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剣呪のウルティマ  作者: くつかけ
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第三章-8 リベンジマッチ開幕

深夜、46番と呼ばれた少女、大吾、そして鋸刺鮭ピラニアとそのお仲間の皆さん。全員に静寂が訪れる。深夜が自慢げに披露した推理が外れてしまった呆れと気まずさで誰も口を開くことができないのだ。

責任を取るように話を切り出したのは問題の張本人、深夜だった。

「……違ったのか」

こんなどや顔で推理晒して外すなど……こういうときは対外的中するもんだろう。あまりのカッコ悪さにうっすらと赤面しながら確認すると無残なまでに改めて否定される。

「ええまぁ。というかそんな兵器がごろごろ転がっているとお思いで?」

「いやまあそうなんだが……」

鋸刺鮭ピラニアのフードの奥からクツクツと音が鳴る。苦笑しているらしい。

だがまあそうか。外れてしまったか。深夜は気落ちした。確かに理屈上は可能だが現実性はなかった。もし実現可能なら世界中の軍隊は銃を捨てて剣呪の兵装を採用しているだろう。先ほどイサーク医師にまで自分は今回のからくりが分かった体で話を進めてしまった。こんど会った時にどんな顔して話を切り出せばいいのやら。恥ずかしいことこの上ない。

だがそれはそうとして、ではどうやってこんなに異能者を増やしたのだろうか。そんな疑問が深夜の脳裏に浮かぶ。

「気になるな。どうやってこんなに異能者を増やしたんだ。世が世なら」

「それはどうも……それをほいほい教えるとでも?」

だめか。なんか話の流れでおだてたら教えてもらえるかと思ったんだが。

「ですがまあ……あまり言いたくはないのですが基本はごくごく一般的な『異能者が増える』方法と同じですよ?」

なんだそれは。ここまで旧八句から逃れていろいろな場所を流れてきたがどこでも異能者が増える方法なんて聞いたことがないぞ……?だが鋸刺鮭ピラニアとしては大ヒントを与えたつもりらしい。ならばこれ以上の情報は得られまい。それは次、こいつを追い詰めた時にゆっくりきかせてもらう。そう腹にきめた深夜はおもむろに大吾を担いで立ち上がった。

「おまえはさっき俺に死んでもらうといったな。悪いがここは見逃してもらう。力づくでもな。」

「ええ、かまいませんよ?さっきも申し上げましたが私が用があるのはあなたがそこで庇っている剣呪使いのほうですからね」

そういって再び大吾を置いて行けという。だがそうするつもりもない。

「言っておくが俺が剣呪の裏切り者だとしてもこいつを見捨てると思うなよ。これ以上剣呪使いを殺すとマジで故郷に帰れなくなるからな」

「なるほど……」

鋸刺鮭ピラニアそういって納得するようなそぶりを見せ……。

「では、その悩みごとここで断ち切ってやりましょうか!」

そういうやいなやあたり一面に短刀やナイフを展開させる。逃げ場はない。ここで仕留めるつもりだろうか。同時にこれまで静寂を保っていた配下の死神装束たちも俄かに攻撃的な気配が立ち上る。こちらも何かしら仕掛けてくるか。深夜はここで迎え撃つことを腹に決めるとこれまで背後に控えていた少女に向かって……大吾を押し出した。ふらつきながら大吾が少女に受け止められたことを確認すると深夜は指示を出す。

「そいつと一緒に隠れててくれ……初撃を耐えたら逃げるぞ。」

相手の目的は大吾を奪うことだ。であれば一緒にいれば手は出さないはず……邪魔者である深夜がいなくなるまでは。重荷から解放された深夜は右手を心臓のあたりに充てると、左の肩をほぐすように腕を回した。うん、今日も特に問題はない。

「本当にやる気ですか。」

鋸刺鮭ピラニアは関係ない人間をあまり巻き込みたくはないらしい。すでに多くの若者を『異能バトル』かなんかに巻き込んでおいてよく言う。深夜はそう思いながら周りを見渡す。

「ああ、やる気だ。この前のリベンジマッチといこうか」

そう深夜が言った瞬間。あたりの空気の流れが変わった。

「(きたっ!!)」

深夜がこれまでも体感してきた感覚。相手が攻撃に乗り出してきたその体の動きで待機の流れが乱れ、熱が上がる感覚。それを感じ取るや否や深夜は制服の背中に隠し持っていた呪剣百禍日をとりだそうと手を回し……


本来そこにあるはずの感触がないことに気が付いた。


「!?」

ない。深夜がそこに手を回すとそこには何もなかった。自分がいつも制服の下に隠している呪剣はどこに行った。そう思った矢先自分が学校から抜け出してここまで来たことを思い出した。

「(もしかして全部置いてきちまったか!?)」

それに気づいたその時、鋸刺鮭ピラニアがはなつ無数の短剣と死神装束の配下たちは深夜の目前まで迫っていた。


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