リリアンヌ視点 私はヒロイン!
リリアンヌ・ビッチモルドさん視点のお話です。
後半は、学園一期が終わり自宅に帰った時のお話です。
この話、投稿するかしないか迷ったのですが、思いきって投稿しました。
私は、リリアンヌ・ビッチモルド男爵令嬢。
今は男爵令嬢だけど、前は庶民!
修道院育ちなのね、両親が八歳の時に亡くなって、身寄りが無くなって修道院に入ったの。
私は両親が亡くなった時に、前世の記憶が甦った。
それは、乙女ゲームで題名すらも思い出せないけど、でも、攻略対象者や、その悪役令嬢とかは覚えている。
そして私はヒロインだ。
私は勉強と魔法が凄く出来る設定だ。
なので、ここに来てから猛勉強して、男爵家に引き取られる様に頑張った。
そしてゲーム通り男爵家に入った私は、貴族のマナー教育を受けて、それも難なく覚えた。
私を引き取った養父母は、私を気に入ってくれて、将来結婚して男爵家を継いで欲しいと言っていた。
しかし、私は心でご免なさいと謝る。
だって私はアル様、この国の皇太子殿下である、アルベルト皇太子殿下の奥さんになるんだもの、だから、男爵家は継げない。
だからご免なさい!
*****
そうして漸く学園に編入出来て、アル様にお会いした。
アル様と同じクラスになったけど、まだアル様からは話し掛けて来られない、まあ当たり前よね、面識がないのだから。
それはそうとして、悪役令嬢のシャーロット・バーカル侯爵令嬢が同じクラスの筈だけど、何故か別のクラスだったのが不思議だけど、まぁいいか。
やはり最初のイベントをして、面識を持って貰わないとねと思い、私はアル様との出会いのイベントをするために、放課後、男子寮の近くにある、木の下にベンチのある場所を探して、そしてその木に登った。
そしてそのままアル様待つ。
そうすると、アル様がやってこられた、やっぱり超カッコいい!!思わずじっと見ていたら、アル様がベンチに座られ本を読まれている。
やっぱりこの世界はゲームの世界だわと思って、いつ落ちたらいいのかしら?とアル様をガン見していたら、バランスを崩して落ちてしまった。
やっぱりこの世界は乙女ゲームだわ!こんなタイミングよく落ちるのは、ゲームの強制力なのねっと思い。
きゃと叫んで、目をぎゅっと瞑った、アル様が受け止めてくれた割には、衝撃がかなり有り、おしりが痛いと思い目を開けると、ポカンとした顔のアル様が立っていて、私を見下ろしていた。
あれ?抱き止めてくれなかった?
なんで?と思っていると、アル様が気を取り直されて、優しく私に話し掛けてくれた。
「大丈夫ですか、お嬢さん、私はアルベルト・ナインスバルグと言います」
名前を名乗ってくれた!声を掛けてくれた!
あれ?でも台詞が違うけど、確か“面白い子だね”って言って、私の名前を教えて欲しいと言うのでは?
まあいいわ名乗ってくれたのだしと、浮かれて私は答える。
「えっ、はい大丈夫です、私は今日からアル様のクラスに入った、リリアンヌです!」
一瞬アル様が蔑んだ目をした気がするけど、直ぐに優しい笑みを浮かべて話された。
「大丈夫なら、良かったですね、失礼ですが家名を教えて頂けますか?」
ああ、なんて麗しいのかしらとアル様を見ていて、ふと言われた事を思い返した。
あれ?なんで家名を聞くのかしら?まだ名前で呼ぶには好感度が上がってないからなのかしらねと思い、名乗り直す。
「リリアンヌ・ビッチモルドです、アル様宜しくお願いします」
「ビッチモルド嬢は、何故木に?これからは危ないから登らない方がいいですよ、まあ、怪我も無いようですし、私はこれで失礼しますね」
そしてアル様は綺麗に一礼して、私を置いて行ってしまった。
私はびっくりして、えっあのと声をかけるが、振り向いてもらえなかった。
うーむ、やっぱりアル様に受け止めて貰えなかったら、好感度がそこまで上がらなかったのかしら、だからシナリオ通りに話が進まなかったのねと思った。
*****
それからの私は、攻略対象以外で誰にでも話しかけた。
気さくな、誰にでも優しく、無邪気な私を見て、全攻略対象キャラの好感度が上がるからだ。
男爵家で貴族マナー教育は教えて貰ったけど、私は特別だからそんなの守らなくても大丈夫なのよ!
そしてある程度一般人で好感度を上げたので、次のステップだ。
先ずはハインツ様だ、もうすぐここを通られるハインツ様に私はぶつかるの、それでハインツ様が優しく微笑み“元気な子だね”と私を助け起こして、庭園で話しましょうとエスコートしてくれるのよ。
こっそり角から覗きタイミングを図る。
よし!今だと私は走った。
どん、きゃっと叫んで目を開けると、黒い騎士服の胸元だった。
ハインツ様が私を受け止めて倒れて居た。
そのまま私は申し訳ありません!っと謝った。
そうしたらハインツ様が微笑みながら言うのだ。
「取り敢えず退いてくれませんか」
あれ?台詞が違う。
そっと顔を上げて見てみると、ううっと顔をしかめたハインツ様、私と目が合い再度ハインツ様が言った。
「申し訳ないが、降りてもらえないだろうか」
迷惑そうに、そう言うハインツ様に驚いて、慌ててハインツ様の上から降りる私、驚いてペタリと廊下に座ったままハインツ様を見上げる。
ハインツ様が立ち上がり、埃をご自分で払われるのを呆然と見上げて見つめる。
そして、ハインツ様は顔をしかめて、私に手を差し出し立ち上がらせてくれたが。
「君、廊下は走っては行けないよ、今度から気を付けなさい」
そう言って去ってしまわれた。
残された私はポカンとしてしまう。
あれ?なんで好感度上がってないの?
でも、これ最初の出会いのイベントだよね?アル様の事で、安全策を取って、一般人で必要な好感度上げた筈なのに、なんで?
まあ、いいわ次は大丈夫と残りの側近の方に、出会いのイベントをしに行ったのだが・・・なんで!?全部素っ気なく対応された!?
あと、一人の攻略対象者が見当たらないのよね、私と同じクラスの筈の二つ歳上のシール・クルーズベルト公爵令息がいらっしゃらないのよね、なんでだろ、アル様とは違う少し影を持った銀髪の貴公子に会いたかったのだけど。
ふふん、いいわ本命はアル様だもの、やっぱりメインはアル様にして、他はお友達を目指そう!
そして私は気合いを入れて、アル様のとの会話イベントをこなすことにしたのだけど、アル様が一人で居る時がない!でも、そんな事で諦める訳にはいかないと、なるべく少数の時に話し掛けに行った。
そして暫くたった頃、そろそろもっと親密になるイベントが始まる筈と、木の枝に乗って降りられない猫を探した。
その猫を見つけたらイベント開始だ、それからの私は木をよく見ていた、すると、子猫が木の上に居るのを発見!
慌てて私はアル様を探す。
私は渡り廊下を歩かれているアル様を見つけて、腕にしがみついた。
そして、上目遣いで訴える。
「アル様助けて下さい」
そして、子猫の居る所へアル様をグイグイ引っ張っていく。
そして再度上目遣いでお願いした。
「アル様、あの子を助けてあげて下さい」
アル様は、チラリとハインツ様を見てから私に言った。
「ビッチモルド嬢は、木登りが得意ではなかったのですか?」
えっ?あれ?そんな台詞あったけ?
確か“君は優しい子だね、子猫を助けてあげたら、私と話をしてくれないかな?”って微笑まれるシーンでは?と思ったが、ここは上手く返答しないとと思い、満面の笑みを浮かべてアル様に言った。
「はい!でも、アル様が登ってはいけないと仰られたので、もう登ってませんわ」
アル様は子猫の真下に立ち、跳躍し子猫を掴んで降ろした。
そしてその子猫を私に渡し言った。
「はい、どうぞ、では私達は行く所があるのでこれで失礼しますね」
台詞は違うけど、綺麗に私に微笑んでくれた。
あまりにも麗しくてぼーと見とれていたら、アル様が私を置いて行ってしまった。
慌ててその背に大きな声で呼び止めたが、振り向いてはくれなかった。
まあ、用事があると言っていたし、仕方ないか。
だけど、他の攻略対象者と違い、多少台詞が違うけど、イベントが進んでいる感じがするので、このまま進めよう!
それからも、アル様がお一人の時を狙いたいのだけど、ハインツ様が常にいらっしゃるので、仕方なくお二人の時を狙って突撃して、アル様の婚約者シャーロット様の事を訴える。
私に嫌がらせや、物を隠したり、壊したり、挙げ句階段から突き落とされたと。
そう言う私をアル様は困ったように見ると、“では起こった事を先生に報告しましょう”と言った。
なんでなの?そこは“私がリリィを守るよ”じゃないの?!全然違う!
そうしてアル様との微妙な交流のまま学園一期が終わった。
*****
一期が終わり家に帰ると、養父母から学園から二期は登校禁止の通達が来たとの事で、自宅待機を言われた。
再度貴族のマナー教育を受けて、一学年から来年登校との学園から連絡が来たとの事だった。
私はアル様に、この不当な学園の対応を訴えたくて、王宮に行こうとしたのだけど、養父母から止められ、話を聞きなさいと、私の部屋へと引き戻されて話をされた。
まず、私が王宮へ突然行くのは、とんでもなく失礼な行いだと言われた。
それから何故登校禁止になったのかを、説明されたその内容は、私のアル様とその側近の方々と、他の貴族ご令息の方々との関わり方に問題があると、そして、その行動は、アル様と側近の方達が大目に見ても、許せる範疇では無かったので、アル様直々に、私の行動、言動を纏められた書類を、先生へと提出と進言されたとの事だった。
本当は先生からの処分との事で説明するつもりだったのだが、私が王宮へ行こうとした場合は、アルベルト皇太子殿下からの進言でもあると言うように、ご指示を頂いたとの事だった。
そして私は来年の入学式まで外出禁止との事にだった。
もしそれを破ると、もう私達の娘で居られなくなると。
さめざめと泣かれる養母と、少し悲しい目で私を見る養父を見て、私はそこで漸くこの世界はゲームじゃないんだと思った。
*****
そして、養父母から私は初めてアル様の婚約者の名前を知った、アル様の婚約者はロゼアンヌ・クルーズベルト公爵令嬢だと。
えっ?ロゼアンヌって誰?
シャーロット・バーカル侯爵令嬢じゃないの?!
どうやら私は本当に間違っていたようだ。
私の前世の記憶のゲームの登場人物に似てて、名前も同じで、それでこの世界をゲームと思っての行動、恥ずかしい!これからの社交会に参加するのが!
そういえば最初から、ここはちゃんと生きてる人の世界なんだから、みんなプログラムと違うと理解してれば・・・自業自得だけど、これからはこの世界の常識に従って、私を引き取ってくれた養父母の為に、ちゃんと生きて行こう。
あっ、アル様の婚約者の家名って、クルーズベルト公爵って、あのシール様の親戚?それとも、シール様は居ないの?
アル様達に謝りたいけど、これ迄の私の行動と言動を思うと、こちらから会いに行かない方がいいだろう、来年先生に伝えて頂く事にしよう、会うと恥ずかしすぎて、申し訳なさすぎて、出来れば忘れて欲しい。
だから、逆にこの処分、謹慎と来年一学年からのやり直しさせて頂けるだけ、かなりの温情だろう。
普通なら不敬罪などで、囚われて修道院送りだったり、僻地に爵位も剥奪されて、養父母にも何か罰を与えられたかもしれなかった。
それを思うとぶるりと体が震えた。
私は思わず王宮の方向へ膝をついて、手を合わせお礼をした。
「温情頂きありがとうございます!今後は真っ当になります!」
そう言った私に、養父母が少しほっとしたようだった。
少しネタバレにはなったでしょうかね。
スッキリざまぁは、申し訳ないですが、書けませんでした(;>_<;)
まあ、ロゼさんには実質的な被害が無かったので、実質的な攻撃をしていたら、恐らくリリアンヌさんは・・・ぶるぶる。