森の魔女 一話
異界宇宙星歴3000年、王侯貴族のみならず誰しもが軽度の魔法を使える時代となった。
だがそうなると貴族達は魔法を使う事すら怠けるようになった。
「お嬢様、魔法の稽古の時間です」
誰しもが魔法学園にて制御と道徳を学ぶのが近年では至極当然ではあったが、体が弱い者や足が悪い者は特別に家庭魔法教師が訪れる。
「今日はどなたが?」
桃色の髪をした少女は鏡を見て身支度をする。
「ハガンリーエリアの優秀なナービスク・リッツ先生です」
ハガンリーでは東方のように名前が後に来るんだったわね。
「お初にお目にかかります」
どんな老人かと思えば、薄茶の髪と赤目をした青年。
「こちらこそわざわざ遠方から申し訳ありませんナービスク先生」
彼は私の足を見ているが、家庭魔法教師を頼んだ理由を気にしている?
「身体や健康に問題があるわけではないのですが、お嬢様は魔力がまったく扱えません」
令嬢であれば小間使いにやらせれば済む事なので、生活にはなんら支障がない。
「であればゲートが潜れない為に学園へ通えないということですね」
魔法学園には各星から生徒が通う。
ゲートとは各自の在住星から学園まで転送してくれる物だ。
使用するのが誰であれ、それを通る際に無意識に魔力を使っている。
だが稀にゲートをくぐれない無魔力が生まれる。
ラブラクア星は歌姫が魔力を増幅させるのであまり歌姫が通らない場では珍しくない。
そしてフォーユアの母は歌が嫌いなので、音楽を避けた事が要員とされている。
「わかりました。では寮で生活なされてはいかがでしょう?」
「なるほど」
「だめよ寮だなんて、魔法学園には平民も通っているじゃない」
「まあ、お母様ったら今時そんな事を言っては……」
母は愛至上主義のラブラクア人の父と恋愛と政略の半々で結婚した。
しかし世間的にプライドの民と言われるのは特に身分に厳しいウィラネス星の者である。
「無礼を承知で申し上げますが、彼女がこうなった要員は歌を避けた事……学園に通うか、グレーな法律違反をするかは彼女の意思ではありませんか?」
「私は……」
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「ああ遅刻しちゃう!ルベエラはやく!!」
「これでも急いでるわよマリー」




