プロローグ1-4深夜の告白
信じていた深夜に裏切られたと感じたかふと傷ついたような顔をするがそれは一瞬だった。すぐに元の残忍な笑みを取り戻す。
「へえ…面白いじゃない。」
哀歌が再び太刀を抜いて呪力を込める。生み出された剣呪によって太刀が赤熱し、その余波で周囲の大地が燃え上がる。
「じゃあ深夜も、殺す」
その宣告を聞き、深夜も手慣れない手つきで刀を抜く。哀歌は明るみに出た深夜の刀の刀身を見て怪訝な顔をした。
「それ、本当に刀なの?」
「まあな、ちょっと特別製だ」
それは刀というなりはしているものの、ずいぶんと妙ななりをしていた。まるでいくつもの金属片が寄せ木細工のように組み合わさったような刀身である。それも緻密とはお世辞にも言えず歪でガタガタの刃はお世辞にも切れそうだとは言えない。」
「ま、武器がなんだろうとかまわないけれども。でもわかっているんでしょうね。この里の恥さらしとまで言われたあなたにが私に勝てるとでも思っているのかしら?」
友人のよしみで今なら逃がしてやると言わんばかりの言葉だが、深夜は首を振って否定する。
「別に生きて帰ろうなんておもっていないさ。」
でも、お前だけは絶対に倒してみせると得物の切っ先を哀歌に向ける。
「そのためにこの刀だって用意したんだ」
「そう、それならば精々楽しませてちょうだい」
あたりは二人だけ。邪魔するものは何もない。気心の知れた二人の異形の殺し合いが始まろうとしている。深夜はそれを確認するとこう切り出した。
「最期に言っておきたいことがある」
「命乞いかしら」
いや、そう断りを入れると深夜は大きく深呼吸した。
「哀歌、俺は」
全身全霊を込めて、
「お前のことが、好きだぁぁぁぁ!!!」
というわけで少年は今日この日一世一代の告白をした、というところで冒頭に戻る。
「はぁぁぁぁ!?」
余りに唐突すぎる告白に哀歌が顔を真っ赤にする。
「あんた何言ってんの!?」
「お、聞こえなかったなか、ならもう一度いうけど」
「もう十分よ!」
普段はつんと澄ましているくせに、慌てるとその直情的な素が出てしまうところ。そんなところに深夜は惚れてしまっているのだが、まだ中学校に進学したばかりの少年にそんな己の心の機微はよくわかっていない。精々、自身に芽生えた感情を聞き、読みかじったつたない知識になぞらえているだけなのだが、深夜は言葉を続ける。
「一生言えないかと思ってたけど、この場でいえてよかった」
清々とした表情の深夜に対し、哀歌は怒りたける。
「そんなこと言って、手加減でもしてほしいのかしら」
いいやそんなことはない。深夜はいたってまじめだった。
「お前のことがほんとに好きだ!!」
本当にこいつは恥ずかしげもなくよくもこんなことをペラペラと…。好意を伝えられるたびに哀歌は悶絶するのだった。そこに殺戮者としての姿はどこにも見当たらなかった。