破滅の灰城 一話
「おお、偉大なる神レオよ――我々を導きたまえ――」
神殿にて巫女は神託を待つ。
“黒に染まれ”
神は姿を表さずにたった一言、巫女へ告げるのだった。
「どういう意味なのかしら……」
白の国は黒の国と敵対している。光の巫女が黒に染まるとは、つまり国の崩壊を意味する。
それは黒の国でも同義にあたるだろう。
白と黒は灰となり互いを穢し、光と闇は相容れないのだから。
「はあ……」
「まあ姫様ったらこんな場所にいらしたんですか!」
寂れた庭の角でため息をつくリューネを侍女が発見し、城の部屋へ連れ戻された。
「もう神託を受けて疲れてるのよ、少しは休ませてちょうだい~」
リューネの体に疲れはないが、精神面が神託に困惑したことでぶれていた。
「一年後にはご結婚なさるのですからまだまだ仕度があります!」
生真面目な侍女は普段から楽観的なリューネをいかに落ち着けるかと必死だ。
「まあまあ、リューネだってしばしの休息くらい無ければ倒れてしまうよ」
「エズタル……」
■
白国の光巫女が神託を受けた数日後、黒国からも動きが見られた。
黒国の王子に使える男ハミット、闇巫女のアメリアナが正式に白国へ訪れたのだ。
「アメリアナ、そなたの神託を疑うわけではないが何故我々黒の民が白の国と手を組まねばならん」
「私には判りかねます。神託ですから」
アメリアナはハミットと一年前に婚約させられたとはいえ、互いに気心がしれた男女の友人もしくは姉弟のようなもので恋愛感情はわかなかった。




