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異境の少女と魔法使い 1


かつて人間のいた星、チキュウの優秀な人間は神となった。

彼等によってもたらされし、魔法と呼ばれる力が大気に満ちる楽園。


異界ミーゲンヴェルドを作りあげる。

彼らは増えすぎて汚れた青き星を捨てた。


人種、性別、容姿の相反、チキュウの人間の大半は心が醜いものばかりで、根本から変える必要があった。


優秀な彼らにもチキュウのあらゆる差別をなくす事は出来なかった。

いいや、差別を完全に無くすことは、永き命を持つ神々にとって退屈でつまらない世界となるからだ。

それらをする醜い者は神々の用意した主役に倒させてしまう。


神々はさらなる遊戯を楽しむべく何度も舞台を作り、汚れた世界を捨てて新たな世界へ人間を放つのだった。



「ここがヨウコクの首都フランポーネ!」


人がワコクの首都ジャポナス・エリア人より背が高い。

洋の者達は食文化や遺伝子が違うと知識にはあったが、いざ目の当たりにすると呆気にとられた。


「アイネさーん」


魔法学園へ案内してくれる先生が遠くから手を降っている。


「はじめまして、私はマルグリテよ」


緑の髪をしている彼女はジュグ大帝国のディーツ人だろう。


「お初にお目にかかります」

「ワコクの人とは初めて会うけれど本当に薄紫髪なのね……」


先生は珍しいと興味深そうに見ている。


「ジャポナスはディーツと技術を張り合っているって聞くし、観光にも行きたいと思っていたんだけれど……魔法が使えないって聞いたから」

「あ、飛行魔法で現地へは行けます。国内は魔法の変わりに機械を使用してます」


魔法がなくても機械が全てやるのであまり不便を感じたことはない。


「あのそろそろ学園に行かないと理事長先生がお待ちなのでは?」

「あら、ごめんなさいねつい。話は学園に行ってからにしましょう」


ディーツ人は比較的時間を守るタイプだと思ったけど個人差かな?



「ねー明日留学生がくるんだってよ」


金髪の少女がクラスメイトに声をかける。


「じゃあ新参者には洗礼を」


青髪の少女が杖を構える。


「やめときなよ相手は魔法使えないんでしょ」


金髪の少女は真顔でサラリと注意する。


「……」


青髪の少女が何かを言いたげに黙る。


「じゃあ私の剣術だな」


剣を抜こうとする赤髪の少女に二人はいやいや、と首をふった。



「失礼致します!天菱アイネです」

「どうぞ」


理事長室へ挨拶に向かうと、素敵な男性が椅子に座っていた。

理事長は女性と聞いていたけど。


「私はアジュール・エルン。マデェール理事長の代理をつとめている。何か聞きたいことは?」

「ええと、理事長が最も重要だと思う学園での規則は何がありますか?」


留学するにあたり父から何か失礼をして追い出されないよう気を付けるように言われた。

よく父の部下はミスをしてもマスコミにバッシングされても席に居座ればいいと話していたのを思い出す。


「いや、この留学はワコクへ魔法を広める為、そして逆にこちらが科学を学ぶ意味でも重要な事だ」

「学園では魔法を使わないといけないんですか?」


魔法学園なんだから当たり前だが、私の国ではカジノのように魔法が禁止なので生まれてから一度も使った事がない。


「いや、魔法はモンスターとの戦闘くらいで使用しなくとも日常生活に支障はない」

「モンスター?」

「ああ、ワコクでは食用でしか大型動物がいないのか」

「はい。まあホエイルは家でペットとして飼育してます!」


エルン理事が反応に困っている。


話を終えて寮の部屋へ案内された。


「……うーん?」


この寮は一般的なそれで、学園に沢山いる王族や貴族の子が住むにしては狭いので想像と違い拍子抜けした。


「まあいいか」


ワコクは海が多く国の面積はあれ、人間の住む敷地は狭いものね。



「ワコク領のエリア・ジャポナスから来ました天菱アイネです。よろしくお願いします!」


ザワザワと皆が話している。


「席は……」


教室の椅子は大学のような長めのタイプだ。


「はいはいアタシの隣が空いてるよ!」

「あ、オイ!」


金髪の女子が手を降っている。その前に目立つ赤髪、青髪の子がいる。

そして二つの視線を感じる。

それ銀髪、黒髪の女子だった。


「……飛んで火に入る秋の焼き芋」


青髪の子が何かを呟いたが特に気にすることではないだろう。


「では授業を始めます」


希望者が前に出て魔法を使うらしい。


「ちょっとよろしいですやろか先生!」


鈍った口調銀髪の女子が挙手をした。


「なんでしょうナーヴィさん」

「せっかく留学生が来たんや、彼女に魔法見せてもらいまへん?」


「ナーヴィのやつクラス内で恥かかせる気マンマンじゃん」

「いや、あいつの場合は悪気ないだろ」

「それ逆にタチ悪いじゃない」


「そうだね、アマビシさん杖はあるかな?」

「あ、はい」


ジャポナスが開発した魔法の杖は、科学を用いており、自動で魔力を吸ってエネルギーに変え機械的に力を発動できる。

増幅したり調節したりしてくれるので魔力を暴発しまうどんな落ちこぼれも即立派な魔法使いになれる代物で、エルン理事から許可はもらっている。


「じゃあ、ポチッと」


火花のボタンを押すとスパークが起きる。


「ジャポナスでは杖も開発しているのね……」


黒髪の女子が呟いている。


「誰だ魔法使えないとかいったの」

「アタシだよ」

「……私は知っていた」


青髪の子が何やら笑みを浮かべた。

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