表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/22

アルベルト殿下視点 学園編3

 結局夏休暇の最後の一週間は、ロゼに会えなかった。

 ロゼからお詫びの手紙が来たから、それに返事の手紙で気にしてないからゆっくりと休養を取ってくれと労った。

 本当は会いに行きたかったし、会いに来て欲しかったが。


 シモン殿に一週間の面会謝絶を食らったのは、まあ自業自得で仕方なかったが、この一週間は俺のモチベーションはただ下がりだった。


 そんなどんよりといつもと違う俺に、父王もびっくりして、わざわざ俺の部屋へとやって来た。


「アルベルト、どうしたんだ?そのなんと言うか不幸を背負ってますっていう顔は」


「ええまあ、そうですね」

「シモンから聞いてはいたが、最初にロゼアンヌ嬢と会う前とえらい変わったな、まあ、ロゼアンヌ嬢限定のようだが、私としては嬉しい限りだが」


「今もロゼ以外は、皆同じと思ってますよ、ああでもロゼの親友のクノーティス侯爵令嬢は違いますね、ロゼの様に興味があるわけではありませんが、彼女はロゼの事を第一に考えてくれてますからね、はあ」


「お前は・・・まあ、しかし今回の事が堪えたのなら、少しは自重する事だな」


 思わず父上をジト目で見てしまう。


「しかし父上、俺は婚約者としての節度を守っていると思うのですがね」


「お前はそうでも、ロゼアンヌ嬢は仮の婚約者だと思っているのだろう、ならば公の場以外で、婚約者として触れるのはなぁ、シモンの言う事も、最もだと思ってしまうな、まあ、ロゼアンヌ嬢に思って貰えるように、おまえが頑張るしかないな」

 そして父上に肩を叩かれた。


「言われずとも、必ずロゼを振り向かせて見せますよ」

 そして父上は俺の部屋を出て行かれた。


 そしてその一週間は、気を紛らせるように、騎士団に混じって鍛練をひたすらして過ごした。


 *****


 そして待ちに待った学園二期が始まった。

 漸くロゼに会えると、クルーズベルト公爵邸にやって来た。


 だが最初にロゼの両親にご挨拶だ。

 俺を見たシモン殿は、ちょっと驚いた表情をして、少し可哀想な子を見るように苦笑いをして言った。


「アルベルト殿下、ロゼアンヌの為に迎えに来て頂きありがとうございます。ですがなんと言いますか、これからも私の対応は変わりませんが頑張って下さい」


 俺の雰囲気があまりに酷かったのか、シモン殿に慰められた気がする。


 マリーローズ夫人は、いつもと変わらずにこやかに挨拶を交わした。


 そしてロゼが玄関ホールへ姿を現した。


 一週間ぶりのロゼに、漸く少し活力が戻って来る気がする。

 ロゼに久しぶりと挨拶をして、エスコートする為に手を差し出す。


 俺の手に乗せられたロゼの手を、嬉しくてぎゅと握り微笑んで行こうかと言って馬車へと移動した。


 馬車に乗ってからもロゼの手を離しがたく、車窓を眺めながら手を離さずに居た。


 俺の様子がおかしい事に気が付いたのだろう、ロゼが俺に心配そうに、何かありましたか?元気が無いように見えますと話かけてきた。


 あったはあったが、それがロゼに会えなくて凹んで居るとは言いづらく、ちょっと情けないなと思いながらロゼの方へ振り返る。


 するとロゼが少し困った表情をして、少し頭を下げて俺に王宮で倒れた事を謝った。


 違うロゼは悪くないと思い、ロゼが元気になってくれたらいいと言いながら、ロゼの手の甲にキスをして見つめ俺の想いを告げる。


 一週間会えなかった事が寂しいと。

 そう言った俺を、ロゼは驚いた様に目を見開き固まった。


 暫く黙ってロゼの言葉を待つことにした。


 暫くすると、ロゼがにっこりと微笑んだ。

 この笑みは・・・俺は知っている。

 ロゼが俺に話し掛けた。

「そうですね、殿下と私は幼なじみ、まるで兄弟の様に居ましたものね、私も寂しかったですよ」と満面の笑みで俺を見る。


 やっぱり!!そう来たか!!握ったロゼの手に額を付ける様にがっくりとした俺。

「はは、わかっていたさ、この位で通じていたなら・・・、だがこの位では俺は挫けはしないさ」


 まだこれからさと顔を上げて、ロゼに微笑み言った。

「そうか、ロゼも寂しいと思ってくれたなら、少しは進歩したのだろう」

 そう言ったらロゼがわかってないようで、可愛らしく少し首を傾げた事に、俺は可愛いと思いながらも、少し悲しくなってしまう。

 そして気を取り直して、互いに一週間の出来事を話して学園に向かった。


 *****


 二期が始まり、休みの日は隔週でロゼと王宮で模擬戦をするのでなかなかの忙しさだが、空いた休みの日に予てよりロゼが言っていた、ロゼの兄上と婚約者殿とのお茶会になった。


 シール殿とは何回か会った事はある、父上のシモン殿に似ていると思う。


 お茶をして、話をして庭園のを散策する。

 ロゼは、シール殿の婚約者エヴァ嬢が大好きな様だ。

 姉妹の様に楽しそうに話している。


 女性二人が前を歩き、俺達男二人が後ろを付いていく形だ。

 シール殿が俺に話し掛けてきた。


「アルベルト殿下の事は父上にお聞きしてますよ、ロゼは私達家族にとってはとても大切な子ですから、父上もロゼの事になると大人げなくなるのですよ。

 殿下は知ってますか?ロゼが五歳の時に死にかけた事を、医師にはもう助からないと言われた次の日に、奇跡的にロゼは助かったのです。

 だから、父上は特にロゼには幸せになって欲しくて、殿下に厳しくあたるのかもしれません、貴方は父上の期待に応える事は出来るのでしょうか?」


 そうだったのか、ロゼが居なかったら俺は、今のロゼに向ける感情を持つことは無かったかも知れない。


 クルーズベルト一家がロゼの事を、大事に思っていることはわかっているが、俺はそれでもロゼから離れる事は考えられないし、俺だって負けない位大事に思っている。


「シール殿、私もロゼには幸せになって欲しいですよ、ですがその役目は誰にも譲る気はありません」


 シール殿が驚いた様に俺を見て、そして柔らかく微笑んだ。


 *****


 それからの生活は平穏に進んでいる。


 休みの日の隔週の王宮での模擬戦も、ロゼとの連携も出来て順調だ。


 そうして、十一月俺達ふたりの誕生月になった頃からか、ロゼの様子が少しおかしい。


 時折、悩んでいる様な怖がっているような寂しそうな感じだ。


 そして二期も終わり、自宅へと帰る日の前日、俺はいつもの湖の東屋へと向かった。


 いつものようにロゼが寝ていた。


 だが、いつもと違いロゼの頬が濡れている。

 俺はロゼの前で膝を付き、ロゼの髪を後ろへと流し再度ロゼを見る。

 閉じられた眼から涙が流れ落ちている。


 怖い夢でも見てるのだろうか?ロゼの涙を拭ったらパチリとロゼが目を開けた。


 俺を見て驚いているが、なぜ?と問うように見ている気がする。

 しかし俺はそれを無視して、ロゼの頬を撫でて怖い夢でも見たのかと問いかけ、俺の額をロゼの額にくっ付ける。

 そして続けて、どんな夢を見たと問いかけ、俺がその憂いを晴らしてやると言ってやる。

 しかしロゼは、ぎこちなく笑い俺に大丈夫だと言った。

 俺が泣いてるぞと指摘しても、あれっという感じで俺に謝り、夢ですから、覚えてないから大丈夫と微笑んだ。


 きっとロゼは俺に心配掛けたくなくて、いつものように笑って言えたと思っているのだろうが、俺には無理に笑ってる事はわかってる。


 だが、ここで追及してもロゼは言わないだろうし、追い詰める事はしたくないので、それならいいとロゼの隣に座り、明日からの予定と冬休暇の予定を話して、ロゼの頭を強めに撫でてやる。

 少しは俺を頼ればいいのにと。


 そうしたらロゼがびっくりしたように、自分は子供じゃないと言い、ロゼは憤慨した。


 悲しんでるより怒ってる方がまだいい。

 俺は二期頑張った褒美だと言ってふふっとロゼに笑った。


 *****


 そして翌日クルーズベルト邸へとロゼを送って、玄関ホールでロゼと別れ俺はシモン殿に会いに行く。


 応接室でシモン殿挨拶を交わし、年末年始の舞踏会の参加のお願いをして、俺は真面目にシモン殿にロゼの事を聞いてみた。


「クルーズベルト公爵、お伺いしたいのですが、学園の二期に入ってから、ロゼアンヌ嬢が何かに怯えて怖がっている理由を、ご存知でしょうか?」


「それは殿下との婚約が破棄されないからでは?」


「そうでは無いと思います、それに私はロゼアンヌ嬢が本気で私以外の誰かを好きになったのであれば、彼女を自由にする気は有るのですよ、ですが、その者が彼女を幸せに出来るのか見極めてからですが、そうは言ってもロゼアンヌ嬢を幸せにするのを、誰にも譲る気はありませんが」


 シモン殿は俺の言葉を聞いて、俺をじっと見ていた。


 暫くして「そうですか」と答えて、紅茶を一口飲んで微笑ましく俺を見て、にっこり笑みを浮かべ話し出した。


「では、私もわかりませんね、それはそれとして、三期から、殿下への警告の武器が刃を潰した小刀に変わりますので頑張ってくださいね」


 それはレベルアップするのか!


 そうしてシモン殿に挨拶して、ロゼに挨拶して帰った。


 *****


 年末年始が終わり三期が始まった。

 あっという間に月日は過ぎて三期の終わり頃、先生が俺に話が有るとの事なので、職員室へ赴いた。

 そして職員室の応接室へ案内されて、話を聞いた。


「アルベルト殿下、わざわざこちらへ来て頂きありがとうございます。二学年に上がられるにあたり、殿下にお願いがございます」

「先生、お気になさらずに、で、お願いとは?」


「はい、二学年から編入してくる生徒がいるのですが、その生徒は頭は良いので、試験の結果二学年に編入してもやっていける学力があるのですが。

 何分庶民からビッチモルド男爵家の養女になられて、男爵家で一通りの貴族教育は受けているとの事なので、大丈夫だとおもうのですが、殿下に対して至らぬ対応をしてしまう可能性があるのです。

 殿下には一期の間は、何卒様子見の猶予を頂きたいと思いまして、勿論、その間の目に余る行為が御座いましたら、誠に殿下に申し訳ないのですがご報告頂けましたら、こちらで判断の上対対処したいと思うのです」


「先生わかりましたよ、しかし私も学園では一生徒ですので、余程の事がない限りは先生に進言する事は無いでしょう」


「ありがとうございます。アルベルト殿下、こんな不躾なお願いを聞いて頂き助かります」


 ではと職員室を出た。


 *****


 そして始まった二学年始業式翌日、先生が言っていた生徒が俺のクラスに編入してきた。


 名前はリリアンヌ・ビッチモルド男爵令嬢。

 まあ、普通の令嬢だ、いつもの如く興味も無い。


 しかし少しロゼが、ビッチモルド男爵令嬢を気にしているようだった。


 そしてその日は午前で終わり、午後は休みだった。

 ロゼは今日はクノーティス侯爵令嬢とお茶会をするとの事だったので、俺は完全にフリーだった。

 特にやることもなかったので、一人寮近くの庭園の木の下のベンチで本を読むことにした。


 そして暫く本を読み進めていた時、何故か殺気を感じてベンチから飛び退くと、何かが落ちてきた。

 落ちて来たのを見ると、ビッチモルド男爵令嬢だった。

 あまりの出来事にぽかんとしてしまう、こいつ木に登って居たのか?普通の令嬢は木になんか登らない。


 こいつはしかも男子寮の近くで、何を思って木になんか登ったんだ?と思わず蔑みの目で見てしまいそうになるが、俺は王子だと思いだし、皇太子モードで取り敢えず対応する事にした。


「大丈夫ですか、お嬢さん、私はアルベルト・ナインスバルグと言います」

「えっはい大丈夫です、私は今日からアル様のクラスに入った、リリアンヌです!」

 何故に愛称呼びだ?ほぼほぼ初対面だよな?

 確か一通りの貴族教育は受けたと言ってなかったか?全然ダメダメじゃないか。

 しかもファーストネームしか名を名乗らないのはなんでだ?

 取り敢えず知ってはいるが、形式上家名を聞くことにする。


「大丈夫なら、良かったですね、失礼ですが家名を教えて頂けますか?」

 何故かビッチモルド男爵令嬢が驚いた表情をするが、こっちのが驚きだ。

 ぎこちなくビッチモルド男爵令嬢は名乗り直す。

「リリアンヌ・ビッチモルドです、アル様宜しくお願いします」

 また勝手に愛称呼びか、俺は許可した覚えはないんだがな、うーむ元庶民だからなのか?

 まあ、先生から一期は猶予をと、お願いされていたのでスルーしよう。

 だが一応軽く注意だけしておこう、俺だから良かったが、例えばハインツなんかは、おもいっきり避けきれず下敷きだった筈だ。


「ビッチモルド嬢は、何故木に?これからは危ないから登らない方がいいですよ、まあ、怪我も無いようですし私はこれで失礼しますね」

 そして綺麗に一礼して自室へと戻る事にした。


 帰る俺の背に、声を掛けるビッチモルド男爵令嬢だったが無視して立ち去った。


 全くなんだあの令嬢はと思い返すと、殺気と思っていた感覚は、昔よく感じてた肉食女子のそれだったと思い出す。


 ロゼが婚約者になってからはダイレクトにその視線を受ける事が無くなったので、思い出すのに時間がかかった。


 まさかと思うが、庶民から男爵令嬢になれて貴族入りで浮かれて、皇太子妃を狙っているのか?

 あの様子だと、俺がこの国の皇太子だとはわかってそうだしな。

 いやいやと頭を振って、冷笑をしてしまう。

 冗談だろっと。


 しかし、本当に身の程知らずにそんな事を思っているのなら、ロゼが俺の婚約者だと知ったら、ロゼが嫌がらせを受ける可能性があるから、気を付けないとな。


 クノーティス侯爵令嬢に一言お願いした方がいいか。


 俺はメッセージを書いて、俺の影護衛に届けるように頼んだ。


 もしかしたらビッチモルド男爵令嬢が、身の程知らずにロゼに何かするかも知れないから、俺が一緒に居ない時は守ってくれないかとしたためた。


 すぐに影護衛が、クノーティス侯爵令嬢の返事を持ってきた。


 当たり前です、お任せくださいと書かれていた、流石はクノーティス侯爵令嬢だ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ