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剣呪のウルティマ  作者: くつかけ
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第三章-14 消えた人々と謀反の疑い

「異能者の生産、ブリーディング?まるで犬か猫みたいな扱いだな。」

異能者の一人である深夜は大吾のそんな言葉を聞いて抱いた嫌悪感を素直に口に出した。大吾はそれには何もいわずに一つ質問を投げた。

「なあ深夜。異能者にとって……いや、異能者の一族にとって一番大事なことは何だと思う?」

「異能者にとって?」

「そうだ」

深夜はしばらく考えをめぐらせた。現代兵器をしのぐ攻撃の魔法を作り上げること、条理を覆す事象を生み出すこと、そんなことが脳裏に浮かんだ。が、そんなことはできたとしてもあくまでそれは一人、ないし少数の異能者の問題だ。大吾は「異能者の一族」といったのだ。

「血をつなぐ……ことか?子孫を多く残すとかか?なんか戦国時代みたいな考えかただが。」

親から子に能力を受け継がせていくこと、血脈を広げることが一族の勢力を強めることになるのではないか。だが大吾は首を縦には振らなかった。

「ちがうのか」

「ある意味では正解だね。でも別の意味では不正解だな」

どういう意味かと考えあぐねる深夜の横からアイシャが割っていった。

「血を広めないこと、かしら?」

「血を広めない?それじゃ真逆だろ」

深夜はそう疑問を呈したが、大吾はそれを聞いて頷いた。

「そうさ。血を広げ、そして血を広めず。いや、『血の秘匿』こういうのがいいな。異能の力は親から子に遺伝する。つまり血とは、血を有する人間は里にとっては一人一人が戦力そのもの。一人でも多く、優れた異能の血を引く人間が生まれることが我々の里の優位を気づくことになる……」

と、そこまで話した大吾はどうしたことが言い淀んでしまった。だがその続きはあらかた察したアイシャが引き継いだ。

「その逆をいけば瞬く間に里には不利になるってことね。異能の組織コミュニティが最も恐れるのは『血の流出』。敵に同じ異能を持つものがいれば、優位性は一気に崩れるものね……で、剣呪の里は今その問題に面してしまったわけね?」

そう話すアイシャになるほど。そういうのがあるのか。血を残すとか子を作るとかの知識はもっているものの実際に剣呪使いとして『それ』をする前に深夜はほーんと相槌をうった。大吾は肯定はしないものの、否定はしない。恐らく当たっているのだろう。

「で、それが今回のことと何か関係あるのか?まさか鋸刺鮭ピラニアとかいう連中が仲良く子作りにいそしむための集まりには見えないぞ?」

大吾はちゃかすな、と言って話を続ける。

「話はここからが重要なのさ。ちょうど二年くらい前だろうか。深夜、君が里で剣呪使いを血祭りにあげて姿をくらましてからそれなりに時間がたって里も落ち着いたころだった。僕らよりも数年年上の剣呪使いが行方知れずになったのさ」

「それは……捜索はしたのか?」

「いや、しなかった。」

「何故だ!?」

数年年上ということは深夜とも見知った中かもしれない。

「最初のころは、ね。居なくなったのは剣呪の一族の中でも割と末端の家の者だった。旧八句に嫌気がさして逃げ出したんだろうってみんな思ってたんだ。まあ君も含めて大なり小なり悪さをした剣呪使いが厳罰を恐れて姿をくらますなんてこともあるからねぇ。」

「そうか……誰も気にも留めていなかったというわけか」

「そうだね。表立っては言わないが『多くはないけど珍しくはないこと』程度の認識だったらしい。」

自分自身も決して高い身分ではなかったゆえに、いなくなっても気にも留められないその人を思い深夜は複雑な気持ちになった。

「だがすぐに誰もが違和感を感じるようになった。人数がおかしかったんだ。君も旧八句にいたころに剣呪使いが里を抜けた、なんて話を聞いたことはなかっただろう?その程度のそれぞれの家が隠し通せる人数しかなかったはずなんだ。だが今回は10人20人、消えていく。まるでごそっと『引き抜かれる』ように。」

そして、とそこで大吾は一息ついた。

「一年前のことだね。警察庁異能管理局から剣呪使いの里にテロの疑いがかけられたのさ。」


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