アルベルト殿下視点 学園編 2
そう言えばと、ロゼに聞いてみる。
ロゼは俺を意識していない。
それに俺がいづれ他の令嬢を婚約者にすると思っている。
それならもしかしたら、誰か思い人が居るかもしれない。
俺は誰も居ませんようにと思いながら聞いた。
ロゼは、にっこり微笑み俺に誰も居ないと俺に迷惑を掛けないと、立派に役目を果たすと言いきった。
それなら変な虫がロゼに寄らない様にしないとな、そして、絶対にロゼに俺を意識してもらう。
俺が改めて決意をしていると、ロゼが元気に言った。
「頑張りましょうね!アルベルト殿下!」
ロゼは一体何を頑張るんだ?と思いながら、俺も決意を述べた。
「あ?まあそうだな、頑張るよ」
そしてお茶会は終わった。
*****
そして夜は舞踏会だ。
俺はロゼの寮へと迎えにやって来た。
今回もロゼにはドレスと装飾品を贈った。
そして淡い青色のドレスと淡い黄色の宝石の装飾品を身に付けたロゼがやって来た。
俺にドレスの礼を言う。
俺は良く似合ってる綺麗だと思ったままいい、微笑んだ。
珍しくロゼが照れてるようだ。
そして俺はロゼに手を差し出しすと、俺の手にロゼが手を乗せたので、俺の腕に絡めて舞踏会会場へエスコートして移動する。
会場へと移動の途中、ロゼの様子が少しおかしい事に気がついた。
ぼーと何か考えてる様で、俺はそっと渡り廊下の脇に逸れて建物の影へと誘導したが、ロゼは気が付いてないようだ。
そこで立ち止まり壁際へロゼを立たせて声を掛けた。
「ロゼ?どうしたんだ?」
はっと気が付いた様にロゼが答える。
「えっ?いえ、何も」
漸く今の状況がわかった様なロゼの頬に手を添えて、じっと見つめるとロゼが顔を逸らして俯いた。
ロゼの頬が暖かい、そして結い上げた髪型なので、耳が見えて赤くなってるのがわかる。
そして少し震えながら俯いたまま、会場へ向かわないとと言う。
初めて見るロゼの雰囲気に俺はじっと見てしまう。
暫く何も答えずにいると、ロゼがそっと伺うように俺を見る。
可愛い・・・。
そしてその間は矢が、俺の背中に結構撃ち込まれているが気にしない。
そしてロゼの頬に手を置いたまま話す。
「ロゼ、いつもと違うな、どうしたんだ?」
「い、いえどうもしないですよ」
「顔が赤い」
にっこり微笑み掛けるとロゼが俯き話す。
俺がおかしいと言う、そして話しを続けてると、ロゼが恥ずかしいと言葉を詰まらせながら言った。
そして、俺の事を意識しすぎた気を付けると言った。
俺は漸く意識してもらえた事が嬉しくて、ロゼの頬を撫でて微笑んだら、ロゼが固まった。
俺は上機嫌で、行くぞと声を掛けながら、ロゼの手を取り俺の腕に絡めて、混乱したロゼと舞踏会会場へとむかった。
少し俺の事を意識した事が嬉しかった。
*****
そして翌日は午前は校内の案内で終わり、午後からは自由時間だ。
昼食をロゼと取り、その時にロゼは王宮の庭園の様な、休憩場所を探すと言うので、俺も同行する事にした。
先ずは地図で場所に目星を付ける。
狙った所は職員室の近くの庭園。
まず一般の生徒は近づきたく無いであろう場所だ。
そしてその場所へと一緒に行く。
庭園の散策路をゆっくり歩きながら、探していると、散策路からわかりにくい飛び石の道が少し草に埋もれて在った。
その道をロゼの手を引いて俺が先に進み歩いていく。
道を抜けた先には湖があり拓けていた、そして湖を眺める様に東屋もあった。
このわかりにくい道では、東屋も手入れはされてないかと思うが、覗いて見るとベンチには綺麗なクッションが置かれていた。
王宮に在るのと同じだ。
誰かがきちんと手入れがされている。
ロゼも気に入ったようだ。
ベンチに座り話をしたり、散策したりして過ごしまた明日来てみて様子を見ることにした。
*****
一期は平穏に過ごた。
日常は、お昼休みはロゼと一緒に王族専用の部屋で一緒に食事をするが、昼以外は別々に過ごしていたが、放課後の一、二時間は湖の東屋でほぼ毎日会っていた。
そんな学園生活にも慣れた頃、七月に初めての一期の試験があった。
一応辛うじて俺が学年一位を取ったが、次点のハインツとは僅差で油断は出来ない。
驚いたのはロゼが三位だった事だ。
まあ、ロゼは真面目に学園でも授業を受けて、休みの日には一緒に復習していたが、まさかここまで上位に入るとは思ってなかった。
試験の順位発表がありそれを見に行くとロゼが、その順位を見てほっとしているのが見えた。
そんなロゼを恨みがましく見るバーカル嬢が居たが、自分の頭を恨めと思う、しかしそんな視線にもロゼはやれやれといった感じて相手にしてなかったので、俺も知らない振りをしてロゼの元へと歩いていく。
ロゼは綺麗に一礼して俺に祝いの言葉を言った。
俺からも労いの言葉を述べて、一先ず立ち去る事にした。
*****
それから暫くして湖の東屋へと向かうと、すでにロゼが居た。
そして再度一期の労いをして、明日の事を話す。
ロゼを自宅へ送り届けて、ロゼの父上に挨拶すると俺が言うと、ロゼが不思議そうに見るので、建前の理由を延べておく。
夏休暇中の舞踏会にロゼと出席するのにお願いすると、それを聞いたロゼは、驚いた表情をして嬉しそうに微笑んだ。
うっ嘘では無いが、それがメインでは無い事にちょっと後ろめたい。
そして俺に礼を言い、頑張ると言うが、ロゼが頑張る理由は恐らくだが、俺に意中の誰かが出来たら、手伝うと言う意味なのだろう、良い笑顔でそんな事を言われると、ちょっと傷付くぞ。
まあ今は仕方ないとやり過ごし、ロゼを寮へと送り明日に備える事にした。
*****
翌日ロゼの実家へと行った俺は、玄関ホールでロゼと別れ、シモン殿の居る応接室へメイドに案内してもらう。
メイドが俺が来たことを告げ扉を開き、そして中に入った。
シモン殿が立ち上がり、笑顔で俺を出迎えてくれるが・・・握手した手に力が入って痛い。
当然俺も負けじと、握り返し笑顔で挨拶する。
「クルーズベルト公爵、お元気そうでなりよりです」
「アルベルト殿下もお元気そうですね」
そして互いに嘘っぽい笑みを浮かべ同時に手を離す。
そしてソファーに座る様に進められて、腰を落ち着ける。
この部屋には今、俺とシモン殿と執事がいるだけだ。
シモン殿も俺の向かいに座り、紅茶が用意された。
先ずは建前のお願いをする事にしよう。
「クルーズベルト公爵、夏休暇の間舞踏会にロゼアンヌ嬢と参加致しますので、宜しくお願い致します、こちらがその日程です、後夏休暇の間に、ロゼアンヌ嬢に王宮へ来ていただく日程です」
日程表を手渡し、一口紅茶に手を付ける。
「アルベルト殿下、夏休暇にも舞踏会にロゼアンヌと参加されるのであれば、婚約者を探すことが出来ないのでは?」
「ははは、クルーズベルト公爵は面白い事を仰る、私はすでに生涯共に過ごしたいと、ロゼアンヌ嬢と婚約しているのですよ、他の令嬢など考えてもいませんよ」
「殿下のその思いは娘に届いてるのでしょうかね?」
にやりと笑うシモン殿。
「少しずつ届いていると、思いますが」
「殿下、お約束は守られていないようですね」
「まあ警告で済むのであれば、甘んじて受ける価値はありますからね、しかし婚約者として節度は守っていると思いますが、そしてもう一つの約束は守ってますよ」
「それはそのようですね、それは殿下が本気で娘を思ってくれているのだろうとは思いますが、それでも引続き過度の接触には警告攻撃は継続しますよ」
「過度でしょうか?まあいいでしょう、それは継続して頂いていいですよ、私も鍛練になりますしね」
互いにふふふと冷笑を浮かべる俺達。
ではとロゼに挨拶してから帰る旨を伝えて失礼した。
シモン殿との戦いを終えて、ロゼの部屋へと案内してもらう。
当然部屋には入れないので、戸口で帰る事を伝えてまた王城で会おうと別れの挨拶をしてかえった。
*****
夏休暇の間もロゼを王城へと来るのだが、流石に前みたいに毎日とはいかず、大体週三日位だった。
その内一日は、ロゼと二人でするダンスレッスンが、一番長い時間ロゼと居られる癒しの日だった、その日は二人で庭園を散歩して、東屋で紅茶を飲んで話をして馬車まで送って行く。
その他の日は、必ずロゼは庭園の東屋へ行くので、当然俺もそこへ行く。
護身術の訓練をした日は疲れたのだろう、ロゼはぐっすり眠っている。
そんな時は俺は隣に腰を降ろし、ロゼの頭を撫でながら微笑ましく見つめてしまう。
そんないい感じのときでも警告の攻撃してくるが、今は見ることなく片手で全部掴む事が出来るようになった。
そして段々攻撃のスピードが早くなってきた気がする。
そして夏休暇も終わる頃、いつもの様に庭園の東屋へ来たら、ロゼが気持ち良さそうに寝ていた。
ロゼの前に片ひざを付いて頭を撫でて、髪を透き、顔に掛かる髪を透きながら耳の後ろへと流してやる。
当然もう片方の手で、攻撃してくる矢を全部掴んでは投げ返す。
そしてもう一度髪を撫でると、ロゼの表情が柔らかく笑んだ気がする。
あまりに可愛くて、つい柔らかそうな頬にキスをして、ロゼの顔を見つめる。
するとロゼがパチと目を開けた。
目の前に俺が居て驚いているのか、頬が紅くなってくる。
その頬を撫でてやり、どうした?と聞いてやる。
暫く動揺したのか動かないロゼ。
落ち着いたのか、何事も無かったかの様に起き上がるので、撫でていた手を離す。
そして落ち着いて挨拶を交わし、俺はロゼの隣に座る。
するとロゼが少し俺から少し離れて座り直したので、俺はその距離を詰める。
ロゼがそう言えばと話し出し、話の切れ目で俺に向き直り俺が近い事に驚いたのだろう変な間が出来たので、話を促す。
話を聞くと、ロゼの兄上と婚約者殿でお茶会をしたいとの事だったので、わかったと答え、そう言えばと今度は俺からロゼにお願いする。
二学年になると実戦訓練が始まる、俺は他生徒の見本にならないといけないし、俺が怪我なんてしてたら、先生や他の生徒が自責の念を持ってしまう、そんなことにならないように一学年の二期に、隔週で王宮で実戦訓練をする、本当は俺だけなのだが、ロゼは魔法の能力も高いし、護身術も頑張ってこなしているので、一緒に受けると講師に言ったのだ。
それをロゼにお願いした。
そしてロゼの頬を撫でながらじっと見つめると、ロゼは目を逸らして俯いて、声を震わせながら俺と頑張ると言ってくれた。
その可愛らしい動揺した姿にそっと頬にキスをしてしまう。
ロゼが驚いて俺の顔を見るので、いとおしく見てると、目を落ち着きなくさ迷わせて顔を赤くしたと思ったら、くたりと倒れこんできた。
慌ててロゼに声を掛けたが、くたりとして意識が無い。
慌てて抱き上げて医務室へと運び込み、医師に見てもらうと、気を失ってるだけで、呼吸も脈も問題ないとの事で、ゆっくりと休ませるとよいでしょうと言われた。
仕方なく、俺が抱いたまま馬車へ乗り込みロゼを家まで運ぶことにした。
ロゼの部屋へと運んでベットに寝かせて、側に座る。
少し浮かれてやり過ぎたようだ。
せめてロゼが目を覚ますまで居たいが、帰って来たシモン殿に、遅くまで此方に居られますと、アーサー王が心配しますよと言われ仕方なく帰る事にしたが、シモン殿に見送られる時に、始業式まで、ロゼは休養させますので、一週間の面会謝絶ですと言われた。
仕方なく俺は了承した。
「クルーズベルト公爵、ロゼアンヌ嬢の事宜しくお願い致します。
それでは始業式の日、ロゼアンヌ嬢を迎えに伺います」
そして俺は王宮へと帰った。