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剣呪のウルティマ  作者: くつかけ
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第三章-28 終幕

「やられた……」

深夜はそういうと頭を抱えた。

「ま、振り返ってみれば私たちの相手じゃなかったわね。」

勝利宣言するアイシャだがその顔は芳しくなく、頭痛を抑えるように頭を押さえている。


それは深夜たちとドッペルゲンガーとの戦いが終わったあくる日のことであった。

神奈川県横浜市の郊外に立地する藤山記念高校。東急東横線沿いに立地する県内では中堅クラスの進学校。日本の異能者史上、最重要危険人物になってしまった三日月深夜の潜伏先である。

その教室の一室で深夜とアイシャは机を挟んで向かい合い……頭を抱えていた。


老魔導士のドッペルゲンガーが死んだあと、残りの配下たちは長たるものを二人連続で失ったからだろうか、恐れをなして逃げ出した。

もちろん深夜たちは追って殲滅しようとした。蜘蛛の子を散らすように決戦の地である公園から飛び出していくフードの集団。だが深夜たちが公園から出たとき、そこには怪しいフードを被った人間など一人もおらず、ごく普通の私服姿の若者や会社帰りのサラリーマンたちが闊歩していたのだった。


慌てて周囲を走り探す深夜たちはしばらくするとふと黒い布が捨てられているのをちらほら見つけた。

それはドッペルゲンガーたちが己の正体を隠すためにかぶっていたローブだった。彼らは逃げるにあたり、目立つローブを捨て、おそらくはそれまで化けていた魔法使いの姿から市井の人々に化けて紛れ込んだのだ。


「俺たちはやつらがフードを被っているということしか知らなった。残念だがもう探しようがない」

そういう深夜は心から悔しそうだ。

「ほんと、勝負に勝って試合に負けたって感じねぇ」

そういうアイシャの目は虚ろだ。元をたどればドッペルゲンガーと戦うことになったのは彼らが起こした私闘行為「異能力バトル」の調査、そして治安維持つまりそれを阻止することであった。

首魁であるピラニアやそれを打倒した老魔術師らももういないのでおそらくその目的は達したのだろうがその証拠がない。

ないからには報酬がおりぬ。つまりアイシャは骨折り損のくたびれ儲けというわけだ。


「まさか助けた大吾たちもいなくなるなんて思ってなかったわ」


逃げて行ったドッペルゲンガーをあきらめた後、山下公園に戻ると深手を負って再起不能になっていたはずの大吾の姿をくらましていた。

今のところ手掛かりは何もない。

戦いは深夜たちの勝利で終わり……本当にそれだけで終わってしまったのだった。


「何とか言いくるめて金取れないかしらねぇ」


そうぼやきながら依頼人を言いくるめる算段を立てるアイシャなのであった。





バレてはいないようだ。その様子を見ながら深夜は心の中でほっと息をついた。

大吾に化けたドッペルゲンガーは深夜の指示により、彩八の手引きでその場から離脱したのだった。


『情けをかけるというのか』

逃亡を手伝うと申し出る深夜に大吾は警戒心を隠さなかった。

『情け?いやこれは取引だ。お前はこれから旧八句……俺の、そしてお前が化けている男の故郷に行ってもらう。そしてこれからは大吾として生き、子を作り、そして死ぬんだ』

『何を言っているんだ!?』

驚きを隠せない大吾に深夜は畳みかける?

『なぜ驚く。取り殺し、なり代わって生きる。それがドッペルゲンガーの生き方だろう?』

『それはそうだが……仮にもお前の郷友であろう?』

『さ、どうだったかな?だが大吾は名門の出だ。行方不明となれば必ず調べが回り、そして少しでもかかわった俺の居場所がばれる。それだけは避けたい。』

う、うむ……と気圧される偽物の大吾を見ながら、我ながら外道に落ちたものだと深夜は己自身にあきれた。

『どうする?条件は変える気はない』

大吾はしばらく迷っていたが、時間も残されていないと悟り、うなだれるように頭を下げた。

『わかった。その提案、飲もう』

『よし、契約成立だな』

そういうと深夜は右手を深夜に差し出した。


『ではよろしく「大吾」』


とそこまで思い返したところで深夜の意識は現在に引き戻された。時計を見るとまだ数分しかたっていない。見るとアイシャはまだうんうんうなっていた。

深夜はおもむろに立ち上がった。

「ま、よかったんじゃないか?平穏が戻ってきたんだし」

暫くではあるが、と深夜は思いながらそういった。


たとえそこに偽りがあろうとも、少しでも平穏な時が続くことを祈りながら。

半ばエタってしまいましたがだらだら書き続けさせていただきました。

こんな駄文に評価やブクマしてくださったかたには感謝してもしきれません。


本当にありがとうございました。


また書くときはもっと良いものが書けるように頑張りますのでどうぞよろしくお願いいたします。

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