アルベルト殿下視点 学園編 完結
ここまで読んで頂きありがとうございます。
アルベルト殿下視点最終話です。
そして始まった二学年一期。
まず休憩時間だが、ビッチモルド男爵令嬢は誰彼と見境なく話し掛けていた。
それで俺は、ああ皆と仲良くしたいだけかと思っていたが、明らかに、その内話し掛ける人物が俺の周りの人達だけに変わった。
*****
その内の一人ハインツは、校舎の廊下の曲がり角で、走ってきたビッチモルド男爵令嬢にぶち当たられたそうだ。
彼女を受け止める形で倒れたハインツに乗っかったまま、彼女はあわあわとしながら謝っていたが、取り敢えず退いてくれと言って立ち上がり埃を落とし、注意をしたそうだ。
“廊下は走ってはいけない”と、真面目なハインツらしい事だ。
まあ、シーラスにも同じ様に関わってきらしいが、あいつは面白おかしく対応したのだろうが、“ビッチモルド男爵令嬢って面白いよね”と珍しく冷笑して言った。
まあ、他の面々にも、素っ気なく対応されて、俺に皺寄せが来たようだ。
**“*
ある日の放課後にハインツと歩いていると、突然ビッチモルド男爵令嬢が現れて、アル様と寄ってきて俺の腕を両手で絡み付いて、助けて下さいと引っ張って行かれた。
あまりに突然の事と腕を捕まれた事で驚いたまま、引っ張られるまま行くと、そこには子猫が木の枝に乗って降りられなくなっていた。
「アル様、あの子を助けてあげて下さい」
そう言ってビッチモルド男爵令嬢が、上目遣いで手を祈るように組んで俺を見てくる。
いやいや君、木登り得意だろ!最初の衝撃の出会いを都合良く忘れているのか?
それに、皇太子である俺にわざわざ言って来るのも変だ。
何で俺がとそんな事を思いつつも、悲しいかな皇太子である俺はきつい事を言えない。
一応ハインツは付いて来て居るが、関わりたく無いのか俺達から少し離れて居る。
助けろよと目で訴えるが、首を横に振られる。
(自分には無理です、すみません)と言ってる様だ。
ハインツに代わりに子猫を救ってやれと言いたいが、ハインツは運動が苦手だからそれも出来ない。
まあ、俺の跳躍なら子猫を掴んで降ろせるだろう。
だが、やはり一言言ってみる。
「ビッチモルド嬢は、木登りが得意ではなかったのですか?」
えっと一瞬怯んだビッチモルド男爵令嬢だが、満面の笑みを浮かべて言う。
「はい!でも、アル様が登ってはいけないと仰られたので、もう登ってませんわ」
だから俺に取りに行けと言うのはどうなんだ?
それにさっきからずっと愛称呼びなのは不快だ。
もうこれ以上一緒に居るのも嫌なので、そうそうに終らす事にした方が良いだろう。
子猫の真下に立ち、跳躍し子猫を掴んで降ろす。
そしてその猫をビッチモルド男爵令嬢に渡し。
「はい、どうぞ、では私達は行く所があるので失礼しますね」
にっこり微笑み、俺の笑みに見惚れている間に素早く後ろを向き立ち去った。
ハインツも心得たもので、俺が笑った瞬間には向きを変えて歩き出していた。
そして後ろから俺を呼ぶ声がしたが、無視してハインツと話す。
「ハインツ、あれは何だ?余程の事がない限り教師に進言しないと言ったが、一期の最後に纏めて報告する事にする、ハインツは俺以外の証言を纏めてくれるか?」
「確かに、今回の事は元庶民だとしても、有り得ませんね、証言の纏めは、承知しました」
そしてその後は、いつもの様に湖に居るロゼに会いに行った。
湖にくると、ロゼが湖を覗きこんで徐に自分の頬を叩き、頑張ると宣言していた。
その可愛らしさに「何を頑張るんだ?」と聞いてやると、ロゼは俺が居ることに驚いたように、どうしてと言った。
思わずそのまま聞き返してしまう。
「なんで疑問系なんだ?俺がここに来るのはいつもの事だろう?」
「いえ、まあ、そうなんですが・・・」
ロゼが言いよどんでいるのが傷付く、まるで俺がもうここには来てはいけない様に感じてしまう。
だが、そう言うロゼの目は、少し寂しそうに感じ取れる。
それならと気をまぎらわせる事にした。
「まあいい、今日は湖を散歩するか?」
そして俺は手をだしたが、ロゼは俺の手を取るのを戸惑っている。
なんでだ?と思いながら強引に、俺からロゼの手を握った。
そしてゆっくりと湖を散歩しながら、ロゼの様子を窺ったがその寂しそうな様子が無くなる事が無かった。
*****
その後もちょくちょく懲りずに俺達に、ビッチモルド男爵令嬢が話し掛けてくる。
俺は常に側近の誰かと居るようにしたが、主にクラスも同じハインツと居ることが多かった、それでも俺に話しかけてくるビッチモルド男爵令嬢だったが、その内容は、ハインツも首を傾げる内容だった。
俺に言ってくるその内容はおかしな事で、バーカル侯爵令嬢がビッチモルド男爵令嬢に嫌がらせをしたとか、物を隠したりするとの事だった。
それを一日一個、俺に報告するのが義務の様に言ってくる・・・・・しまいには階段で突き落とされたと言う。
いやまあ、確かにそれは問題だろうが、しかしそれは俺に言うことか?
俺は何でも屋ではないんだがな。
しかも、バーカル侯爵令嬢が本当にそんな事をするのか?大体何故そんな事をする必要があるんだ?まあ、証拠も無いしな。
ビッチモルド男爵令嬢が言ってるだけだし、取り敢えず差し障りなく、“では起こった出来事を、先生に伝えておきましょう”と言っておいた。
そしたら、ビッチモルド男爵令嬢が首を傾げて、変な顔をしていた。
俺のが首を傾げたくてならんのだがな。
*****
それからそんな月日が進み、クノーティス侯爵令嬢からメッセージが来た。
ロゼが、ビッチモルド男爵令嬢の事を気にしていると、最低限の貴族のマナーを進言した方がいいか、お友達に話を聞きに行った方がいいかと言っていたと言う、クノーティス侯爵令嬢の機転で、ロゼには何もしないようにお願いし、自分が話を聞きに行き、そして先生に進言したとの事だ。
ロゼには様子を見ることになったといい、絶対近寄らないでとお願いして約束したとの事だ。
流石はクノーティス侯爵令嬢、彼女もビッチモルド男爵令嬢に、ロゼを近づけさせるのは危険と思ったのだろう、彼女の対応に一安心した。
*****
そして一期試験の三日前に湖へ行くと、ロゼがお昼寝をしていた。
そっとロゼの頬を撫でてみる。
するとロゼがぼんやりと目を開けて、俺を見てふわりと笑った。
そしてロゼを撫でていた俺の手を取り、両手で大事そうに抱き締めた。
思わず微笑ましくロゼを見つめて、寝ていていいぞと言うと、ロゼは返事をして素直に寝てしまった。
この良い雰囲気の間にも、刃を潰した小刀の攻撃を受けていた俺は、片手で掴んでは木の方へ投げ返していたが、ロゼが寝たので抱き締められていた手を、泣く泣くそっと抜き、両手で対応し、腹いせに投げてきた場所へ全て投げ返して、もう攻撃が来ないのを確認して、椅子に座り本を読んで、ロゼが起きるのを待つことにした。
数十分してロゼが目を覚ました様だ。
ロゼが起き上がり、俺に声をかけてきた。
先程の事を思い出して俺は少し照れてしまう。
ロゼがそんな俺を見て、熱があるのかと検討違いな事を言ってくる。
まあ、それは置いといて、そう言えばと夏休暇の泊まり込みの実地訓練のグループの提出をしたと言ったら、ロゼは“えっ”と何故か驚いていた。
まさか、俺ではない誰かと出したのか?と思い、機嫌悪く問い返した。
すると、自分でいいのかと聞いてきたロゼ。
何でロゼ以外と誰と組むのかと聞いてやる。
そして俺は椅子から立ち上がり、ロゼの居る方へ歩いていき、両手でロゼを囲む様にベンチの背に手をついた。
そしてロゼは本当は、俺とは一緒に居たくないのか、さっきのは誰かと間違えたのかと思い、確認する為にじっとロゼの顔を間近に見ながら聞いてみた。
「俺では不満なのか?誰か他に気になる奴でもいるのか?」
思いの外低い声で、ぐっと耐える様に言ってしまう。
俺の表情が怖かったのか、ロゼは慌てて首を横に振り居ないといった。
本当か確認するのに、更にロゼの顔を覗きこみ確認する。
ロゼが顔を赤くして居ないといい、顔を背けて俯いてしまう。
嘘は言ってない様だと確認し、最近気になっていた事を聞いてみる。
「それならいいが、ロゼ最近教室で、俺を避けてないか?」
自分で言ってて悲しくなってきた。
最近のロゼは教室では、俺の方を全く見ないのだ。
俺の問いかけに、そろそろと俺を伺う様に見上げるロゼは、俺の頬に手を添えて俺に問いかける、なぜそんな悲しそうな顔をしていのですかと。
俺の頬に添えられたロゼの手に、俺の手を重て、ロゼにわからないのか?と問いかけた。
するとロゼは視線をさ迷わせて、言い淀み一旦言葉を切り、決意したように叫んだ。
「アル様はリリアンヌ様を好いておられるのでしょう!」
言われた事に、暫し意味がわからなかった。
多分、いや、絶対、凄く間抜けな表情をしているだろう。
そしてロゼを見るとぎゅっ目を瞑って俯いたロゼが、そろそろと俺を見上げアル様?と、問い掛けて来た。
俺は思わず大きなため息を吐いて、ロゼの手を離すと、ロゼも俺からは手を離して俯いた所で、両手でロゼの顔を包み込み、俺と目を合わせて言い聞かせる様に言った。
「いいか、ビッチモルド嬢の事は何とも思ってない、ていうか、そんな風に見えてたのか!?俺は大体ロゼ以外の女は眼中に無い!」
そう言った俺をビックリしたように「え?」と言ったロゼ。
全く考えもして無いような反応にがっくりくる。
「いや、判っていた、ロゼが俺の事を、そんな風に見ない様にしていた事は、元はと言えば俺が悪いのだが・・・」
そこで、ヒュっと刃を潰した小刀が飛んで来る。
何時もの様に俺は、片手で掴んで投げ返す、そして再度ロゼの顔を包み込む。
ロゼの顔色が悪くなった。
俺が刺客に狙われたと思っているのだろう。
俺に隠れるように言う。
しかし俺は落ち着いてロゼに教える。
「いや、今のは大丈夫だロゼ、刺客じゃない、警告だ」
「警告?!なら、早く先生に言わないと!」
「いや、俺がロゼから手を離せば、もう飛んで来ない」
俺の言った言葉が理解出来ないと混乱しているロゼ。
確かに俺に攻撃をしてくるなんておかしいよな。
そっとロゼの顔から手を離して、隣に座る。
ロゼは色々考えてどうにもわからなくて、相当混乱したのだろうロゼが生け贄とか、重要な役割があるのか俺に聞いてきた。
混乱しているロゼに、取り敢えずそれは否定して、ロゼに護衛が付いていると言った。
でも言っても良かったのか?と思ったがシモン殿に口止めはされてなかったから、良い事にしよう。
ロゼが首を傾げて言う。
「でも、私はアル様より重要ではありませんよ」
「俺には、ロゼは俺よりも重要で大切だ」
俺の言葉に顔を赤くしたロゼは、俺に確認する様に言った。
「それは、家族としてですか?」
それを否定して、俺は思いきって聞いてみる事にした。
「違う、ロゼは俺の事をどう思ってる?」
「えっ?!いえ、あの」
恥ずかしそうに動揺するロゼをじっと見つめて言う。
「言ってくれ、でないと俺からは言えない」
ロゼは決意したように言った。
「す す 好きですよ、婚約辞退の日が来なければいいと思うほどに」
思わずほっとして俺も想いを伝える。
「そうか、良かった、俺は最初からロゼが好きだった」
「え?でも、最初婚約者とは認めないと」
「ああ、あれこそ俺の人生最大の失態だった。その後庭園をエスコートしただろ、その時にはもうきっとロゼの事が好きだったんだ」
驚いたようにそうだったのですかとロゼが言う。
そうして、ふわりと嬉しそうに微笑み、俺に言った。
「私はアル様の事を、好きでいて良いのですね」
そう言って俺をを見上げたロゼは、幸せそうな表情で、それが物凄く可愛くて、我慢出来なくなり、抱き締めてしまう。
「ロゼ、そんな可愛い顔をされると、困るけど嬉しい」
そして再度四方八方から、刃を潰した小刀が飛んで来る。
俺は切り札の物理魔法反射の魔法を発動させて、小刀を無視してロゼに微笑む。
そしてロゼを抱き締めたまま好きだと、頭に頬擦りしてしまう。
ロゼが俺が制約を受けていたのですかと聞いてきた。
それに応えるついでに、少し体を離し先程の寝惚けてたロゼの事も言う事にした。
「そうだな、だが、それは俺がバカだったから、仕方ない、これである程度は、邪魔が入らない、ちょっと前にも邪魔が入って仕方なく、手を離したんだが」
そう言ってロゼの手を取り持ち上げる。
そうすると、ロゼが顔を赤らめて聞いてきた。
「えっ?先程のでは無くてですか?いつ?」
「ロゼ、寝惚けてたもんな、とても可愛いかった、俺の手を大事そうに抱き締めてくれた時には、嬉しかったな、だから思いきって、俺をどう思っているかを聞くことが出来た」
そう言ってロゼの手を、俺の頰に当てて、すり寄せる。
そしてロゼは思い出したのだろう顔を真っ赤にして叫んだ。
「い いっやー?!あ あれ夢では、なかったのですか?!」
凄く恥ずかしいのだろう、目をあちらこちらにさ迷わせて、顔が今以上に赤くなっていく。
「これまでも、俺からは好きだと言えないから、態度で示したつもりなんだが、ロゼは斜め上の返しだったからな、だが、俺の前では無警戒に眠るし、無自覚に煽ってくれるからな、かなり我慢したんだぞ」
あわわと狼狽えて、顔を赤くするロゼ。
そんな可愛らしいロゼの顔を、再度両手で優しく包み込んで見つめると、恥ずかしいのか、そっと目を伏せた。
ああ本当に馬鹿だなロゼは、俺の目の前で目を瞑るなんて、だが、ロゼも俺の事が好きだからいいよなと、その愛しい唇に俺の唇をそっと重ねる。
ロゼの手が俺の手にそっと重ねられる。
ああやっと俺の想いがロゼに通じたと思った瞬間だった。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
取り敢えず、楽しく読んで頂けたなら幸いです。
相変わらずタイトル考えるのがセンス無くて、簡単にしちゃいました。
いつもいいのか?これ?って思いながらも、思いきって投稿してました。
ブックマークやメッセージ、読んで頂いた皆様に、勇気を頂きました。
ともあれ最後までお付き合い下さり、再度お礼申し上げます。




