父S 保護者達の語らい
アル父とロゼ父の話しです。
この分は三人称でなってます。
割りとノリで書き綴っておりますので、自分ではコメディ感を出したつもりですが・・・。
アル父とロゼ父は、一応幼なじみ、親友設定で、二人の時は超フランクな感じですので。
ある日の王宮、王の執務室のテラス席で、見目麗しい壮年の男性二人が語らっていた・・・?
銀髪の男性は、ぐっと手で握りこぶしを作り、目の前の金髪の男性を、睨み付けて言った。
「アーサー!私を謀ったな!ロゼをアルベルト皇太子殿下の婚約者にするとは聞いてないぞ!!ただ私の娘を見たいと言うから!渋々連れて来たのに!」
そう言った銀髪の男性はロゼアンヌの父シモン・クルーズベルト公爵、そのシモンに睨み付けられている金髪の男性は、この国グレートナイン王国の王アーサー・ナインスバルグ、アルベルトの父だ。
*****
謁見の後、庭園に向かったロゼアンヌの事を心配したシモンが、二人の後をつけて行った。
そのシモンの後ろを、アーサー王も付いて行った。
そして父親二人は、隠れて自分達の子供の様子を見ていた、するとアルベルトの”俺はお前を婚約者とは認めないからな!“の発言を聞いて、シモンが飛び出そうとしたのを、アーサー王がシモンの口を抑え、引きずるように、執務室へと連れてきて今に至る。
*****
アーサー王は、鋭い凍える様な眼を向けるシモンを、内心ビクビクしながらも、表情は平然と受け止めて言った。
「本当の事を言ったらシモンは、ロゼアンヌ嬢を連れて来ないだろ」
「当たり前だ!さっきも見ただろ!お前のとこのガキはなんだ!私の可愛い娘に対しあの態度!そしてその後の庭園でのあの発言!」
アーサー王は、シモンの失礼な発言に怒ること無く、申し訳なさそうな表情をして話した。
「すまないなぁ、アルは、なんというか、女の子に対して夢も理想も無いというか、幻滅しててな、だから、私が決めたロゼアンヌ嬢に皇太子の仮面を被る事をやめて、どう反応するのか見るために、あの態度になったのだろうな」
アーサー王の言葉を聞いて、シモンは頭を抱えた。
「だから嫌だったんだ!ロゼをこんな魔窟に入れるなんて!?なんであの可愛い素直な真面目なロゼが!あのような仕打ちを!?」
「シモン、魔窟とは私に対して失礼ではないか?」
アーサー王は、ちょっと傷付いたぞとシモンを見たが、シモンはギロリとアーサー王を見返し言った。
「ロゼが受けた仕打ちよりましだ、それに事実ではないか」
「いや、まあ、」
「大体!ロゼを王族に嫁入りさせなくても、わが家と王家は確固たる繋がりがあり大丈夫だろう!シールも立派に私の補助だが、実質は、ほぼ実務をやらせていて問題無い筈だ!」
「まあ、なあ、今は政略婚せずとも、他の貴族ともいい力関係だしな、なら、シモンの所ともっと磐石にした方がいいかと思ったんだが、まあ、ロゼアンヌ嬢がこの婚約を嫌だと言うなら、無かった事にしてもいい、まだ、公にはしてないしな、但し来年のアルの誕生日会の舞踏会で発表となるから、それまでにはどうするか決めてほしいかな、まあ、その後もどうしてもロゼアンヌ嬢が嫌だと言うなら、何とかするが」
アーサー王の言葉を聞いて、ふふふとシモンは笑った。
「成る程、ならアーサー、私がアルベルト皇太子殿下に何を約束させても、やってもいいか?」
アーサー王はシモンの、その笑いを怖いと思い、そして“なら”ってどういう意味だ!っと思い慌てて言った。
「おい、一応アルはこの国の皇太子だからな!わかってるか!シモン!アルに何言うのか、やるのか、先に一応私に教えてくれ」
アーサー王の慌てぶりを気にすることなく、綺麗な笑みをうかべ、大丈夫だという風にシモンは頷き言った。
「ああ、わかっている、まあ、約束と警告位だ、それだけだ」
ふふふと貴婦人が見れば麗しそうに見えるシモンの微笑みに、アーサー王は、全然安心出来んと、ひきつった微笑みをシモンに向け思った。
(アルよ、お前は人生で一番厄介な奴を敵に回してしまったな、まあ、がんばれとしか私は言えんが・・・)
「そろそろ、ロゼを迎えに行く時間だな、一旦ロゼを家に送ってから、また、登城する、その時にアルベルト皇太子殿下と話をするから、宜しく」
そして執務室を出る時には、先程の雰囲気をがらりと変えて臣下として振る舞うシモン。
「では、アーサー王失礼致します」
執務室よりシモンが立ち去り、アーサー王は手を合わせた。
「アルに神のご加護がありますように」
*****
その後シモンは、アルベルト皇太子殿下に会ってから、再度アーサー王の執務室へと赴いた、シモンは侍従に執務室の応接セットのソファーへと案内されて、アーサー王に挨拶をして、座るように促されてから座り。
そしてアーサー王と二人だけになった。
「シモン、アルはどうだった?」
少し怖々とアーサー王はシモンに問いかけた。
声を掛けられたシモンは腕を組んでうーむと難しい表情をして言った。
「アルベルト皇太子殿下は、ロゼの事をどう思っているんだ?私からの約束を全て了承したのだが・・・」
そう言ってがっくりと肩を落とすシモン。
「約束は、メインは確かロゼアンヌ嬢に触れてはならないと、アルから好きだと言ってはいけないだったか?」
「ああ、そうだが、まずロゼに触れるとロゼに付けた護衛から、警告の攻撃をすると言って、それが嫌なら婚約を破棄をしてくれと言ったのだが、悩むこと無く了承した。
普通なら攻撃されるなんて嫌だろ、アルベルト皇太子殿下だって婚約者とは認めないと言っていたのに!それなら直ぐに婚約破棄の方を選ぶだろ!なぜ警告攻撃を了承なんだ?!訳がわからん!」
「うーん、恐らくだが、最初アルはロゼアンヌ嬢をエスコートして無かっただろう、だが、庭園で再度ロゼアンヌ嬢の名前を聞いた後に子供らしい笑みを浮かべて、庭園をエスコートしたそうだ、もしかしたら、ロゼアンヌ嬢に興味が出たのかもしれんな」
「なっ?!だが、攻撃を受けると了承したのは何故だ?」
「恐らく、まだアルはロゼアンヌ嬢の事を触れたいとかまでは思ってなくて、気を付ければ大丈夫だと、安易に考えて了承した可能性があるなぁ」
「なに?!私の可愛いロゼに触れない自信があると・・・ふふふ馬鹿な、あり得ない」
「お おい、シモン、お前はどっちなんだ?ロゼアンヌ嬢に触れて欲しく無いのではないか?」
「触れて欲しくは無いな、だが、あの可愛いロゼに触れたくないと言う者は、人としておかしい!」
親バカすぎて、もはや私もシモンの事がわからんとアーサー王は、呆れた表情でシモンを見て言った。
「娘を持つと、物凄く大変な事はわかった」
「ああ害虫が寄らない様に、親が守ってあげないとな、特にロゼは私達家族には大切な子だから」
そしてシモンは思い出した様に苦しそうな表情をした。
それを見たアーサー王は、ああそう言えばと思い出した。
ロゼアンヌ嬢は病気で死にかけて、奇跡的に回復して助かったのだったなと悲しい表情でシモンを見た。
「シモン、アルは初めて異性に興味をもったんだ、だからと言うか、きっとロゼアンヌ嬢を傷付ける事はしない、それは親である私が保証しよう」
「確かにアルベルト皇太子殿下は、ロゼを傷付ける事はしないだろう、だが私はロゼには幸せになって欲しいだけだ、なのに・・・一番の魔窟に・・・」
そう言いながら、アーサー王をぐっと睨むシモンに、アーサー王は少し怯んだが、負けじと言い返す。
「お前は、またそう言う事を私に言うな、傷付くじゃないか」
「そうだ!全ての元凶はアーサーにある!どうしてくれるんだ!?」
そしてシモンを、まあまあと宥めるアーサー王であった。
*****
ロゼアンヌが初めての護身術を習った日の事、アーサー王の執務室にシモンがやって来た。
いつもの様に二人以外に誰も居ない。
応接セットのソファーに座りシモンが話し出した。
「アーサー、今日アルベルト皇太子殿下に、警告の攻撃を初めてしたぞ」
不機嫌顔をあらわにアーサー王に言うシモン。
「ほお、で、アルはどうしたんだ?」
「一瞬驚いていたようだが、警告の線引きがわかり、受け入れた様だ」
「そうか、まあ、少し痛いだけだもんな、あの矢だと」
「まあな、だが、その後ロゼの頬っぺたを摘まんだんだぞ!有り得ん!?」
シモンが頭を抱えて唸っているのを見て、アーサー王がシモンを宥めた。
「いや、ほら、あれだ、好きな子は苛めたくなるって奴だ!アルも普通の男の子だったって事だ!子供らしくていいじゃないか!なっシモン」
嫌そうにアーサー王を見るシモン。
「いや、それだけじゃない、動けないロゼにあのガキは、抱き上げて馬車まで運んだそうだぞ!城の皆に見られてロゼは帰ってからも、暫し顔を紅くして放心状態だったのだぞ!」
怒れるシモンを見てアーサー王は思った。
(ああ、それな、ロゼアンヌ嬢に抱きつかれて、嬉しそうなアルの表情に、城の皆が驚いたって奴な)
そしてアーサー王は、言い訳の様にシモンを宥める。
「いや、まあ、ほらそれは動けない相手を手助けして、運んだのは、婚約者として当然ではないか?」
そう言うアーサー王を、キッと鋭い視線を投げつけてシモンが言った。
「ちゃんと婚約者ならな!だが、アルベルト皇太子殿下はロゼの事を“婚約者とは認めない”と最初に言っていただろうが!だから、婚約者じゃない筈だ!」
なんとも大人げない発言だとアーサー王は思ったが、シモンに言う事はない、何故なら怖いから。
(アルよ、今後安易に発言しては駄目だと勉強になったな)
と思いアーサー王は心の中で手を合わせた。
*****
そして月日はたち、とうとう公にアルベルト皇太子殿下と、ロゼアンヌの婚約発表の舞踏会の前日に、シモンはアーサー王の執務室に来ていた。
「うう、とうとう婚約破棄出来ずに、この日を迎える事になるのか」とシモンが頭を抱えている。
「ロゼアンヌ嬢は、婚約破棄したいとは言って無いのだろう、シモン」
「だから、困っている、それにアルベルト皇太子殿下が、警告攻撃に対処しだした!全部の攻撃に反応し払うようになったんぞ!!これから、どうやってロゼを護ればいいんだ!?」
シモンは頭を抱えて唸っている。
アーサー王が、腕を組んで頷いている。
「アルは優秀だからな、学力でも、剣術でもな、それでもシモンの暗部の攻撃に反応するとは凄いな」
シモンがキッとアーサー王を見て言った。
「感心してる場合か!」
そのシモンの視線をやんわりと受け取り、アーサー王はにっこり微笑んで言った。
「ああそう言えば、シモンありがとうな、アルも一緒に誕生日会をしてくれたのだろう」
「いや、それはまあ、ロゼも楽しそうだったからいいんだが」
シモンがばつが悪そうに苦笑いする。
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ロゼアンヌとアルベルトが学園へ入学してからのある日の事、アーサー王の執務室にシモンが訪れて、部屋には二人だけだった。
「アーサー、アルベルト皇太子殿下は、最初は警告を受けたらロゼを触れるのをやめていたのに、最近では片手はロゼを触れながら、もう片手で攻撃を受け止めて、しかも反撃してきたぞ!!更にあのガキ!多少のダメージも受け入れる事に慣れてきた!どうしてくれるんだ!アーサー!お前親だろ!注意しろ!」
あまりの動揺なのか、怒りなのかシモンの口調が大変失礼なものになったものの、それでアーサー王は特に怒ることはなかった。
アーサー王はアルベルトの変わり様が面白く、またシモンの取り乱した姿も面白くて楽しんでいた。
「いやまあ、なあ、アルも普通の男の子だったんだな、それだけロゼアンヌ嬢の事が好きなんだろうな、邪魔されても触れたい位に、微笑ましいじゃないか」
「いや、まあ、ロゼだからな、そうなるのだろうが・・・ならアーサー人員を増やして、アルベルト皇太子殿下に警告増やしてもいいか?そうだ!刺客に狙われた時の訓練だと思えばいいよな!それにロゼを守れる器量を持っているかの判断にしたいしな、ふふふ」
また親バカ過ぎて、それでなにが“なら“で手数を増やそうとするんだとシモンに、アーサー王は思い少し呆れた表情をしたが、まあ、いいかと、いとも簡単に了承した。
シモンは文句を言いながらも、警告に使う武器は怪我しないようにと考えられた武器だからだ
そして、シモン・クルーズベルト公爵とアルベルト皇太子殿下の攻防は続いていく。
二人の裏側での、父Sのやり取り。
ロゼ父の娘馬鹿ぶりが表現出来ていたらいいのですが、ちょっと面白いと思って頂けたら幸いです。