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アルベルト殿下視点 学園編1

 月日は流れ、俺とロゼは学園へと入学する事になった。


 入学式の前日、ロゼは王宮の講師の方々へ挨拶回りに来ていた。

 挨拶が終わり、俺に会いに来ていた。

 今日は俺の部屋のソファに並んで座り、お茶をしながら、明日からの学園の話をしていたが、俺がロゼは婚約者だから、俺が明日迎えに行ってから一緒に登校するぞと言うと、ロゼが心配そうに話し掛けてきた。


「そうされますと、学園中に私が婚約者だと知られてしまいますよ、無理に私をエスコートして頂かなくてもいいのですよ」

 

 わかっていたさ、ロゼは超が付くほど鈍感で、真面目で素直なのは、だがしかし、まだわからないか?とちょっと苛ついて強めに言った。

「俺を常識の無い男にさせる気か」

 そして思わず鼻で笑いながら、ロゼを見て事実を言ってやる。

「何を今さら、散々舞踏会を二人で出てるんだ、上流貴族で知らぬ者など居ないぞ」

 ロゼが考えるように返事をする。

「いや、まあ、はい」

 その煮え切らなさにイラッとして、ロゼを抱き寄せた。

 ビックリ顔のロゼにしてやったりと笑みを浮かべ、少し低い声で言ってやる。

「俺では不満と言うのか?ロゼ」

 ロゼが焦ったように慌てて首を横に振り言った。

「滅相もございません!?宜しくお願い致します!!」

 その答えに、そっとロゼを解放してやり、ほっと微笑んで優しく言った。

「入学式の日、迎えに行く」

 そう言った俺の顔を不思議そうに見るロゼが、面白かった。


 *****


 そして入学式当日、クルーズベルト公爵邸に到着して、玄関ホールでロゼを待つ間、ロゼの両親に挨拶をした。


 そしてロゼの父上のシモン殿が俺に話し掛けてきた。

「アルベルト殿下、我が娘ロゼアンヌの為にありがとうございます、ですが良かったのでしょうか?後々殿下が困ることになりませんか?」

 爽やかに俺に言うシモン殿。


 俺も負けずに微笑み返し話す。

「クルーズベルト公爵、ロゼアンヌ嬢を迎えにこれる事は私には栄誉な事です、ですので後々困ることが無い様に、是非ともロゼアンヌ嬢と一緒に登校したいのですよ」

 俺の返しに、はははと笑うシモン殿。

 俺も負けじと、はははと笑い返す。


 となりに居るロゼの母上マリーローズ夫人は、にこにこと微笑んで一礼をして話した。

「アルベルト殿下、ロゼアンヌの事を大事にして頂きありがとうございます。学園でも娘の事を宜しくお願いいたしますね」

 ロゼに似た微笑みで、俺にお願いされるマリーローズ夫人に、俺は胸に手を当て軽く一礼をして答えた。

「お任せ下さい、ロゼアンヌ嬢の事は、私がお守り致します」


 そして再度シモン殿に向き直ると、シモン殿が握手するために手を差し出した。

 俺は任せてくれと言う様に、シモン殿の手を握ったら、ぐっと握り込まれてシモン殿が、良い笑顔で言った。


「殿下には、是非ともロゼアンヌとは、節度ある距離を保って頂ければと思いますが、学園でも守って頂けるのでしょうね」

 俺も負けじとシモン殿の手を握り込んで、微笑む。

「それは、婚約者として適度にと申し上げときましょう」


 互いに、にこりと微笑みながら、ぐぐっと力強く握りあってしまう。


 そうこうするうちに、ロゼが玄関ホールにやって来たので、互いに手を離した。


 そして俺はロゼの元へと向かいエスコートして、ロゼの両親に一礼して馬車に乗った。


 馬車が出発して、思わずほっと息を吐いた、あまり緊張することの無い俺だが、シモン殿と話すと緊張する。


 そんな俺を見て、労う様にロゼが俺に声を掛けた。

「アル様、ありがとうございます、両親も安心してました」

 嬉しそうに言うロゼに、俺は微笑む。

「そうか、それなら良かった、俺はクルーズベルト公爵に良いように思われて無いからな、まあ、自業自得なんだが」


 ロゼがはうん?と首を傾げて俺を見て問いかけた。

「そうなのですか?でもなんでですか?」

「いや、まあ、気にするな」

 俺がそう言うと、ロゼはこれ以上突っ込んで聞いてくる事はなかった。


 そして学園の馬車の停留場に着いたので、ロゼをエスコートして降り立つと、凄い人数の生徒が居た。

 流石に通り道には人垣は無いが、その他の所は人だかりになっていた。


 ロゼはこの三年で随分人前に慣れた様で、立派に皇太子妃として振る舞っている。

 ゆっくりとロゼをエスコートして、入学式の会場へと向かった。


 そして始まった入学式、新入生代表で容赦なく俺が挨拶をしなくてはいけなかった。

 正直面倒くさいが俺が皇太子の為仕方ない、つらつらと抱負を話し皆を一通り見るようにして、最後にじっとロゼを見つめて微笑むとロゼも微笑み返してくれたので、癒された。


 そして無事に入学式が終わり、ロゼを寮へと送って別れた。


 俺も寮へと戻り、午後のお茶会まで休憩する。


 *****


 その休憩の間に、俺の側近候補達を部屋へと呼んだ。

 皆が俺の部屋へとやって来た。

 取り敢えず皆に楽にしてくれと言うと、皆それぞれ好きに座る。


「殿下、おつかれさま~入学式の挨拶面白かったよ」

「俺は面白い事など一言も言って無いぞ、シーラス」

「殿下、皆を集めたのは、ご命令があるのでしょうか?」

「ああ、ハインツは話が早くて助かる、これから午後のお茶会や舞踏会で、そして学園生活で、お前達に手伝って欲しい事がある」

 そして、皆を見渡して話を続ける。


「俺の婚約者のロゼアンヌ・クルーズベルト公爵令嬢も、一緒に入学してる事は知ってるな」

「はいはい!知ってるよ!すっごい綺麗なご令嬢だよね~、殿下が全然紹介してくれないから、遠目にしかお目に掛かってないけどね」

「機会が無かっただけだ、いい機会だから、お茶会で皆を紹介する、それでだ、このお茶会と舞踏会でロゼに敵対するやからや、不届きな事をしそうな素振りをする奴をチェックしてほしい。まあ、俺に対しても良くない思いを持ってそうな奴のチェックも頼む」

 まあ、こう言っても実際出来るのは、ハインツとシーラス位だろうがな。


 俺の側近候補は五名

 先ずは現宰相の息子、ハインツ・ルーベンド侯爵令息

 ハインツは頭が切れるし、人を見る目もある。


 現騎士団長の息子、リガルト・ブレードグルフ伯爵令息

 リガルドは、まあ、うん、割りと脳筋だから根回しとか出来ないが、直感でここぞの時の判断力は期待出来る、剣術はこの中では一番強い。


 現魔導師長の息子マーリー・マジルワーフ子爵令息

 こいつも、魔法に関しては能力が高いが、どうなんだろ?抜け目ない所があるから、状況把握は得意なのだが・・・。


 そして一番の曲者である、現情報局局長の息子、シーラス・メーションデータ伯爵令息

 当然、情報通で軟派な緩い感じで、どんな人の懐にも入り込む能力があり、正直なに考えてるのかわかりにくいし、気が抜けない。


 現教会長の息子、クルス・チャーチトーン侯爵令息

 こいつも大人しそうな感じだが、人を観察する事には長けているが、教会の不利にならない限りは俺に協力的だ。


 とまあ色々癖のある連中だが、俺が五歳の時からの遊びや勉強を一緒にしてきた友達だ、普段の俺も知ってるので、俺の猫被りも知っている。

 気心が知れてる悪友とも言える。


 皆の協力を得て、一旦解散して、少し休憩してからお茶会会場へと移動した。


 *****


 そして始まったお茶会、ロゼが遠慮して奥にある東屋に居てもでいいのかと聞いてきたので、バシッと言っておく。


「ロゼは俺の婚約者だ、という事は皇太子妃だ、側近達にとっては俺と同等の存在の筈だ、丁度紹介もしようと思っていたからいいんだ」

 こう言ってもロゼは、いづれお役ご免になるのですよね?っと思ってるんだろうな。


 そうするうちに、ハインツ達がやって来た。

 それから直ぐに庭園側に招待した貴族のご令息ご令嬢も全員揃ったと報告を受け、全員で挨拶に赴く。

 そこでロゼの事を紹介したら、案の定ロゼは一瞬ピクリとしたが、優雅に微笑みながら挨拶をした。

 多分、わざわざ言わなくてもと思ってるんだろうな。

 そして一旦東屋へ引き返し、ハインツ達をロゼに紹介してから、再度他の貴族令息令嬢が居る庭園へと移動した。


 各テーブルへと赴き声を掛けて話して行くのだが、最初のテーブルが割と有力貴族が多い、少し話してハインツに呼ばれて、ロゼを少し一人にする。

 そして人員を配置して、俺は遠目でそのグループを観察する。


 暫くして一人の令嬢の表情が、変わったとシーラスから連絡が来た。

 それを聞いて俺はその令嬢の後ろへと向かい、その令嬢の言葉を聞いた。

「ロゼアンヌ様と言われましたか、貴方はアルベルト殿下に相応しいと思っていますの?」

 おいおい冗談は顔だけにしとけよと思い、言われたロゼは大丈夫かと思い見てみるが、全然気にしてないようだ、だが、他の令嬢達の事を気にしてか少し困った表情をしていた。

 では、代わりに俺が言っておくか、一応今は皇太子モードなので、柔らかく言っておく。

「バーカル嬢、それは私が女性を見る目が無いと仰りたいのかな?」


 そう後ろから声を掛けながら、ロゼの隣に移動した。

 そしてバーカル嬢に微笑み掛けると、何故かロゼが怯えた。

 何でだ?少し冷たくバーカル嬢を見ただけだがと思っていると、バーカル嬢は、顔を真っ青にしていた。

 そして弱々しくバーカル嬢が否定をする。

「いいいえ、その様な事は・・・」

「うん?だけど、先程、ロゼに私に相応しいかと言ってなかった?」

「いえ、あの、」

 これぐらいで追い詰めた事になるのか?やり過ぎか?

 チラリとロゼを見ると、少し呆れた表情をしてから、柔らかく微笑み俺に言った。


「アルベルト殿下、シャーロット様は私に殿下の隣に立つには、大変な努力をされたのでしょうと仰っていたのですよ、ね、シャーロット様」

「ええ、はい、ロゼアンヌ様の仰られる通りです」

 ロゼは優しすぎるぞと思いながらも、ロゼの言った事に乗ることにした。

「ああ、そうだったのかい、ロゼは王妃教育を全てクリアしたからね、私も鼻が高いよ」

 そして、こことぞばかりにロゼを柔らかく見つめて、ロゼの手を持ち上げ手の甲にキスをした。

 そしてにっこり微笑んでやると、ロゼがピキと固まった。

 ふふふ、たのしいな、そして固まったままのロゼの腰に手を添えてバーカル嬢達に挨拶をして、次のテーブルへと移動した。

 それにしてもバーカル嬢は、なんであんな事をロゼに言ったんだ?

 そう言えばバーカル嬢は、あの婚約者候補のお茶会に居たな、もしもロゼが居なかったら、政略的候補でバーカル嬢が俺の婚約者になって居たな、だからか。


 各テーブルを回ってる間も、ロゼは優雅に微笑みながらそつなくこなしては居たが、内心混乱していたのだろう、挨拶を終えて東屋へと戻ると、何か話したそうにしているのを見て、俺はハインツ達に席を外してもらう事にした。


 すると、ハインツ達が見えなくなりロゼが俺に言ってきた。

「殿下、シャーロット様のあれはなんですか?あんなことをされなくても良かったのでは」

「あれとはなんだ?」

 俺は惚けてロゼに聞く、ロゼは少し顔を赤らめながら「あれとはあれです」と言うから、俺には可愛いだけだぞと思いながら、知らん顔をする。

「あれではわからん」

 再度ロゼが力説する。

「だだから、あの様な事をされると、後々殿下が困ると思います!」

「後々、ねぇ」

 ロゼの検討違いに、思わず憐れみの目を向けてしまう。

 そして、久しぶりに懐かしいセリフを言ってきた。


「殿下、あえてお聞かせて下さい、学園生活の中で殿下の婚約者を探されるのですよね?」

 そう言ってロゼが上目遣いで、ちょっと潤った目をして祈るようにして俺を見る。


 可愛くて思わずうっと狼狽えてしまう。

 そして俺耐えろと、うーと唸ってしまい、ガシガシと頭を掻いて改めてロゼをじっと見ると、ロゼがこてりと首を傾げた。


 何してくれんだ!?抱き締めて良いって事か!?いやいや駄目だ俺、ロゼは何にも考えずにやってるだけだ!落ち着けと大きく息を吐いて気持ちを落ち着ける。

 よし大丈夫だ落ち着いた。

 そして何もわかってないロゼを、もうちょっとこっちの気持ちも察してくれと思い見つめて言った。


「ロゼは、本当に素直だな、言ったままを受けとる、だがまあ、それが良いところだが・・・たまに違った受け取りかたをするが」


「えっ?殿下は嘘つかれたのですか?」

「いや、嘘は言ってない、学園に居る間に何とかする覚悟しろ」

「そうなのですか?わかりました、私は何時でも覚悟は出来ておりますよ、ですので殿下がその方との事で困ったら言って頂ければお助けします」

 やっぱり通じてない、はぁと溜め息を吐いて思わず呟く「道のりは長そうだな」と、そしてまたロゼをジト目で見ると、再度ロゼが不思議そうに首を傾げた。

 だからそれは、駄目だって!!

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