殿下と私 入学のお茶会と舞踏会
東屋で、改めて殿下の側近の方々の紹介をされた。
「ハインツは、知ってるな」
「はい、お久しぶりです、ハインツ様」
「ロゼアンヌ嬢、あの時はありがとうございます、貴方のお蔭で、僕のやれることを見いだして、頑張れるようになりました」
「いえ、私は何も、ハインツ様が頑張られた結果ですよ」
「ロゼ、次にこっちが、騎士団長の息子のリガルトだ」
あっ、あの闘技場の訓練の事で、私に文句を言った人だ。
「リガルト・ブレードグルフと申します、以前お会いした時は失礼しました」
「なんだ?二人は一度会っているのか?」
「ええ、私が護身術で闘技場で訓練してた時に、声を掛けて頂いた方が、リガルド様です」
「そうか、あの渡り廊下でのことか」
「リガルド様、私は気にしておりませんので忘れてください、これからは宜しくお願い致します」
私が護身術の訓練を闘技場でしていて、遊びで来るなといちゃもんつけられたのが、このリガルド様だったようだ。
「ロゼその隣は魔導師長の息子の、マーリーだ」
「初めましてマーリー様、ロゼアンヌ・クルーズベルトと申します宜しくお願い致しますね」
「・・・・」
「おい、マーリー」
アルベルト殿下が、マーリー様の方に手を置き揺さぶる。
「また寝てるな、ロゼ、こいつは大概寝ている、まあ、気にするな」
「そうなのですね」
「そしてこいつは、情報局局長の息子のシーラスだ、ロゼこいつには絶対に近寄ってはいけない、一m以内に入れるな」
「アルベルト殿下、酷いですよ、人を害獣の様に言わないで下さいよ、ロゼアンヌ嬢が本気にしたらどうするんですか~」
「私は至って本気で言ってるが」
「ええ?!どんだけ僕は信用無いんですか?!」
「ない決まってる!本当はロゼに紹介したくないが、仕方なくだ」
うーん、確かにノリが軽そうだけど、何を考えているのか分からないタイプね。
「宜しくお願い致しますね、シーラス様」
「よろくね、ロゼアンヌ嬢、僕はシーラス・メーションデータ」
そう言って私の手を取ったところで、パシンと音がした。
「酷いですよ殿下、僕は挨拶をしようとしただけではないですか」
「ふん」
やれやれと頭を掻いて私にウィンクを飛ばすシーラス様。
楽しい人だ、ふふっと思わず笑ってしまう。
「ロゼ?」
何故かアルベルト殿下が心配そうに私を見る。
「殿下とシーラス様は仲が宜しいのですね」
「なっ?!どこがだ!こいつだけは、全く気を許すことが出来ん!」
「えー殿下酷いな、僕は殿下の事、大事に思ってるのに~」
「全く心が籠ってないだろうが、たくお前は」
ふふ、殿下は良いお友達をお持ちですね、後は殿下のお眼鏡に叶う女性が現れるだけですね。
「最後教会長の息子の、クルス・チャーチトーン」
「宜しくお願い致します、ロゼアンヌ嬢に神のご加護を」
そして、クルス様が手をあわせる。
「こちらこそ宜しくお願い致します、クルス様にも神のご加護を」
全員の紹介が終わり、はっと私は気がついた。
この側近候補の人数は・・・まさしくテンプレの攻略対象者人数では!?やっぱりこの世界は本当に?と考えていると、アルベルト殿下が席を立たれた。
「では、他の貴族のご令息とご令嬢に挨拶をしに行こうか」
不適に微笑まれるアルベルト殿下の出された手に、私の手を乗せるのを躊躇してしまう。
「殿下、何か企んでませんか?」
「いや、何も、しいて言うなら使える者がいるか、判断したいだけだ」
「そうなのですね」
そして、私は殿下の手に自分の手を乗せて立ち上がり移動した。
東屋から出た私達は階段を降りて、紅茶を楽しんでいるご令嬢ご令息に挨拶に行った。
私達が皆の前に立つと、皆が立ち上がり迎えてくれた。
殿下が主に挨拶をして話された。
少しして、殿下がハインツ様に呼ばれたので、「ロゼ、少しの間席を外すよ」と離れて行かれた。
残された私は、差し障りのない話をしていたのだが、アルベルト殿下が席を外すと、一人のご令嬢の目付きが変わったのがわかった。
私を蔑むように見てはっと鼻で笑われた気がする。
気にすること無く差し障りのない話をして、暫くたった頃にそのご令嬢が、鼻でふふんと笑い私を見下すようにして口を開いた。
「ロゼアンヌ様と言われましたか、貴方はアルベルト殿下に相応しいと思っていますの?」
確かこのご令嬢は、シャーロット・バーカル侯爵令嬢と言われたか、可愛い顔をしてらっしゃるのに、その仕草は戴けないですよ、まるで悪役令嬢です、他の皆様方々が怯えてらっしゃいます。
私に言われた事は何とも思わないけど、楽しいお茶会の雰囲気を壊すのは戴けない。
ここは上手くかわさないとと話そうとした時、シャーロット嬢の後ろから殿下がいらっしゃった。
そしてアルベルト殿下が、シャーロット嬢の後ろから話された。
「バーカル嬢、それは私が女性を見る目が無いと仰りたいのかな?」
そう言いながら、私の隣に移動した。
殿下を見ると、私に微笑み掛けられた訳ではないのに、ブルっと震えた。
殿下の微笑みが、今まで見たことがない、冷たい冷笑に見えたのだ。
殿下の微笑みを受けたシャーロット嬢は、顔を真っ青にされていた。
「いいいえ、その様な事は・・・」
「うん?だけど、先程、ロゼに私に相応しいかと言ってなかった?」
「いえ、あの、」
シャーロット嬢撃沈ですね、殿下も女の子にそんな冷笑を向けなくても、可愛らしい嫉妬しただけでしょうがと思い、私は殿下に話し掛けた。
「アルベルト殿下、シャーロット様は私に殿下の隣に立つには、大変な努力をされたのでしょうと仰っていたのですよ、ね、シャーロット様」
「ええ、はい、ロゼアンヌ様の仰られる通りです」
「ああ、そうだったのかい、ロゼは王妃教育を全てクリアしたからね、私も鼻が高いよ」
そして私を見つめると、私の手を持ち上げて手の甲にアルベルト殿下がキスをした。
なっ?!何してるんですか?!殿下!!
私は固まってしまってる間に、殿下はシャーロット様に挨拶をして、私の腰に手を置いて違う席へと移動した。
内心動揺しまくりで誘導されるままだが、上部はこれ迄の王妃教育の礼儀作法のお蔭か、表情は穏やかに微笑み、そつなくこなした。
こんな事に礼儀作法のスキルが役立つとは。
全ての人達に挨拶が終わり、少し休憩をするとの事で東屋に戻った私達、ハインツ様達が居るので、殿下に文句が言えない。
内心ギリギリしていると、殿下がハインツ様達に言われた。
「ハインツ達は少し席を外してもらえないか?終わる頃に戻ってくればいいぞ」
「承知致しました、では、失礼致します」
ハインツ様達が席を立ち一礼をして席を外された。
皆様が出て行かれて階段を降りて行かれるのを確認してから、私は殿下に文句を言った。
「殿下、シャーロット様のあれはなんですか?あんなことをされなくても良かったのでは」
「あれとはなんだ?」
くっ、とぼける気ですか、そして何か楽しそうに見えるのは私の気のせいではない筈、
「あれとはあれです」
「あれではわからん」
うう絶対わかってますよね!顔がいじめっ子の表情ですよ!
「だだから、あの様な事をされると、後々殿下が困ると思います!」
「後々、ねぇ」
な、な、なんですか?!その残念な子を見る目は!最近感じてきたんだけど、殿下、私で遊んでませんか?
最近聞くなと言われたけど、再度念押しで確認しないと。
「殿下、あえてお聞かせて下さい、学園生活の中で殿下の婚約者を探されるのですよね?」
私は祈るようにして殿下を見上げる。
少し殿下が怯まれた気がするが、すぐにうーと唸られ頭を掻かれてじっと私を見る。
何で殿下が悩むのよっと思い、私は首を傾げた。
はぁと大きく息を吐かれた殿下は、再度残念な子を見る目をして言った。
「ロゼは、本当に素直だな、言ったままを受けとる、だがまあ、それが良いところだが・・・たまに違った受け取りかたをするが」
「えっ?殿下は嘘つかれたのですか?」
「いや、嘘は言ってない、学園に居る間に何とかする覚悟しろ」
「そうなのですか?わかりました、私は何時でも覚悟は出来ておりますよ、ですので殿下がその方との事で困ったら言って頂ければお助けします」
「道のりは長そうだな」
はぁと溜め息を吐かれて殿下が呟かれたが、私には聞こえず、そしてまた殿下が残念そうな目で私を見る。
なんでだ?
私は不思議に思い首を傾げる。
「ところで、ロゼは誰か思う者が居るのか?」
そう言って殿下が不安そうな表情になられた。
なんでそんな不安そうにするのだろう?
ああ、私が婚約辞退をした後の為に、誰かとすぐに婚約出来るように、誰かと会っていると思っていらっしゃるのかな?。
まあ、そんな事したら醜聞になりますものね、殿下にそんな迷惑はかけませんよ。
というか、そんな事したら、まるでビッチじゃないですか、私はそんな称号いりません。
私は安心させるように微笑む。
「いいえ、今の私は繋ぎ役の婚約者ですが、そんな殿下に迷惑を掛ける醜聞は致しません、殿下の思う方が出てくるまでは、私は殿下の婚約者として立派に役目を果たします」
「そうか・・・・それなら変な虫が寄らないようにしないとな」
そうかと殿下が言われたあと、何か呟かれたけど、聞こえなかった。
お父様は悪い事はしてないようだから、一応お家取り潰しはないだろう、あとは、同学年で庶民は今は居ないけど、来年か再来年にイレギュラー的に庶民が編入してきたら要注意だ。
その人が良い人ならいいけと、私と同じ転生者でこの世界がゲームか小説と同じでその通りに進めようとして、私を悪役にするかもしれない、私の記憶の中では該当作は無かったけど、私が知らないだけかもしれない、もしそうなら絶対アルベルト殿下は、攻略対象者に違いないし、学園生活は注意しなければ、私は改めて気合いを入れた。
「頑張りましょうね!アルベルト殿下!」
「あ?まあそうだな、頑張るよ」
そんな感じで、アルベルト殿下のお茶会は、最後に殿下が挨拶をしてお茶会は終わった。
*****
夜は舞踏会だ。
アルベルト殿下が迎えに来たと連絡が来て、私は寮の玄関へと向かう。
今日のドレスも、アルベルト殿下からの贈り物だ。
あの社交界デビューから、ずっと舞踏会のドレスはアルベルト殿下からの贈り物だ。
一度、私に気を使って無理して送らなくてもいいですよと言ったのだけど・・・・アルベルト殿下に常識だと言われしまい、今現在に至る。
「アルベルト殿下、ドレスを有り難うございます」
「良く似合ってるよロゼ、綺麗だね、では、行こうか」
にっこりと王子様の微笑みで言われて、私は少し恥ずかしくなってしまった。
そして殿下の手が差し出されて、その手に私の手を乗せると殿下は自然と私の腕を自分の腕に絡めてエスコートした。
いつもの事なのだけど、何故だろう、ドキドキと落ち着かない。
周りからはほぉっと溜め息が聴こえる。
ああそうだ、いつもと違う事がある。
いつもは二人だけで気合いを入れるように話して、扉が開いての入場が、今回は寮の玄関ホールで、殿下にいつもは言われない王子様対応をされたからだ。
そう、同士ではなく、本当のパートナーとして扱われた気がして、精神年齢がかなり大人な筈なのに、異性の記憶が無いせいなのか、意識してしまった。
「ロゼ?どうしたんだ?」
「えっ?いえ、何も」
はっと気が付くと、舞踏会会場へ向かっていた筈なのに、渡り廊下の脇で建物の影になった場所だった。
皆が舞踏会会場へ向かっているのが見えるが、進行方向とは逆の位置の為、私達の事は皆からは見えない。
アルベルト殿下が私の頬に手を添えて、じっと見つめられる。
えっ?ち、ちかいですよ!?
いつもと違う殿下に私は、きっと顔が赤い、だって顔が熱いもの、恥ずかしくって添えられていない方へと顔を俯いた。
何か言わなきゃと思い、そうだ舞踏会会場へ行けばいつも通りになる筈と俯いたまま言った。
「アルベルト殿下、会場へ向かわなくては、間に合わなくなりますよ」
そう言ってから、少したったがアルベルト殿下が何も仰らない事に不信に思い、伺うようにアルベルト殿下を見上げた。
「ロゼ、いつもと違うな、どうしたんだ?」
「い、いえどうもしないですよ」
「顔が赤い」
何故か殿下が嬉しそうにしてます。
「殿下の方が可笑しいですよ」
「そうか?まあ、変か?」
「私に対して皇太子対応されますと、何といいますか、は、は、恥ずかしいです」
「今迄もそうだっただろう?変わらんぞ」
「そうですね、私が変に意識しすぎました、気を付けます」
「そうか、意識したのか」
そして、私の頬に置いた手で優しく撫でて、殿下が楽しそうに言いました。
私はピキっと固まった。
「ロゼ、行くぞ」
再度殿下は私の手を取り腕を絡めて会場へと遅れる事なく到着し、舞踏会では、上部はいつも通り振る舞う事が出来ました。
殿下の事も益々わからないけど。
殿下に対しての、あの緊張はなんだったのだろう?自分の事ながら、自分の事がわからない変な日でした。
折り返しです。
ここまで拙い話をお読み頂きありがとうございます。
後もう少しお付き合い頂ければ嬉しいです。