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正義の主贖:1章・食物戦姫編①


そこには神々が繁栄を願う小さな世界ある。

名をヴェルド、5つの国と人種が作られた。


神々の用意した箱庭(くに)に対応する人間は、思惑に反意する。

国を侵略し、人種が交わってしまったのだ。


神々は人間達は何度作り直しても反逆することに憤慨。

人間たちに罰を与えるため、正義と悪の永久なる戦いを彼等へもたらした。



『パパーママー!だれかたすけてぇ……』


真っ暗な盗賊たちの部屋に縄で縛られた幼い女の子は泣きじゃくる。


『ヒャッハー!めずらしい桃色だぜ!このガキの眼玉、高く売れるんじゃねえかアニキ!』


盗賊の若いしたっぱの男が少女の目にライトを当てる。


『おめめ痛いよぉ……』

『おい、だから丸ごと売り飛ばすんだってーの。勝手に遊んでじゃねーぞ』


盗賊のボスは若いしたっぱの頭を軽く殴った。


『すんませんアニキ!』

『ちょっと外見て来い』

『へーい』


若いしたっぱがテントの外へ出た。


『さあて……このガキいくらで売れるんだろうなぁ……将来美人になりそうな顔でもねぇし……』


盗賊は傷がつかないよう少女の顔ではなく髪をつかんで品定めをした。


『にしてもおせーなアイツ』


盗賊のボスはテントの外へ確認に行く。


『おま……ぐあ!』


盗賊のボスが汚い悲鳴を上げてドサリと倒れる。


『え?』


テントの中に人が入ってくる。

少女は怯えながら眼を閉じて待つ。


『悪い盗賊は倒したからもう大丈夫だ。お嬢ちゃん、怪我はないか?』


男がロープをほどくと少女は安心し、気を失った。



ヴェルドの中心にあるジュプス帝国は改革により新しい風が吹いている。


「はあ……」

「我が家からエリートが出るなんて鼻が高い!」


私はジュプスの女帝ラグネリアの新しく作られた女性警護部隊に入る事になった。

主に中下層の生まれの女子が任意で適性チェックを受ける。

給料が良いので国民の多くがそれに参加した。


「しかしパパは心配だなあ……」

「あら、でも国家軍人ならそこらの男より良い縁談があるわよ」


両親は私よりもワクワクしている。


「エリルちゃーん!!行ってらっしゃーい」

「変な男が来たらバッサリやれよー!!」



将軍(ゼネラル)!本日より陛下の意向により新しく部隊が作られる事になったそうです!」


新人兵は軍団を率いる直属の上官に報告した。


「ああ、その事なら聞いている」


ゼネラル・ソアンは窓から、よく晴れた空を眺める。

以前から女帝の身辺警護には女兵士が必要だと議題に上がっていたのだ。


「それはさておきサイマード、今日中にこの書類をヴァルメロード宰相へ提出しておくように」

「はい!」



「女兵士かあどんな子がくるんだろうなトクバイス」

「それより書類出しにいかなくていいの?」

「ああ、さっきそこらへんあるってたから渡しといた」

「運のいい奴だなあ」



家から歩くこと30分、城まで到着した。


「新人兵はこの部屋に待機するように」

「はい」


私と同じく採用された少女達が集まっている。

その中でも水色髪の知的な子と金髪のお嬢様みたいな子が目立つ。


「あ、桃色の眼なんてめずらしいね!」

「えっはっはい……!?」


いきなり金髪の子が話しかけてきた。


「アタシはビーナ・ロイス、よかったら友達になって!」

「私はエリル・ルナ。こちらこそよろしくね」


話し相手が出来るか不安だったけど安心した。


「……フン、ここは魔法学校じゃないのに何が友達よバッカみたい!」


茶髪のお姉さんがこちらを睨んでいる。


「あんな寂しい人、気にしたらダメだよ」

「ビーナ、それ火に油……」

「誰が寂しいですって私は陛下をお守りする為にこの城にいるの、どっかのバカ女みたいに縁談目当てとかお友達作りとか遊びに来たわけじゃないんだから!」


彼女はビーナを平手打ちしようと手を振り上げる。


「うるさいわね……精神統一の邪魔、静かにしてくれないかしら?」


青髪の子が振り上げられた手をつかんで軽くあしらう。


「……何よアンタ、マキュス人のくせに!」


マキュス人は学者が多いため、体力面で負けると思わなかったらしく悔しそうに着席した。


「では、これより部隊分けと各部隊長を発表する」


ドアがノックされ、緊張が走る。ごく数名の騎士が部屋に入ってくる。


「陛下に代わり、将軍の私が賜った言葉を。」


彼は背が高く、しかしサラリとした金髪でいわゆるムキムキのイメージとは違い端麗な方。


“少女よ――国の為に美しい華を咲かせなさい”


「以上だ」

「部隊分けだが、部隊長を3人に分ける。兵士は各々好きにせよとのお言葉だ」


「何が質問は?」

「はい」


水色髪の子が手をあげる。


「部隊長は予め陛下のご判断で3名、確定しているんですか?」

「ああ、これから発表がある。それでは、なぜそうしたか……君、わかるか?」


将軍がパッと私を差したので、何故か考えてみる。


「……あまり先入観がない状態だからでしょうか?」


まだ初対面で、お互いは見た目で判断するしかない。

完全に第一印象で合うか合わないか、を運まかせにしているような?


「そうだな」

「では部隊長の名を発表する」


自分が選ばれたい者と長いものに巻かれたい派が入り交じっている。


「第一部隊エリル、第二部隊リラティ、第三部隊メルカ」


――私が部隊長に選ばれた!?



「では各部隊長は自己アピールを」

「はい!」


リラティという明るい少女が真っ先に手を上げた。


「私は部隊長に選ばれたこと光栄に思います!とにかく頑張ります!!」


あまり考えないが熱意はあるタイプなのが伝わる。

次にメルカというおどおどしたサーモンピンク髪の子が手をあげる。


「……えっと、私は隣国の有名な大手パン屋の娘です。いわゆる箱入りで実はあまりトップに立つ自身がありません!」


彼女は正直に自分の不安な気持ちを吐露した。


「では最後にエリル・ルナ」

「はい……何故私が部隊長になれたのか嬉しくもありお役に立てるか不安でもあります。

でも私は幼い頃に悪人に囚われて、ある軍人に救われました。だから国を守る仕事にずっと憧れていたので自分に出来る範囲で精一杯頑張ります!」


私が話を終えると辺りが静まり返る。手を叩く将軍。これは、私の部隊に沢山人が来るかも!?


「ではチーム分けだ」


三人の隊長が横に並び、その後ろに人員が集まる。


「リラティとメルカは規定数……だがエリルの部隊はたったの3名……」

「こんなの予想してなかったぞ。リラティ第二部隊長はともかくなんでメルカ第三部隊長にも集まるんだ!?」


騎士達は予想と反した結果に驚いている。


「やっぱり熱血なリーダーが安心できますから」

「まさか彼女が部隊長になるとは思わなかったんですが私達メルカ様のことは知ってました~名のある魔導一族でフランポーネ公国で勲章のついた歴史あるブレッド……」


コネに釣られた子と明るくリーダーらしいリーダー。

私の演説は何がダメだったんだろう。


「あの、二人はどうして私の部隊に?」

「なんでって友達じゃない」

「単細胞で熱くるしいのと七光りが嫌いだから消去法なだけ」


どうしよう加入動機が他チームと大差なくて前途多難だ。


「任意とはいえ3名はさすがに……」

「こうなったら一騎当千で行きます……!」

「多分大丈夫ですよー」

「ま、バカな仲間はより少ないほうがいいからね……」



本格的な活動は明日で、私達は帰宅、遠方から来た子は新しく立てられた女性寮に住むらしい。


「エリル・ルナ、少しいいか?」

「はい」


ソアン将軍が城門を出ようとする私を呼び止める。


「君は昔、悪人に囚われたと言っていたが……その話を詳しく聞かせてはもらえないか?」


将軍は何故そんなことを聞きたいのだろう。彼だけは拍手をくれたので、きっと何か深い理由がある?


「悪人というのは、人を拐い売ろうとする類いのか?」

「はい、軍の方が捕まえて……でも私は軍の誰に助けられたかまでは覚えてないんです」


そう言うと将軍は嬉しいような悲しいような難しい表情をする。


「そうか、君の眼は珍しい色をしているが、それ以来狙われたりはしないか?」

「はい」

「ならいいんだ」


眼が原因だと話していないのに何で拐われた理由がわかるんだろう?


「……それと、もう日が落ちてきているから気をつけるように」

「はい、ありがとうございます」



「そういや将軍は女王陛下が即位する前から知ってるらしいな」

「あー結婚の噂もあったな」

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