さがしもの
沈みかけた夕日の中
蝶夜はまた墓地に向かった
「時間がたっても綺麗なんてやっぱり香花ちゃんのお花は最強よね」
ちょっと大きめの独り言をいう蝶夜の周りには誰もいない
と思ったがフードを深くかぶった小柄な少女が蝶夜をじっとみていた
「 っ」
独り言を聞かれてたかと思い蝶夜は顔を赤くして走っていった
少女はにっこりと笑ってそれをみていた
「父さん・・・・母さん・・・」
教会の裏にある墓地
蝶夜は「星野」と掘られた墓の前に座り込み手を合わせた
星野蝶夜には両親がいない
彼女が16の時に何者かに『殺された』
高校の修学旅行から帰ってきたとき家の中は無残に殺された両親と血まみれの幼い妹
8歳下の弟は いなかった
行方不明届けを出したが見つからない
そして今でも警察の権力を使って弟を探し続けている
両親を『殺した犯人』も
九年前
「父さん!母さん!」
血まみれの妹を抱えながら蝶夜は泣き叫んだ
「兎月!うづき!どこ!?」
怖くて不安で堪らない
妹はただ呆然とクリクリとした目を開いてじっと蝶夜をみていた
「あんたが星野蝶夜か」
すっと蝶夜の後ろに影ができた
振り返ると
タバコを加え年相応の無精髭のおっさんが立っていた
「だれ・・・・?」
力のない声でそう言った
「沼田謙造。警察だ」
彼はそう言いながら蝶夜の前にしゃがみこんだ
そしてそっと蝶夜の頬に触れた
顔にある模様のようなあざをみて謙造はいった
「そうか、お前もユーザーか」
「あなたは・・・一般人・・・?」
蝶夜はじっと謙造をみた
するどい瞳は蝶夜をちゃんとうつしていて蝶夜の言葉を聞こうとしている
「あいにくな」
謙造は優しくぽんっと蝶夜の頭を叩いた
今度は妹の方に手を伸ばそうとしてきた
蝶夜は守るように妹を謙造の手を避けた
謙造は気にしたようすもなく
手を戻し 妹を見つめた
「こいつは、ユーザーじゃないのか」
妹 柚菜はじっと蝶夜を見ていて怖いくらいにくりくりとした瞳をしている
蝶夜は頷き「わたしだけ」とひとことつぶやいた
「柚菜は渡さない」
たったひとり残った家族を必死に守ろうと蝶夜は柚菜をぎゅっと抱きしめる。
「そのこは・・・施設にやったほうがいい」
謙造は蝶夜を真面目な顔でみた
「この事件はユーザーが関わっている可能性が高い。この子がもしユーザーに両親が殺されたところを見たとしたら、お前とは距離を置いたほうがいい」
「ダメ!絶対は渡さない!!!」
蝶夜は叫ぶように声を出した。
顔のあざが広がり紫色の数羽の蝶々がどこからか飛び出し謙造を襲った
しかし、蝶々は謙造を通りすぎあっけなく消えていた
「言っただろ。俺は一般人だ。それは効かない」
謙造の言葉にわなわなと蝶夜は震え何度も何度も『能力』を出す
だが、結果は同じで蝶々たちは何事もなく消えていく
「やめろ。マイクロキメリズムの能力は人を喰う。知ってるだろ」
冷静に謙造は言う
蝶夜の顔にはびっしりとあざができ手の甲や足元までも広がっていた
マイクロキメリズムの能力は、使うと体のどこかにあざができ使えば使う程そのあざが体に侵食し能力が自分自身を喰らい最終的には死に至る
能力が大きいほど自分の体に影響を及ぼし大抵のユーザーたちは『睡眠』でそれを補うが、使い過ぎると二度と目覚めないケースもある
「お前は能力の使い方を覚えろ。教えてやる、家にこい」
星野蝶夜 『細胞:蝶々 能力:他のユーザーの記憶や能力を消す』