マイクロキメリズム
「無差別失踪殺人事件。それが私達の取り扱う仕事」
「どうしてそんなものをクレーム係が…?」
蝶夜は秀哉の背中をなでてやりながら言葉を続ける
「犯人は普通じゃないのよ。この現場がなによりの証拠。普通の人間にはこんな風に残骸を残さない…
惨くて非道で残酷に…まるで…『食べられた』かのようにね」
腐臭が部屋の中にただよう
息がつまるほどのその臭いに蝶夜と謙造は平然としている。
秀哉は 食べられた かのようなその残骸をみることが出来ず目をそらした
「目をそらすな秀哉。よくみておけ」
低く強い声で謙造は秀哉にいう
「お前がこれから働くにはこんなものまだ序の口だ。第六課はこういう仕事だ。無理なら逃げろ、こんな仕事、強制したりしねえよ」
秀哉はぎゅっと目をつぶり立ち上がりそしてまっすぐ蝶夜をみた
「教えてください 先輩。これが、何なのか」
蝶夜は目をふせ小さく笑った。
「マイクロキメリズムってしってるかな?」
自分の細胞の中に他者の細胞が紛れ込む現象をマイクロキメリズムという
人間の神秘を求めた科学者たちの過ち
マイクロキメリズムの現象をつかった人体実験
出来上がった人口生命体はユーザーと呼ばれ
奇妙な能力をもっていた
らは能力に溺れ狂い次々と能力を使って人間を襲い始めた
それゆえ国は彼らの能力に怯え完全消滅を支持し
特殊部隊第六課がクレーム係りの裏の顔として成立された
「でもね、私は ユーザーたちの中にも普通に生きたいひともいると思うんだ」
事件の現場から出ると外はもう日が沈みかけている
「無闇に殺したりするんじゃなくてちゃんと話し合えばわかると思うんだ。だってユーザーたちも同じ『人間』だから」
蝶夜は手を夕日にかざす
そしてにっこりと笑って秀哉の頭をぽんと叩いた
「大丈夫、いざとなったら先輩が守ってあげるからね」
夕日に照らされた蝶夜はキラキラと輝いていてその目にはどこか遠いだれかを思うように笑っていた
「は、はいっス…」