殿下と私の学園生活
入学日の翌日から学園生活が始まった。
学園では制服があり、舞踏会等の行事以外は全員生徒は制服を着用する。
令嬢は白を主体にした、ロングのワンピース
令息は黒を基調にした、詰襟の簡易な騎士服
休みの日は外出許可を学園に提出すれは、学園から出て家にも帰れる。
クラスはアルベルト殿下とハインツ様と同じクラスで、ハインツ様以外の側近候補の方々とは別だった。
その日は、学園の説明や場所の案内で午前で終わった。
お昼はアルベルト殿下とご一緒して、午後に学園を散策しますと言うと、アルベルト殿下が言った。
「王宮の庭園のいつもの場所の様な所を探すのだろう、俺も付き合おう」
「殿下、無理に私に付き合う事はないのですよ」
「いや、俺もあの場所は好きだからな、学園にもロゼと二人で息抜きの場所は欲しい」
そうですね、殿下あそこに居るときは、普段と全然違いますものね、まあ、皇太子として重責ですし、息抜きも必要ですものね。
「では、一緒に探しましょうアルベルト殿下」
そして、アルベルト殿下と庭園を散策する事にした。
まずは、地図で目星をつけた、あまり人が行きそうにないエリアの庭園へと向かった。
ここは、寮と教室から離れた場所で職員室の近くだ。
庭園の散策路をゆっくり歩き、隠れた道がないか探す。
「良い庭園ですね、殿下、でも、なかなか思う場所がないですね」
「そうだな、だが、地図で見ると、この場所で見つけれれば、理想的なのだが・・・あ、あそこ道がないか?」
よく見ると散策路の一番奥の所で細い飛び石の道が有るようだ。
少し草が生い茂っていて道が有るのが判りにくい。
「殿下、私が確認してきます、殿下はここでお待ち下さい」
「それなら俺が行く、学園の敷地内で危険は無い、それに、危ないからとロゼを行かせるわけないだろう、俺の後ろについてこい」
そう言いながら殿下が、先を歩かれて私の手を引いて行かれる。
その小道を歩いて少ししたら、茂みを抜けて拓けた場所に出た、そこには東屋があり、湖があった。
「綺麗」
湖がキラキラ光って湖の周りは木々があり、湖の周りも歩ける様になっている。
「ここなら、誰も来なさそうだな、東屋を確認しよう、王宮と違って、ここにメイドが来てる感じはしないからな」
そう言ってアルベルト殿下が、私の手を引く。
東屋は、王宮と同じで綺麗なクッションが置かれている。
真っ白で王宮のと同じに見える。
「アルベルト殿下、既に誰かここを使っているのでしょうか?」
「いや、あの道の状態だと恐らく使ってないと思うが、だが、毎日手入れされてるな、また明日来てみよう、それに、まだ夕方までは時間があるから、ここで休憩しよう」
そして二人で並んでベンチに座る。
「こうして、湖を見るのもいいものだな、こうも拓けては落ち着かないかと思ったが、そうでもない」
「そうですね、天気も宜しいですし、ここが誰も来なようでしたら、ここを休憩所に致しましょう」
そうして夕方まで、話をしたり、湖のほとりを歩いたりして過ごした。
*****
次の日からは通常授業が始まった。
まあ、殆どは王妃教育で学んだことだけど、王宮では試験がなかったから、ここで復習して、試験の順位が恥ずかしくない順位にならないと、殿下と王宮の先生の顔に泥を塗ることになるので、下位の順位になってはいけない、なのでちゃんと授業を聞いて復習するのが、私の授業スタイルになった。
学園生活は比較的平穏に過ごした。
それでも一期は忙しくて、お兄様との時間が取れなかった。
ああ、あの湖の休憩所は、私達以外は誰も来ない場所だった。
なので、時間がある時には行っている。
不思議な事に、私がそこに行くと殿下もやって来る、王宮と同じで、私が起きるといつもいらっしゃるのだ。
そして夏休暇に入る前七月に一次試験があった。
試験が終わり暫くして、結果発表がされた。
順位は、次の通りだった。
総合順位 総数百五十人
一位 アルベルト殿下
二位 ハインツ
三位 私
四位 マーリー
五位 リガルト
うんうん良い感じの順位ではないかしら、ほっと一安心、この調子で三年間頑張ろうと思っていたら、突き刺さる視線を感じる。
ちらりと、感じる方を見るとシャーロット様だった。
悔しそうに私を睨んでいる。
うーん、私を睨むより勉強頑張れば良いのに、そうしたらアルベルト殿下に見初められる可能性あるのにと、小さくため息を吐いた。
溜め息をついた私を心配して、友達のユリティーナが心配そうに私に声を掛ける、私は大丈夫よと答えて微笑んだ。
他の友達は、私の順位に凄いですね、流石と私を誉めてくれる。
で、肝心のシャーロット様の順位はうん、そっとしておこう。
すると、周りがザワザワしだした。
アルベルト殿下達がいらしたのだ。
私の方へ来られるのがわかったので、殿下の方を向いて一礼をする。
「アルベルト殿下ごきげんよう、総合一位おめでとうございます」
「ロゼ、ごきげんよう、ああ、ありがとう、しかし油断したらすぐにハインツに抜かれそうだから、頑張らないとね、ロゼも頑張ったね」
「はい、これからも精進致します」
「では、また」
そう言ってアルベルト殿下達は、どこかへ行ってしまった。
*****
私はいつもの休憩所へ足を運び、何時もの通りに過ごした。
殿下も来られて、一期お疲れ様と互いを讃えた。
殿下は私が三位になるとは思って無かったようで、驚いていた。
そして、ハインツ様とは僅差なので、次はどうなるかわからんと少し疲れた様に仰っていた。
「明日の朝、自宅へ帰るのだろう、送っていく、あと、クルーズベルト公爵にご挨拶したいしな」
うん?殿下のが偉いですよね?私のお父様は、どちらかと言えば臣下では?と思うが・・・。
私が疑問符を浮かべているのを見て、殿下が再度私に言った。
「夏休暇の時も夏の舞踏会があるだろ、そのお願いだな」
「えっ?今迄もお父様に、話して頂いていたのですか?」
「ああ」
なんとなく決まり悪そうにされる殿下。
しかし、お飾りの私の為に、その様な事をして頂いてたなんて知らなかった。
「殿下、有り難うございます、私の為にそこまでして頂いてたなんて」
ちょっと感動しましたよ!
「私!頑張りますね!」
改めて殿下の本命が見つかったら、誠心誠意手伝うことを誓った。
*****
夏休暇の一ヶ月間は、王城へ行く事が多かった、王妃様とのお茶会、アルベルト殿下とのダンスレッスンや魔法の勉強など、たまに、護身術の訓練。
王城へあがると決まって退出前に、庭園のいつもの東屋へ赴く、すると殿下もいらっしゃる、そして二人で話す、前と変わらずに。
そんなもうすぐ夏休暇も終わるある日、いつもの様に庭園の東屋でうとうとしていた。
この国の夏は、そんなに暑くはない、心地よい風が吹き日差しも柔らかい、心地いクッションに微睡んでいると、髪の毛をすかれている感覚がする。
その手が優しく頭を撫でる、そして、頬を辿り離れたと思ったらふにょっと暖かい何かが頬にふれた。
今の何?と驚いて眼をパチリと開けた。
目の前には、優しく微笑むアルベルト殿下。
その微笑みにまさかと思い、恥ずかして頬が熱くなる。
お願い気付かないで下さいっと思っていてら、ふっと更に微笑まれて、私の頬に手を添えて撫でられる。
「ロゼ、顔が赤い、どうした?」
何か言わなければと思うのだけど、言葉が出ない。
わたし今迄、どんな風に殿下に対応してた?いや違う、殿下の私への対応が違う、今までこんな時は頬っぺたをつねられたり、鼻を摘ままれたりしてた。
今は、まるで・・・いや、勘違いしてはいけない自分と言い聞かせて何もなかった様に起き上がる。
私が起き上がると、殿下の手が離れていった。
「ごきげんよう、アル様」
漸く挨拶をした私。
「ごきげんよう、ロゼ」
そう言いながらアルベルト殿下が、私の隣に座られた。
なんか近い気がする。
少し殿下から離れるように移動して話をした。
「はい、あの、そう言えば一期は、忙しくて出来なかったのですが」
そこまで言って殿下の方を向いたら、私が移動した分、殿下も移動していた。
えっ?な、なんで?いやここはスルーして話をしよう。
「なんだ?」
「シールお兄様とエヴァお姉様と殿下と私で、お茶会をしたいのですが、宜しいでしょうか?」
「それは構わないが、二期が始まってからか?」
そう言いながら殿下は、体を私の方へ体を向けベンチの背に片肘をついて私を見つめ話される、私は目が恐らく泳いでいるだろう、そっと失礼にならないように眼を反らす。
「ええ、はい、夏休暇も終わりますので、日程が決まればご連絡致します」
「ロゼ、もうすぐ二期が始まるな、一学年目は主に勉学が中心だ、魔法は二学年目から本格的になる、だが、俺達は二期の時の隔週の休みの時に王城で、魔法の実戦訓練をする、俺と一緒に頑張ってくれるか?」
そう言って殿下の手が私の頬を優しくて撫でる。
そして私の顔を除き込んだその目は、真剣な眼差しで私はかぁと顔が熱くなる。
思わず俯いて眼をぎゅと瞑り返事をする声が震える。
「は、は、はい頑張らせて頂きます」
そして影が掛かったと思ったら、頬に柔らかい物が触れてチュと音がした。
えっと驚き顔を上げ眼を開けると、目の前に私を優しげに見る殿下の顔。
えっあっ?!とパニックになった私は頭に血が上りふっと意識を失った。
慌てた殿下の声がした。
「ロゼ!!おい!ロゼ!・・・」
*****
眼を覚ますとそこは私の部屋だった。
メイドのマリに聞くと、私はアルベルト殿下に部屋まで運ばれたそうだ。
そして、お母様が医師を呼んで私の容態を確認して、疲労でしょうと診断を聞いて、私が眼を覚ますまで居ると殿下が言われたが、夜も更けて来て、帰って来たお父様に言われて渋々帰られたとの事だった。
眼を覚ました私の元へ直ぐに、お父様お母様お兄様が来られて、心配したと言われた。
私は起き上がり、家族に謝った。
皆が大丈夫なら良いんだと、笑ってくれた、そして皆で夕食をいただき、そこでお父様から残りの休みは家で療養するように言われた。
もうお父様から殿下へご連絡したから大丈夫だと言われ、私はわかりましたと了承した。
それから学園が始めるまで、私は自宅で過ごした。
考えるのはアルベルト殿下の事。
殿下のあれは、私をからかっての事なのか、でも、あの目はからかってる目には見えなかった。
でも来年もしも、この世界がゲームなどの世界なら、編入してくる元は庶民の女の子を殿下が好きになり、私が何もしてなくても悪役になるかもしれない、だから私は殿下に好きになった人が出来たら、婚約者の立場を辞退すると、事あるごとに言っていた。
それでも、私はどこか不安に思っている。
そこに来てあの殿下の私への対応は、やはり私を悪役にしようとする、この世界の強制力なのだろうか?
私が殿下を好きになれば、他の女性が殿下に触れたりしたら嫉妬に狂い、その人に意地悪をするかもしれない。
私の意思関係なく、もしそうなれば・・・。
それはまさしくあるあるの悪役令嬢への道、よくて国外追放、悪くすれば関係ない家族を巻き込み御家取り潰し、そんな事になったら家族に申し訳ない。
私がしっかりしないと!再度私は気合いを入れ直した。