取りだして、チョコを凛子に渡した。

 受け取るなり凛子は、好きで胸が暖かくなった。

 まるでお風呂でのぼせたかのようだ。頭がぼーっとする。


「あ、ありがと」


 そう凛子は伝えるだけで精一杯。それ以外の言葉は、あやふやな思考では言えなかった。


「いえいえどーも!」


 早苗は微笑んだ。そして教室から出て行った。

 凛子はそれを見送った。

 そこに痛烈な距離を感じる。

 いつもなら一緒にお昼ご飯なのに、今じゃ一人ぽつんとチョコレートを食べている。

 むなしい。けれどチョコは美味しい。

 できることなら、この甘さを早苗と一緒に味わいたかった。


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