魔王になって孤独 ①
『消えろ魔王!』
仲間と一緒に魔王を封印したはずが―――――――。
『フハハハ!!勇者よ、我は消えぬ!!』
鼬の最後っぺ、のごとく魔王に取りつかれてしまったのだ。
「なんでこんなことに…」
魔王になった私は瞬時に黒い衣服を着ており、すさまじい魔力を得ていた。
《フハハハ…!我が力、ありがたく使え》
「ふざけないで!!
あんたのせいで仲間も婚約者の王子も離れていったのよ!?」
女勇者の特権で魔王を倒したら王子と結婚して幸せに暮らすつもりだったのに、こいつのせいで人生台無し。
《フン、人間の王子など勇者であるキサマに釣り合わんであろう》
「う…」
別に王子が好きだから、ってわけじゃないけど。
王妃様になって楽な生活したかったなあ。
「私、一人になっちゃった」
《フハハハ!!我がいるではないか》
「あんた目に見えないし、これじゃあ私、独り言を言う変な女だよ!」
「しかたのない女だ」
魔王が実体化した。
「え!?あのときのデカイ姿は!?」
私が仲間と城に乗り込んで、魔王は玉座に座っていたときから封印まで、デカイ真っ黒なマスク野郎だった。
「…あれは威厳のためにな」
「ムカつく!!」
顔が結構タイプで、うっかりドキッとした私に腹が立つ。
「何を…「見つけたぞ魔王!」
この声は、王子。
「人間が、魔王に歯向かうのか?」
そういって、魔王は私の後ろに隠れた。
「おい!!」
《今はキサマが魔王、我は元・魔王であるからな》
とだけ言って、魔王は消えた。
「逃げるのか!?」
王子に剣を向けられるなんて、まさか私が剣を向けて抵抗するわけにもいかない。
ここは逃げるしかない。
「ちょっと!どこいったのよ!?」
少し離れるだけだと思っていたアイツは完全にいなくなった。
先ほどまであった気配もない。
完全に一人になってしまった。
■
なんだか今日はツイてない。
捨てようとしたガムを飲み込んだり、花瓶を落として割ったり。
いつもはしないミスを何度も繰り返している。
恐怖の大王でもふ――――
「魔王様!!お待ちしておりましたアアアアア!!」
空から降ってきたのは、ファンタジー風のコスプレをした優男。
「魔王て…私はどちらかというとお姫様のほうじゃん、ね?」
なぜそこでだまるし。
「とりま(とりあえず魔王様)魔界に行きましょう」
「きゃああああ」
未知への扉が――――。
私はついこの間まで普通の女子高生、だったんだけど―――――。
いつもと変わらない当校途中に、フードをかぶった不思議な人が私の目の前に現れて、異世界に召喚された。
「魔王さまああああ」
そして悪魔達のボス、魔王になってしまいました。
魔物たちが頭をさげたり膝をついていたりする。
「その呼び方やめてください!私は魔王になんてならないって言ってるじゃないですか!!」
ああ、魔王じゃなくてお姫様がよかったよ…。
「まあまあ、嬉しいからって泣かないで…」
「嬉し泣きじゃないし!」