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死の魔女 1


『ああ……戦いが終わったのね……』


辺りには魔王との戦いで相撃ち倒れた者達がいる。


『大丈夫ですか?』


少女は全身ボロボロの青年に駆け寄った。


『……戦いが終わったら結婚するっていったじゃないか』


事切れた女性を霞目で見つめる青年。


『ごめんなさい。今の私ではあなた一人しか助けられないの』


通りがかりの少女は涙を流して告げた。


『君は誰……どうか僕を見捨てておくれ……』

『私は自分が誰なのかわからない。ただ貴方を死なせてはならないとだけ』


少女と光に包まれ、青年が意識を手放して数年が経つと町並みは復興した。

魔王討伐に関わる人間が消えても誰も気にはしなかった。



「」「――こうして魔王が討伐され数年、英雄達の唯一の生き残りは学園長となり我々を導いてくださっています」


教師は新入生へ威光を語る。


「以上で集会を終わります」


生徒達はようやく解放されたと教室へ戻った。



「ねーラヴェナの家って何かペットいるの?」


銀髪の少女が桃髪の女生徒へたずねる。


「うちは普通に父のペットにホワイトサイベルテイガー、私のペットにペガソスくらいですかね!」


彼女は自分が裕福だと自覚がないのかぼんやりと答えた。


「私のペット、キングドラゴンだけど城まで見に来る?」


濃茶髪の女生徒が真顔で言う。


「さすが、未来の女王はスケールが違うわ」

「そういうサフィは何飼ってるの?」

「普通に小さな犬だよ、あたし平民なんだから」


銀髪の女生徒は写真を見せる。


「へー可愛い」

「わたしは猫が好きなので飼いたいんですけど、パパが猫アレルギーなんです」

「そうなんだ。あ、明日は留学生がくるらしいよ」


銀髪の女生徒が言う。


「こんな時期に?」



「はあ……大頭領の娘の天菱さんはともかく私まで魔法学園に留学なんて……」


私は昨日、突然異国の魔法学園へ留学しろと政府から命令された。

なぜ学園長が一般市民の私を指名したのかわからないけど、長期留学らしい。


『留学ううう!?』

『そうだ!お偉い方が無料で、援助してくださるそうだ早く行け!!』

『いつ!?』

『明日だ!!』


まあ転送システムで一日早くたどり着いたからいいや。

お金持ちは普段からこんな物を使っていたとしみじみ格差を思い知る。


「あれ、なんかいい香り……」


学園の広い薔薇園、立ち入り禁止とは書かれていないし寄り道しちゃおう。


「……誰だ?」


振り向くと背が高いローブを纏った金髪の男性が後ろにいた。


「見かけない顔だな……もしかして君が留学生?」

「はい学園の先生ですか?」


頷く彼にタブレッティオ端末の身分証を提示。


「うん、予定より一日早いから驚いたけど……むしろ丁度よかったかな」


返される端末を受けとる。


「学園内ではこの指輪が身分証になるから手を出して」


端末を持っていたので彼がはめてくれて助かった。


「あ、ありがとうございます」

「じゃあまた明日」


――先生の名前、聞きそびれた。


◆◆


「地丸リセンです。ジャポナスから来ました」


なんか大学みたいに長い席で高さのある教室だ。


「よし席は黒板にも近いしサフィさんの隣がいいかな」


私は先生に言われ開いていた二列目にいる銀髪の少女の隣に座る。


「よろしく」

「こちらこそ」


軽い挨拶をして、タブレッティオを取り出し授業を受ける用意をした。



「授業どうだった?」

「初めての知識だから新鮮だった!教室は普通科の大学みたいだなって」

「あ、チマルも一緒だったのね」

「うん」


「ツェマルさん、彼女はロイヤレッタ、エルジプスの次期女王様なの」

「まあ未来の女王だからって気がねなく話してちょうだい」



「ところでツェマルって私?」


サフィはあだ名で読んだのかな。


「ディーツ人はチが言えないのよね。ジャポナス人ならディーの発音が苦手って聞くんだけど」

「そうなんだよねー」


サフィに代わってロイヤレッタが説明してくれた。


「あ、エードの人のてやんでぇ!とか?」

「いつの時代よサフィ今はハイカラなタイーシェなんでしょ?」

「いや、今はハイテクなキンミラーズ時代なんだけど……」


「あ、私はラヴェナですよろしくね」


ぼんやりとしていた桃髪の子が忘れてたというより話題の終わりを待ってたようなタイミングで自己紹介する。


「あ、はい、よろしくおねがいします」


私は一日で友達が三人もできた。



「その指輪綺麗だね」

「ほんと透明な薔薇の石がついてて可愛い」

「学園に来たとき先生に身分証だって言われたけど、皆はしてないの?」


三人が機械的な指輪を見せてくれた。


「ああ、もしかして最新型かしら?」


ロイヤレッタの考えに納得した。


「アタシもいつか彼氏から綺麗な指輪貰いたいなあ」


サフィがぼんやりと未来の彼氏を祈る。


「わたしも学園在学中に恋人を見つけないと」

「あてがわれてしまうわね」


婚約者とか庶民の私には関係ない話なのでどうでもいいや。


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