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アンジェネレート 一章:バランス①


「よし、今日から私も高校生!彼氏作るぞー!」


――意気込んだ私は後に絶望する。

幼い頃にシスターに憧れ、淑女を育てるミッションスクール。

近所にあり、女子高なのでもちろん男子生徒はおらず。

近隣に男子校がないし、何より恋愛などはご法度。


「おお……天におわす主よ……シスターへの憧れとまだ見ぬ王子様とのラブ、どちらをとるべきでしょうか?」


礼拝堂で祈りを捧げていると、入り口に人影があった。


「……どちらさまですか?」


白いベスト、黒襟のシャツ、赤ネクタイ、銀髪に青眼の美しい男性。


「それは明日、ここに来ればわかるかもしれませんね」


私の去り際、男性は礼拝堂へ入っていった。

しかし明日は土曜日で学校は休みなのだが、けれど彼に会いたい。


「あ、セイハちゃん」

「キンカ!」


彼女は同じ中学から友人でクラスが離れてしまい、友人作りの邪魔をしたらいけないから話しに行けなかった。


「誰からも話しかけてもらえなくて、初日から友達作り失敗しちゃった」

「私もだよー!」


勢いよく飛び付く。


「友達作りのお祈り?」

「まあそんなとこかな……あのね、土曜日に礼拝堂へ行く方法ないかな?」

「え?」


キンカは何を言ってるんだろうと言いたげ。


「やっぱり無理だよね」

「学校が休みの土日でも礼拝堂は一般の方が懺悔に来られますよ」


憧れのシスター愛波がにこやかに教えてくれた。


「生徒もいいのでしょうか?」

「ええもちろん」


不純な事でごめんなさいシスター!



「あの~」


早朝になり尋ねたが礼拝堂は誰もいなくて、私の声だけが響いた。

帰ろうと思っているとガタガタ、という音がどこからかする。


「誰かいるの!?」


私は首に下げたロザリオを掲げる。そして机?の裏を見ると人がおり、紅い眼がある。


「いやああおばけぇ!」

「うわあああ!!」


男は這い出てきた。


「悪魔ゾンビ消えろ!エロヒム?エロイム?エッサイム!」

「落ち着いてくれ、私は人間だ」


王子の姿をした金髪イケメンは薔薇を私に差し出した。


「あなた本当に王子?」

「疑うなら証拠を……といいたいが私は政敵に殺されかけてね……」


要するに無一文というわけだ。


「事情を話して教会で働けば?」

「素性が知られれば星際(せいさい)問題が……」


色々めんどくさそうだなあ、見た目だけで私の理想の王子様じゃないし。


「わ、私の家にきませんか!?」

「いいのかい!?」


キンカって王子(仮)みたいなキザ男がタイプなの、初めて知った。


「ちょっと待ってくれ」


王子は棺を引きずって持ってきた。


「女道化師?」


ガラスの棺には今にも目を開けそうな女性がいた。


「てっきりお姫様かと思った」

「そうだったらいいんだけどね……」


王子は秘密を知っているようなので問い詰めた。

彼女は大昔に魔王と天使の女ラヴァーが戦った時に巻き込まれ眠りについているらしい。

彼女はその昔、王と結ばれなかったが王家の危機に目を覚ますという。


「だから王が代々彼女の棺を守り神のように引き継ぐ決まりなんだ」

「なんだてっきり王子の恋人かと思った」


政敵の宰相が悪魔教団と組んだことで王家の危機が訪れた。

しかし彼が呼び掛けても目覚めない。その代わりに誰からか用意されていた宇宙船で罠でも助かるすべはそれしかなく、からがら逃亡してこの星へ来たという。


「あ、わかった」

「なにが」

「王子が彼女のタイプじゃないからだよ!」

「え、歴代の王はみんなこんな感じなのに……」


本当にそうなのかな?


「じゃあ加護が切れたんじゃな~い。それかまだまだ大した危機じゃないとかさ」


――というか昨日の彼はいつ来るんだろう。


「じゃあ行きましょう王子」

「クラップスでいいよ」


キンカとクラップスと道化師は礼拝堂を去った。人がいたら事件の証拠隠滅と誤解されかねない。


「はあ……主よ……昨日の彼はいつ現れますか?」

「おはようございます」


背後から声がしてビクッとなる。

昨日の彼は神父服を着用しており、あの言葉の意味を理解した。


「私は貫羅ノ木剣一郎、見ての通り神父です」

「……!」


どんなに素敵でも彼は神父、王子には程遠い存在なのである。


「出会って二日でハートブレイクだよ!!」

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