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剣呪のウルティマ  作者: くつかけ
15/60

プロローグ1-15 循環輪廻の剣呪

これが死ぬ感覚なのか。

深夜を襲う一瞬の激痛、吐き気。体の中心を貫く刀身が火のように熱い。にもかかわらず、手足からどんどん体温が失われていくかのような幻覚に襲われる。もはや意識を保つことすら怪しい。

い。そんな深夜を哀歌が刀を突きさしたままあざ笑う。

「ずいぶんとあっさり引っかかってくれたわねぇ」

だがそんな声も、もはや遠くから響くようにしか聞こえない。

深夜はぼんやりと己の腹に突き刺された刀を見つめる。偽哀歌が吐息交じりに続ける。

「こ、こんなに手こずらせて…楽には死なせないわよぉ」

やはり、多少は呪力を消費しているのだろうか。勝ち誇る偽哀歌の声に疲労が見られる。


………好都合だ。


「…な、なあ」

深夜は残る力で声を絞り出す。

「なにかしら?遺言なら聞くだけ聞いてあげるわ」

勝者の余裕を見せる偽哀歌。大丈夫だ。完全に油断しきっている。

「哀歌の剣呪ってなんの力だか…知りたくない?」

「興味ないわね。」

「そういうなって…これから自分の体になるってのによく知らないのは怖いだろ?」

「…いわれてみればそうね」

余りの痛みを体が拒否しているのか、もう何も痛みを感じない。だがそれでいい。深夜の企みに感覚は不要だ。ただ意志さえあればいい。

「でも大体想像はつくわね。」

偽哀歌が首をかしげる。

「炎の剣呪なんじゃないかって?」

「違うのかしら」

そうだ、哀歌の力は火に関する力だと思われがちだ。家族ですらそう勘違いして。そのことを思い出した深夜は失血で気絶しそうになりながらもほくそ笑む。そんな態度に偽哀歌があからさまに機嫌を損ねる。

「気に入らないわね、早く教えなさい」

「ああ、教えてやるよ。哀歌の力はな、波動の力…『振動』を操る力だ」

「振動?」

聞きなれないその言葉に哀歌の意識が持っていかれる。そしてそれは深夜にとってまたとない好機となった。

「だったら教えてやるよ…こうやってな!!」

そういうと、

深夜は息を大きく吸い込み、

残された力全てを振り絞って、

呪剣「ウルティマ」を振り上げた。

「なっ!?」

予想外の深夜の動きに偽哀歌がとっさに飛びのこうとする。

「させるか!」

最後の好機を逃さんと、全速力で刀を振り下ろし…そして、


ペチリ


と哀歌の首筋にあてた。

余りにあっけない最後だった。

「くくくく、あはははっ!なるほどねぇこれがあなたの言いたかったことなのかしら?」

虚を突かれた反動か、狂ったように笑う哀歌。首筋に充てられた呪剣はピクリとも動かない。

「なにが『振動』よ。まあ確かに、ちょっとは私の心も動いたかしら―」


「そりゃ斬る必要はないからな!」


力尽きたと思われた深夜が叫んだ。

「いっただろ!これは振動の力!哀歌の力は剣が触れるものすべてを自由に振動させる。そして!」

腹に刺さった呪剣が深夜の肉体に波動を流し込む。それは本来深夜の体だけを焼き尽くすはずのもの。だが、

「振動は伝わる!」

深夜の呪剣が哀歌に触れたことで振動を伝える回路が哀歌までつながる。本来対象に一方的に伝えるはずの振動がループの形になることによって高速で循環を始める。

「お返しだ!お前が奪った哀歌の力!その身で味わいやがれ!」

振動が哀歌の体で炸裂する。人体を構成する細胞の一つ一つが振動を始め、血液が沸騰する。

「いやぁぁぁぁっ!?」

哀歌の肉体から生み出された振動エネルギーが哀歌に直接跳ね返る。だが同時に深夜も無傷とはいかない。高速で振動する細胞一気に自壊していく。だが、深夜は必死で耐える。耐えれば耐えるほど、偽哀歌にダメージが蓄積していくのだ

「(耐えろ…っ!あと5秒、せめて3秒でもっ!)」

時間にすれば数秒、だったろうかついに哀歌が力尽き倒れる。それを追うように深夜もその場に崩れ落ちる。

「もう一度…こんどこそ言ってやるぜ…」

そして意地で意識をたもつ深夜は再びこういうのだった

「ざまあみやがれ…だ!」


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