アルベルト殿下視点 二人の幸せの為に
二学年一期終わり、クルーズベルト邸へ帰った二人、
タイトルから、ある程度予想がつかれると思いますが、アルベルト殿下頑張ります。
相変わらずの残念な頭から漏れでた妄想なので・・・。
二学年一期が終わり、ロゼをクルーズベルト公爵邸へと送るため、一緒に馬車で移動する。
今、俺はロゼを隣に座らせて腰を抱き寄せて、もう片手はロゼの手を握って俺の膝の上に置き、時折手を擦る。
試験の間は真面目に図書室で一緒に勉強していて、ロゼに触れてなかった。
まあ、言うなればその反動が今なんだが、これでも抑えているつもりだ。
先ずはシモン殿へ報告をして、正式に婚約者と認めてもらわないとな。
そんな事を思いながら、ちらりとロゼを見ると、ロゼは顔を俯けて少し落ち着かない様だ。
頬が少し赤くなっているから、多分恥ずかしいのだろう。
ロゼの手を持ち上げて、手の甲にキスを落とし、少し悲しげな声をしてロゼに声を掛ける。
「ロゼ?どうして俺を見ない?俺は試験の間ロゼに触れなくて寂しかったんだが、ロゼは違うのか?」
ロゼは俯いたままううっと動揺しながら、何か言おうと口を少し開け閉めして、上手く言葉が発する事が出来ないようで。
握っていた手を解放して、今度はロゼの顎に手を添えてくいっと上げてみると、少し涙目のロゼが俺を見てすぐに目を逸らした。
ああ、恥ずかしいのか、可愛いな。
「ロゼ、今までずっと一緒に居たのに慣れないのか?」
そう言った俺をキッと涙目で睨むようにしてロゼが言った。
「アル様の変わり様についていけないのです!なんでアル様は慣れてらっしゃいますの?!」
ロゼの言葉に少し困った様に見つめて言ってやる。
「心外だなぁ、ロゼに触れたいから自然となるんだが、嫌か?」
ロゼは顔を赤くして、可愛い口をパクパクとして驚いて何も言えない様だ。
そんなロゼの頬に手を添えて、にっこり微笑んで言った。
「残念だ、もう着いてしまった」
そうしてそっとロゼを解放すると馬車が止まり、扉が開かれた。
*****
玄関ホールでロゼと別れ、メイドにシモン殿の元へ案内してもらう。
そして、シモン殿と対面して挨拶をして、ソファーへと互いに向かい合い座る。
シモン殿は、苦々しい表情をして俺を見る。
「クルーズベルト公爵、お久しぶりです、お元気そうで何よりです」
「アルベルト殿下もお元気そうですね」
いつものシモン殿らしからぬ苦々しい表情に、俺はちょっとびびってしまう。
しかし、これからの俺とロゼの為に、しっかりとシモン殿に報告をさせて頂く!
「クルーズベルト公爵、私とロゼアンヌ嬢は互いに思い合っています。これからは今以上に二人で助け合って行き、お互いの事をもっと深く知って行くことが大切だと思いますので、私をロゼアンヌ嬢の婚約者と認めては頂けませんでしょうか、お願い致します」
今度は負けた様な表情のシモン殿は、ううっと言葉に詰まっている。
そこでドアがノックされ、執事が扉を開け確認すると、ロゼの母上のマリーローズ公爵夫人だった。
マリーローズ夫人が部屋に入ってこられたので、俺は立ち上がり一礼をして挨拶をかわす。
そして、マリーローズ夫人がシモン殿の隣に座られ、がっくりと頭を垂れてうなだれているシモン殿に声を掛けた。
「シモン、しっかりなさって下さい、何をそんなにがっかりされているのです?」
おずおずとマリーローズ夫人を見るシモン殿。
「マリー、ロゼが」
「シモン、貴方の気持ちよりも、ロゼの思いのが大切でしょ、もうすぐロゼもここへやって来ます、ロゼの気持ちを聞いて、貴方の覚悟も決めて下さい」
夫人の言葉に俺も驚く、ロゼが来るのか!?
すると、ドアがノックされて、入って来たのはロゼだった。
慌てて俺は立ち上がり、ロゼをエスコートして俺の隣に座らせた。
シモン殿が何とも情けない表情をしてロゼを見ている。
マリーローズ夫人が、変わりにロゼに話し掛けた。
「ロゼアンヌ、アルベルト皇太子殿下の事をどう思って、どうしていきたいの?」
率直なマリーローズ夫人に俺とシモン殿はぎょっとして、思わずマリーローズ夫人を見てしまう。
シモン殿がマリーローズ夫人に情けない声で言った。
「マリーは、私にとどめをさすのか」
「とどめなんて人聞きの悪い事を、貴方はロゼの幸せを願わないの?」
そう言われて覚悟をしたように、ロゼを見つめるシモン殿。
俺達全員の視線を向けられ、ロゼが少し怯んでいる。
ここは俺から先に、ちゃんと言った方がロゼが話しやすいだろう。
俺は立ち上がりロゼの前で片膝をつく。
俺が立ち上がったので、ロゼも慌てて立ち上がったが、俺が膝をついた事で目を見開いて驚いている、構わず俺はロゼを見上げ目を見て話し出す。
「ロゼアンヌ嬢、私は貴女を愛しています、しかし私の妻になれば、この国を共に背負う事になり、貴女には重荷になるかもしれない、だけど、私は貴女と生涯を共に生きていきたい、どうか私の手を取って共に生きると言ってくれませんか」
そして俺は手を差して、願うように頭を垂れた。
差し出した手が、少し情けない事に震える。
ロゼの気持ちは俺に在ると思っているが、もしかしたらこの国を一緒に背負う事までは、ロゼは覚悟をしてないかもしれないと、今思ってしまった。
そして少し血の気が指先から無くなる感覚がした時、温かく包まれた。
はっとそちらに顔を上げて目を向けると、ロゼが俺の手を大事そうに両手で包んで、嬉しそうに微笑む。
「私もアルベルト皇太子殿下を愛しております。これからの生をアルベルト皇太子殿下と苦楽を共に分かち合って行きたいです。アルベルト皇太子殿下、これからも宜しくお願い致します」
俺は立ち上がり、もう片手をロゼの両手の上に重ねて言った。
「ありがとうロゼ」
そしてロゼの手をしっかり握って、二人でロゼの両親へ向き直り一礼をして俺は再度言った。
「クルーズベルト公爵、公爵夫人、どうか私をロゼアンヌ嬢の婚約者だと、認めてはくれませんか」
「お父様、お母様、私はアルベルト皇太子殿下と共に居たいです」
シモン殿が一息深呼吸をした、そしてロゼの両親は立ち上がり、シモン殿が俺達に言った。
「アルベルト皇太子殿下とロゼアンヌの気持ちもわかりました、すでに二人は婚約しているので、私達が認めるとは変な感じですが、アルベルト皇太子殿下の私達夫婦に対する誠意をありがとうございます、どうか娘を宜しくお願い致します」
そしてロゼの両親は俺に一礼して、顔を上げられ再びシモン殿が話し出した。
「取り敢えずお座り下さい、ああ、それとロゼアンヌへの護衛は引き続き付かせて頂きます」
全員ソファーへ腰をおろしてから、ロゼは慌ててシモン殿に話し掛ける。
「お父様、私を心配しての護衛は嬉しいですが、アルベルト皇太子殿下は護衛されるべき方です、以前殿下に攻撃をしてました。
殿下は対象外だと護衛の方にくれぐれもお願いして下さいね、殿下が寛大なお心で許して下さいましたが、殿下が私に何かする筈もありませんのに」
うう、いやその護衛は正に俺に対してなんだかな、ロゼの俺への評価が高すぎる、確かにロゼを傷付ける事は無いが、色々つい手を出してしまうかもしれない、ちゃんと節度は守るが。
俺はなんとも言えない表情になり、逆にシモン殿は生き返った様ににっこり微笑まれる。
これは先手を打った方がいいな。
「クルーズベルト公爵、ロゼアンヌ嬢への護衛は引き続き付けて頂いて構いません、その方が私も安心ですし、ただし、私はクルーズベルト公爵も認めた、ロゼアンヌ嬢の婚約者と言うことを、ゆめゆめお忘れなき様に」
そしてにっこり負けずにシモン殿に微笑む。
マリーローズ夫人は、あらあらと微笑ましく俺とシモン殿を見ていた。
ロゼはほっとして俺を見て言った。
「申し訳ありませんアル様、寛大な対応をありがとうございます」
「ロゼに護衛を付けている方が、何かの時に護ってもらえるからね、私が側にいない時に少し安心だ」
俺の事を綺麗な目で見てくるロゼに、そう言って頑張って微笑む。
するとマリーローズ夫人が、ロゼに提案をした。
「ロゼアンヌ、アルベルト皇太子殿下とお父様はまだお話が有る様ですから、私達は庭園でお茶の準備をしてお待ちましょう、アルベルト皇太子殿下、まだお時間は宜しいのでしょう?
今日は我が家の庭園で、ロゼアンヌとお茶をして休憩されてからお帰り下さい、ですのでシモンほどほどにね」
そう言ってマリーローズ夫人はロゼを連れて、部屋を出ていかれた。
残された男二人は同時に一息吐いた。
そして見合ってしまう俺とシモン殿。
「ははは、何はともあれこれからも宜しくお願い致します、クルーズベルト公爵」
「アルベルト皇太子殿下、ロゼアンヌの事を宜しくお願い致します、あの子は私達家族にはとてもとても大切な娘です、幸せにして下さい、私が願うのはそれだけです。
ですが、ご結婚されるまでは、護衛の判断で殿下への警告攻撃は致しますので、そのおつもりで。
なに、婚約者としての振る舞いを越えなければ何の問題もありません、殿下なら大丈夫ですよね。
では、そろそろ行って下さい、ロゼアンヌも殿下を待って居るでしょうから」
「勿論護衛の事は心得ております、お任せ下さい、それにロゼアンヌ嬢の事は私がお守りし、必ず幸せにしてみせます、では、失礼致しますクルーズベルト公爵、また」
*****
部屋から出ると、メイドが立っておりロゼの所へと案内してくれた。
そういえばクルーズベルト公爵邸の庭園は初めて見る。
ロゼが俺を見て嬉しそうに立ち上がり、寄って来て俺の胸に顔を埋めた。
「アル様、ありがとうございます、アル様のご身分でしたら、あそこまで私にも私の両親にも、お願いされる事もないですのに、とてもとても嬉しかったです」
そっとロゼの背に手を回して、ぎゅっと抱き締める。
ロゼから俺に体を預けてくれるのは初めてだ。
頑張った甲斐があった、そしてだらしなく顔が緩むのを頑張って引き締めて話す。
「身分は関係なく、一人の男としてロゼの両親にキチンと認めて頂きたかったからな、ロゼもご両親に俺の事を言ってくれてありがとう、さあ、用意してくれたお茶を頂こうか」
そしてロゼをテーブルへとエスコートして席に座り、お茶を頂くことにした。
暫くしてロゼに庭園を案内してもらう事にした。
クルーズベルト公爵邸の庭園は、可愛らしい作りになっている。
花が多く、花のアーチなど、小さな噴水、道は小路の様にこじんまりしているが、二人で歩くには丁度いい感じだ。
そして、庭園全体を見渡すようにある東屋へ行き二人で並んで座る。
ロゼの肩に腕を回して抱き寄せて、ロゼの頭に俺の頭を寄せてロゼに提案をする。
「ロゼ、今度二人で出掛けよう、観劇でもいいし、町を見て回るのもいいし、どこか少し遠出してもいい、シーラスに聞いたら恋人達は、二人でお出掛けして思い出を作るんだそうだ」
ロゼは嬉しそうに、両手を胸の辺りで握り拳を作って、俺を見上げて言った。
「えっ?いいのですか?」
「まあ、完全には二人きりにはならないが、出掛けることは問題ないだろう」
「では、まずは町をアル様と歩いてみたいです」
「わかった、じゃ、お忍びでデートしよう」
「デ デ デート・・・」
ロゼが両手で顔を隠して俯いた。
「ロゼは可愛いなぁ、こんなんで照れていたら、これから先大変だぞ?」
そう言ってロゼの頭を撫でてやる。
ロゼが恐る恐る顔を隠していた手を外して、少し赤い顔で不思議そうな表情をして、首を傾げて聞いてくる。
「大変とはどういう事ですか?」
そんな無防備に可愛い顔をするから、ついやってしまう。
「それは、こういう事が増えるということだ」
そう言って、ロゼの顎をくいっと上げてチュと軽く口づける。
軽くしただけなのに、ロゼは顔を真っ赤にしてふるふる震えている。
ふふふと笑ってやると、ロゼがポカポカと俺の胸を叩いてから俺の胸に顔を埋めて、「アル様の馬鹿」と小さく呟いた。
そんなロゼを遠慮無く抱き締めて、幸せだなと思い。
「そうだな、俺はロゼ馬鹿だ」とロゼの耳元で囁いた。
最後はこれでも頑張って甘々にしたつもり、全然かもしれませんが・・・
取り敢えず、殿下が男を見せたと感じて頂けたらいいのですが。




